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第58話 迷宮攻略開始

https://twitter.com/sudounnikuman

↑ツイッターです。

誤字や感想などありがたく受け付けております。もちろん、感想欄でもおk!

 近接格闘武器での《炎熱操作》利用は可能という実証がとれた。

 ならばと、今度はショートレンジで戦える武器。つまりは、小剣の類いでの実験を始める。ただし、ジグルドの場合は、片手メイスであるが。


「どぉりゃああああ!」


 やってきたラージアントの頭をつぶすと同時に溶解。本来防御が高い昆虫系モンスターが、一発で内部に致命傷を負った。

 ただし、このモンスターは群で動くため、一匹だけつぶしても意味が薄い。そして一発いれるだけで集中力を結構つかう。次々に襲われると、どうにもならなかった。


「くっ! この!」


 通常打撃で、自分の下半身ぐらいのサイズの蟻たちを殴りつける。攻撃といっても、口についた鋭利な牙のみだから、ウルフ系に比べればまだマシだろう。

 ただし、マシというだけであって、危険なのはかわりないが。


「キリがないぞ!」


「ジグ様こっちなのです!」


 すでに家の中にはいっていたコリンが大声をあげた。

 こんな時の為につくりあげたものだしと、背を蟻たちにむけ逃げだす。

 獲物が逃げ出したと蟻達がついてきて、ジグルド達は家にたてこもることになった。


『これはまずい。あいつらしつこいぞ』


「そういわれても、あの数はさすがに」


 すでに家が囲まれていて、外にでるなら覆いかぶさってきそうだ。

 さすがに石壁はくずせそうにないが、木でできた玄関扉ならなんとかなるかもと、入口に集中しカジル音がする。


「何か良い武器は……」


 瓦礫の下からみつけた鉄防具関係を溶かし、試作品としてつくったものが家の(すみ)においていた。まとめて殴るか切れるものといえば、


片手斧

 単体攻撃ならいいが、範囲攻撃として使うには腕力と熟練度がいる。

 

片手剣

 コリン用につくってみたが、当人は長すぎるといって山刀をつかっている。この場合としても使用する意味が薄い。


両手メイス

 単体破壊力を考えつくってはみたが、この場合不要の品となる。


ナックルガード

 論外。


ツルハシ

 瓦礫撤去につくっただけであり、武器ではない。いや武器にもなるか?

 

 どれもこれも適正ではなかった。


「長い獲物を後回しにしたのが裏目にでたか」


 ガチャガチャ探しているあいだにも、玄関扉からカリカリと音がする。


「くそ!」

「ジグ様食いやぶられてしまうのです!」

「分かっとる!」


 コリンの声に押されるかのように扉に体を押し付けた。コリンもジグルドの隣に並び、扉をささえた。


 カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ……


「ええぃ! うるさい!」

「耳障りなのです!」


 扉を支えているので、耳元で聞こえてしまう。

 かじりながら、扉を押し込んでくるので、もういつ破られてもおかしくない状態。2人で支えているが、そろそろ、


 バリン!


「キーキー!」


 遅かったようだ。蟻の頭がコリンの目前にでてくる。


「キィー?」


 ピタっとコリンと蟻の目が見つめ合う。


「いやぁああああああ!」

「キィ―――――――!?」


 さらに騒々しいことになった。


「武器さえあれば、この扉を……扉?」


 ふと思う。

 この扉と自分は接触していて、向こうには標的がいる。つまり扉を挟んで敵と接触しているわけで……


(いけるか?)


 《炎熱操作》はスキル所有者の肉体に触れた一定領域の熱操作スキルだ。

 接触密度が高ければ高いほど操作が容易くなる。

 ということは?

 別に武器じゃなくても良いわけで、


「むん!」


 扉を通じ蟻体内の熱へと干渉。一気に熱を上げる。結果。


「「「「「キィイイ―――――――!!!」」」」


 扉向こうから昆虫の悲鳴が一斉に聞こえてくる。

 火が扉に燃え移らなければ完璧だったであろう。燃えてきた扉に気付き火消しに勤しむ。


「結果よければすべてよしじゃ」


『やったな爺!』


 ついでに霊の一体を燃やしたくなったが、それは流石にできなかったらしい。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 いよいよ迷宮に挑む日となった。

 ジグルドとコリンの鍛錬結果には不満が残れど、挑むことは許されたらしい。


『いっておくが、まだ奥まではいかないぞ。宝物の番人は、恐ろしく強いからな』


 迷宮名物ラスボスである。


「ほう。番人がいるのですか。どういったモンスターなのか教えてもらっても?」


『だめだ。教えたら突撃しそうだしな』


 プイっと空で回転しジグルドから目を離す。


「コリンも知りたいのです!」


『キマイラだ。しっとるか娘っ子』


「……」


 思うところがあるのか、ジグルドが背負っていたザックの肩ひもがずれた。ネタバレするとか最低だなと思っているわけではない。


 迷宮の入口は城内部にあり、地下へおりる階段を探さなければならない。

 ただし、これはジグルドには関係がない。案内人がいるのだから探す必要がないのだ。

 それは良かったのだが……


「まさか、瓦礫がこれほど積まれているとは……せい!」


「コリンも頑張るのです……えい!」


 迷宮にはいるまえにまず瓦礫の撤去が必要だった。

 ユニキスが示した場所は文字通り瓦礫の山になっていた為のことである。


 撤去がすむころには、ふう、いい汗かいたぜ。エールの一杯でもやりたいな。状態となっていた。挑むまえにいい運動をすることになってしまったようだ。


「さて、いくか。コリン準備はよいか?」


「はいなのです! しっかり山刀改もこの通りなのです!」


 いつもの元気よい返事をしながら、自分の背中を見せる。

 すでに山刀というより背中にせおう忍者刀状態。

 ソリはないが、丈夫な刃と程よい長さを求めた結果、今の形になったらしい。刃の厚みがあるため、忍者刀というには無理があるようだ。


 そしてジグルドだが、いつかの『扉も武器扱い』事件以来、鋼鉄製の大盾を左腕にもつようになった。

 かなり重いのだが、その重みを生かした戦い方を身に着けつつある。

 こっちがメインウェポンの扱いだが、サブウェポンとして片手メイスも持ち歩いていた。

 ちなみに荷物もちはジグルドで、コリンは腰に革袋と水筒をつけた程度だった。


『いいか。最初はまず迷宮になれることを考えろ』


「わかっております。無理をせずに戻ります」


「コリンは怖がりなので、限界になったら帰るのです!」


 それはそれで問題ありそうな発言だが、コリンの声にユニキスはとりあえず安堵したようだ。


『ではいくぞ。くれぐれも、足元に注意するのだ』


「「はい!」」


 こうして迷宮探索が始まった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 山に入った当初も薄暗く松明を必用としたが、迷宮部分もそうだった。

 光苔の恩恵もないため、再度松明の出番となる。


「……蒸れおる」


「熱いのです~」


 迷宮にこもった熱気で2人とも汗をかきはじめた。


「仕方がない。少しスキルを使うぞ」


 左腕で大気を撫でるように動かすと、周囲の温度が下がりだす。

 コリンがサッとジグルドへと近づいた。もちろん普段から側にいるのだが。

 直接的に肉体温度を下げることもできるのだが、それだと同時に2人の体を熱コントロールしなければならない。それよりは、自分の体にふれている空気温度を調整するほうが、負担が少なようだ。


『戦闘で使うことも考えているな?』


「むろん」


『よしいくぞ』


 ジグルドたちの視界から消えないように、ユニキスがゆっくりと前へと進んだ。


 迷宮の壁をみれば、山の入口よりは広くつくられていた。

 おそらく7,8人は一緒に入って問題ないだろう。

 周囲の石壁は崩壊がはじまっているのか、崩れ落ちた石片が足下に転がっている。時折分かれ道がでてくるが、ユニキスが「こっちだ」と言い彼等は先へと進ませた。

 向かう道は宝物庫につながっていると思うのだが、何度も入りなおすといっていたので、違う可能性もたかい。慣れさせるための道と思ったほうがよさそうだ。

 道をズンズン進んでいくと、モンスターがでてくる。それはいいのだが、


「また虫さんなのです!?」


「さがっとれ。ワシがやる」


 松明を持つコリンが下がると、ジグルドの前に影ができ薄暗くなった。


「またこいつか」


 でてきたのはキラーマンティス。単純にいってしまえば大きなカマキリだ。

 50センチほどの体長をし、手にする鎌が4本。足は3本というカマキリとは異なった姿をしている。幸い群れで動く事はないようで、一匹ずつ襲ってきていた。


「どりゃぁ!」


 盾を前面にだし、体を隠した態勢で体当たり。

 接触した感触をつかむとすぐに《炎熱操作》発動。そして、キラーマンティスの体が燃えた。


「おわったぞ」


「ありがとうなのです!」


『娘っこの虫嫌いは治りそうにないな。可愛いから許す』


「わーいなのです!」


 ユニキスに許されぴょんぴょん跳ねる。

 ジグルドもまた、仕方がないやつだといいつつ、顔には笑みが見えた。

 ラージアントが迫ってきた時もそうだったが、コリンはどうも虫が苦手のようで、見た瞬間逃げるようだ。


『しかし、この戦い方は思ったより有効だな』


「いやはや、手ごたえらしきものがほとんどないので、戦いの感覚が狂いそうです」


『そりゃそうだろ。体当たりして接触したら終わりなんだから』


「ええ、まあ。なんというか、こういうのをチートというのでしょうな」


『チート?』


「はい。ヒサオという人間に聞いた言葉でして」


『人間に? どういう事だ? 人間は敵なんだろ?』


「コリンも知らない言葉なのです! ヒサオさんは料理だけではないのですね!」


「……料理はできんかったはずじゃが?」


 どうしてそうなった? と首をひねった。


 とりあえずチートの説明をすると、それは卑怯ということじゃないか? と言われるが、そうなると自分は卑怯者になるのか? とモヤモヤっとしたものを考えた。

 そんな会話をしながら先にすすむと、またも昆虫型モンスターがでてきて「どっせい!」の一言で勝負がきまってしまう。


()、あとどのくらいもちそうだ?』


「……はぁ、あと5,6回ぐらいといったところでしょうか?」


『元気がない声だな。疲れたか?』


「いえ、そういうわけではないのですが……ジジ……」


『ん? 何かいったか?』


「いえ何も。それより、どうしたのですかな?」


『思った以上にサクサク進むから、少し予定を変えようとかと思ったのだ』


「ということは、まっすぐ宝物庫ですかな?」


『いや、それはだめだ。というより、番人はキマイラだぞ。熱攻撃には耐性がある。炎のブレスを使うやつらは、常に自分の熱を操作していることを知らないのか?』


 頭上から意外そうな声でいわれる。ジグルドは首を大きく左右にふった。


「ワシは鍛冶師でしたからな。もうしわけない」


『そういえば――あまりにそのスキルが有用すぎて忘れていた』


 その後、2体の昆虫型モンスターがでてきたが、これもなんなく撃退。聞いていた話と違い楽すぎた。それでも疲弊はするが。


「ここは昆虫しかいないのか?」


 あまりに同系統のモンスターしかでてこないため、ジグルドにも苛立ちがでてきた。戦闘の度に、コリンが怖がり大声をだすものだから、それもあるのだろう。


『そういうわけではないのだが、ここまで温度が高いと生息できるタイプも偏るのだろう』


「……なるほど、仕方ないがということですか」


 さらに迷宮の先にすすむと、その熱気が増しジグルドの顔に疲労の色がでてきた。


「ぐうぅ」


「ジグ様がきつそうなのです! 戻るのです!」


「しかし、この先も見ておきたいのじゃが」


『やめとけ。この先はさらに熱気が厳しくなる。ここで厳しいなら危険をますだけだ。戻るぞ』


 案内人がクルッと回れ右をし来た道を戻っていく。仕方がないとジグルドが戻りだすとコリンもまたついていった。


 マグマ地帯。

 ユニキスが言っていたソレがこの先にあるのだろう。

 戦闘でつかう炎熱操作による疲労を考えなければ先に進めそうだが、今のジグルドにとってこの先は無理のようだ。


 最初の挑戦は予想どおりの失敗で終わることとなった。

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