第63話 10日後
https://twitter.com/sudounnikuman
↑ツイッターです。
誤字や感想などありがたく受け付けております。もちろん、感想欄でもおk!
1日たち、2日たち、3日たった。
両方の石碑に込められた精霊力が、管をとおりガラス容器へと注入。
中を満たす溶液の中で2つの力が溶けあっていく。
「うわ~ うわ~」
容器の中で融合していく様は、コリンに謎の感動を与えていようで、暇をみてはガラス容器にひっついていた。勉強から逃げていたわけではない。たぶん。
その間、ジグルドは言葉の勉強をしていたわけだが、これがなかなかどうして難しいらしく、遅々として先に進まない。
『歳じゃな』
「否定できないですが、覚えねばならんのです」
いつまでも通訳ありきで生活するわけにはいかないのだ。
コリンかヒサオのどちらかががいないと会話すらできないのでは、いつか問題になりかねない。だからこそ土に文字を書いて言葉を教えてもらっている。むろん書いているのはジグルドなのだが。
『そういえば、今の世は託宣というものがあるといっていたな』
「ああ、そのことですか。ワシもよくは分からないのですか……」
といいつつ、コリンがどこにいるのか見てみる。いつものようにガラス容器にへばりつき、受肉しかけている過程をみていた。
「あまりコリンの前ではいいたくないのですが、それでこの世界のドワーフが……」
託宣が下り、ドワーフがやられたことを話すと、怪訝な顔をされた。
『怖い話だな。その託宣というのは、なんなのだ? 人間固有のスキルなのか?』
「スキル……ですか? さぁ、そういう考えはもっていませんでしたが、どうなのでしょう? ワシは人間ではないので……」
『それはそうだが、同じ時期に異世界からきた人間がいただろ? そいつは聞こえないのか?』
「ヒサオですね。あの小僧はそういったことは言っておりませんでした」
『ふーむ……』
「ユニキス殿の時代にはなかったのですな?」
『ああ。聞いたこともない。人間とは争っていたが……その文字違うぞ』
指摘をうけ、地面にかいた文字をジグルドが足で消す。
「亜人達に匿ってもらわねば、危ういところでした」
『亜人達…ふむ。いまも多種族でまとまっているのか』
「そうですな。まとめて魔族という扱いになっているのは驚きましたぞ」
『魔族? 聞いたこともないな』」
「は? そうなので。となると、ユニキス殿が死んだあとの出来事だったのでしょうか?」
『亜人に、魔族に、人間に、獣人がか…めんどそうな状態になっているな』
「そうですか? ワシがいた世界では、人間とエルフ。ドワーフと獣人。魔族とダークエルフ。が同盟をくんでいて、それに、竜族が雑多な種族を配下において争っておりました」
『……なんだその混沌状況は』
「ええ、まったくです。ですので、こちらの世界のほうが、まだシンプルですな。おっと、【単純】という文字はこれで合っていましたか?」
『合っている。間違っていたらいうから安心しろ』
といった感じで、雑談しながら勉強しているので、ちょくちょく間違うようである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
10日ほどたつと、ガラス容器に小さな子供ができていた。まだ手のひらサイズだが、性別は女のようである。
「女の子なのです! ジグ様と私の子供なのです! コリンも母になったのです!」
「……」
何も言えなかった。微妙にあっていて。
『よし、これなら容器から出していいだろ。あとは肌着で包んで、上の拠点で育てればいい』
ユニキスの許可がでて、さっそくと子供が出された。
「……」
ごく普通の赤子にみえた。
歯もなければ、髪も生えそろっていない。目は閉じられ、声を発しない。息はしているようだが、眠っているというより、まだ目を覚ましたことがないといった感じ。
「大丈夫なのです?」
「どれ貸してみろ」
すやすやと眠っているオリジンに両手をだしコリンから受け取りみると、鼻をくんくんし始めた。
「ほう、もう匂いを嗅いどる」
「犬みたいなのです!」
『そろそろ目を覚ますぞ』
え? と思うまもなく、子供の目が開く。
火が灯ったような緋色の目。コリンの紅色とは違う。
目つきはコリンに似たようで大きく丸みをもっている。
そんな可愛らしい眼で、ジィ―とジグルドをみている子供が、両手をつきだして、
「アーアー」
と言い出した。
「おーおー。よしよし」
子をあやす声、そして出された手に自分の指をおいてやる。それをギュッと握ってくる子供の手。
愛おしさがこみあげてきて、しょうがない。
「か、かわいいのです~ ジグ様、私にも!」
「ん? おお、わかったわかった」
そういい、抱いていた赤子をコリンへと返す。
胸にいだかれた赤子は、今度はコリンをジ―――とみて、また同じように手をあげ始めた。
ニヘラ~ とコリンの顔がゆるみまくる。みればユニキスもであった。ジグルドのみが、ムスっとしたいつもの顔でいるが、どこか無理をしているようにみえる。
「10日でこれですか。成長が早いですな」
『早いが、その分まずい点もある』
「ええ、聞いております。ですが、まずは名前ですかな?」
「名前! そうなのです! 名前なのです!」
ぐいっと力強く赤子を抱きしめると、赤子の手がコリンの胸に置かれ、だーだーと触りだした。
「お乳ですか? わかったのです!」
といい、服を脱ぎだすものだから、くるっとジグルドが体ごと回転させ見ないようにするが、
「いやいや、コリンは、乳がでないだろうが」
「なぜなのです? コリンは母になったのですよ?」
「アーアー」
「いま、あげるのです!」
「服を脱ぐな! 乳もしまえ!」
ユニキスが何も言わないのは、しっかり脳裏に何かを焼き付けようとしているに違いにない。幽霊なのに。




