第60話 再攻略開始
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2日たつ。
コリンは山刀改。いや、もはや忍者刀になってしまった武器を腰にさし、背に矢筒をつけ、右手に木製のショートボウをもっていた。水筒や松明。小さな備品物は腰のポシェットに。それなりに大変そうだ。
ジグルドはもっと大荷物であるが、ここにはいってからのレベルアップの繰り返しで、平気な顔をしていた。スタミナと力がさらに増したようだ。
右手には突くことに特化したランスを。左腕には巻き付けた中型の盾。背には荷物をつめたザックを。靴底にあった滑りどめも改造もしたようだ。変わらないのは作業服のみ。愛着があるのだろう。
「幽霊さんも、ジグ様も様子が変なのです? なにかあったのです?」
何か気付いたようで迷宮内に入る前に、コリンがいってくる。言いたくても我慢していのかもしれない。
「そういうわけでもない。ただ、今回で目的の場所までいこうと覚悟を決めているだけじゃ」
「そうなのです? でも幽霊さんの顔が何か重苦しいのです」
言われみれば、いつも以上にユニキスの顔が不機嫌そうにしていた。
『なんだ娘っ子。俺の顔がそんなに気になるか? どうれ、もっと見せてやろう』
といって、せまってくるが、
「やっぱり違うのです。うまくいえないのですが、幽霊さん変なのです」
まったく逃げようとはしないので、ユニキスも近づくのをやめた。
そんな2人と一緒であるが、戦闘という面でいえば思った以上にうまく連携がとれていた。
敵が出現すると、まずジグルドが盾と槍をかまえ牽制。
必ずあてる必要はない。敵の気をひき、後衛にいるコリンに攻撃がいかなければそれでよかった。
後衛にいるコリンが位置取りをきめ、弓による攻撃がはじまると、敵の気がコリンに向かう。
注意がそれたチャンスを見計らい、ジグルドのランスがつきささるという感じだ。もっとも、矢が急所に刺さり勝負が決まることも多かったが。
『順調だな』
「ええ、おもった以上に、武器選択がよかったようです」
比較的スムーズに迷宮を突き進めていると、鼻歌さえ口ずさみたくなる。実際にはしないが。
『そろそろ前回の場所にたどり着くが、体は大丈夫か?』
「ええ。いまのとろこ特に疲れてはおりません」
ガチャガチャとランスと盾の音を鳴らしながら歩いているのだが、言葉どおり元気そうだ。問題らしきものはないか? と、ユニキスは左目をギョロギョロさせている。
『大丈夫そうだな。先に進むぞ。ここから先は、ひき帰さないと思ってくれ』
「元より、そのつもりでしたが、何か理由が?」
『そう何度も通れる場所ではない。俺ならともかくな』
ユニキスが言った言葉はすぐにわかることになる。
石造りの通路をさらに進むと、元々広かった通路がさらに広がりだした。
松明の光のみで進んでいるので、すべてを見ることはできなくなった。天井や壁がついには見えなくなりはじめ、壁際を照らしながら先へとすすむ。
するど、通路の奥から光が差し込み始めた。ユニキスをみると、コクリと頷いた。
『マグマの光だ。温度にきをつけろよ』
ついにきたかと、ジグルドは言われたとおり周囲の温度を下げ始めた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
下が石道であることは変わらなかった。
だが、周囲の壁に亀裂が走り、その隙間からマグマが漏れ出している。
どうやらこのあたりの通路の周囲はマグマのようだ。
『本来、ここまでマグマはきていなかったんだがな』
「いわれてみれば、口伝もそうでしたな。ここは土の神が守護する箇所のはず」
『時間がたちすぎたんだろう』
亀裂のあちらこちらから、マグマが垂れており、注意しないと接触しかねない。幸いなことに道をふさぐほどのマグマは見当たらない。
「怖いのです」
松明を掲げる必要もなくなったので、コリンは下がって震えた声をあげている。
周囲の温度はさげているが、マグマが見えているだけで、やはり怖いのだろう。直接ふれたらどうなるか、誰でもわかるというものだ。
「そういえば、土の神というのはなんだったのですか?」
『ああ、それはアンデットのことだ』
「え? モンスターが守護者?」
ちょっとした疑問でしかなかったが、まさかの答えがかえってきて、足が一瞬とまってしまった。後ろからついてきたコリンがザックに頭をぶつけたが、よろめくこともなかった。
『まあな。ただ、お前たちには関係ないぞ。アレは許可がないものたちへの抵抗手段なのだから』
「ということは制御できているのですか?」
『それはそうだろ。でなければ土の神などとはいわん。それはともかく、これをなんとかしろ』
といわれ、ユニキスが指さすほうをみると、
「……壁が崩れたか」
「熱そうなのです」
とても熱そうではすみそうにない光景がそこにはあった。
両壁が崩れおち、そこからマグマが通路に漏れている。通路をみたすマグマの河というべきか。
だいたい距離にして8m以上。とてもジグルドが飛べる距離でもない。
「さて、どうするかの」
崩れた壁の破片なら周囲にあるが小さすぎた。これをマグマの中に放り込み、その上を渡っていくのも無理がある。
この距離を直接飛ぶのはむり。飛べる距離で中間に石をおくのも無理。方法がみあたらなく出てきた言葉は、
「うーぬ……いっそ凍らせるか?」
ボソっと考えなしでいってしまったが、それに2人が反応した。
『ここで魔力を枯渇させる気か? 馬鹿をいえ』
「もちろん全てではないですぞ。瓦礫だけでは心もとないですが、瓦礫を固定するために周囲を凍らせれば、渡っていけないかと」
「!? ジグ様は神なのですか!」
「どうしてそうなる。まあ、そういうことですユニキス殿」
ここのところ、武器制作では水で冷やしていない。
ユニキスに言われたとおり《炎熱操作》による冷却を行っているのだ。もちろん焼き戻しもスキルで補助をしている。
『そうだな。それなら……キマイラのことも考えておけよ』
「むろん。ではやってみます」
方針がきまり行動を開始する。
歩幅にあわせ瓦礫をおく。一か所につき2個計算だ。
おいた瓦礫の周囲を瞬時に凍らせ固定。足がつく場所は凍らせない。滑らせては危険にしかならない。
マグマは流動していることもあり氷が早く溶ける。なので素早く動くことが大事であるが、ジグルドは重装備。ヒョイヒョイわたっていくことはできない。そもそも凍らせているのは、そのジグルドなのだし。
瓦礫をおく。
ランスで突いて周囲を凍らせる。
一歩あるく。
次の石をコリンからうけとり投げ、足場をつくる。
こうした作業をくりかえしながら歩くジグルドの後ろをコリンが続く。
集中力の勝負だ。
一歩一歩確実に、石をしっかりと固定し、あるき、また一歩。
たった8m前後の距離なのに、それが遠くに見えて仕方がない。
「……よし、これで最後だ」
あと一歩という所まできた。
ホっと胸をなでおろしたいが、油断してマグマダイブは冗談にならないとランスを高くもちあげ、最後の一歩を進めた。
ジグルドがまずマグマを抜けた。続けてやってくるコリンの手を盾がついた左腕でつかみ軽くささえた。コリンが渡りおえると、瓦礫を固定していた氷が溶けだした。
『よし、うまくいったな。宝物庫まであと少しだ』
「さすがジグ様なのです!」
「なんとかもったわい」
コリンが渡りおえたのを確認し、ようやくランスを地面に下ろした。フーと一息つき、胸をなでおろす。義手の調子をみようと、クイクイっと手首を動かし、違和感がないことを確認する。
少し体を休めてから、ガチャっと音をだしながらランスを持ち上げた。
「よし、いくか」
あとは、キマイラだけだ。ユニキスがいっていたアンデットというのも気になるが、いないのであれば、それでいい。
『準備は大丈夫か?』
「むろん」
「バッチリなのです!」
力のはいった眼差しをみて、ユニキスが「よし」と頷き、彼らは先へと進んだ。




