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第52話 地下遺跡

 空洞に入り奥へと進むと、すぐにポコポコという音が聞こえてきた。

 なんの音かとコリンが聞いてきたが、


「マグマじゃよ。この迷宮の外周辺はマグマで囲まれおる」


「マグマ! 怖いのです! でもジグ様が一緒だから大丈夫なのです!」


「そ、そうか。まあ、それなら良い」


 さらに奥にすすむと、土壁だったものが石でできた壁のように変化してきた。マグマの音も静かになり、ついには耳に聞こえなくなってくる。道幅も広くなり、石道のようなもの見えてくる。


「そろそろ一度休むか。どこがいいか……さて」


 足元にある石道をさわり感覚を研ぎ澄ます。


「ジグ様! コリンはまだ大丈夫なのです!」


「ワシが疲れた。スキルを維持し続けるのはキツイ」


 山についてから温度調整を常に行っていたため、ジグルドの魔力がそろそろ枯渇しかけていた。

 まだ余裕はあるが、危険になってからでは遅いと判断。


「そ、それでは、すぐに探さないと!」


 コリンが慌てるが、ジグルドは石道を触り場所を考えている。方角的なものがわかると、ゆっくりと歩きだした。

 しばらく歩くと、通路がT字路にさしかかった。

 右奥からは光がこもれ見え、左奥の通路は緩やかな下り坂になっていた。


「こっちじゃ」


 迷いなく左へと曲がる。道の先からだんだんと冷たい空気が流れてくが、異臭も流れてきた。


「ジグ様、少しにおいませんか?」


「カビじゃろ。ここまで熱が下がれば、生えていてもおかしくはない」


「か、カビ! 主婦の敵なのです!」


「……」


 ジグルドは黙ったまま、松明を右手でかかげ通路の先をみた。


「ゴキもダメです! あれは、主婦の怨敵なのです!」


「……」


 これも黙った。相手をしない。

 もし間違って「主婦とか言う前に結婚しとらんじゃろ!」というものなら、この娘は「だったら私を主婦にしてください!」とか言い出すに違いない。


 通路を降りていくと、淡く、刹那さえ感辞させるような光がみえてくる。

 先へと進み、通路を抜けると、大きく開けた空洞へとつながった。

 周囲にある岩壁には光苔がびっしりと付着している。綺麗なエメラルド色に輝いて空洞内を照らしていた。


 ジグルド達を驚かせたのはそれだけではない。

 空洞に入り最初に目に映ったのは、巨大な石柱が2本だった。まるで門のように並ぶ柱の間には石道があり、さらに奥には民家らしき家々が並ぶ。それは地下街ともいえる光景だった。


「うわ~ すごいです!」


(なるほど口伝のとおりじゃ)


 驚き走り見るコリンをよそに、ジグルドは石柱を軽くたたきながら、倒れてこないかどうか確かめていた。


「少しここらで休むか」


「はい! ……あ、あそこがいいのです!」


 石道のむこうをコリンが指さし言う。その先には、石レンガで作られた家々があった。


「そうじゃな。そのほうが安全そうじゃ」


 スタスタと石柱の間をぬけ、廃墟へと向かう。

 はいってすぐの民家にはいると、中から異臭がしてきた。死臭のようなものではない。家の中にある紙や木が古びた匂いだ。


「ご先祖様にはもうしわけないが、少し食事をできるぐらいのスペースをあけるぞ」


 苦笑し、ザックを地面におく。腕まくりをし、テーブルの上やら床に散らばった陶器の破片などを片付けていった。

 すると、外のほうから物音がし、コリンの体が一瞬ビクっとふるえた。

 気付いたジグルドが近づく。怯え声をださずにいるコリンの髪を優しくなでた。


「安心せい。風の音じゃ」


「……は、はい」


「まだ、思い出すか?」


「ジグ様がいるから平気なのです」


「無理はするな」


「大丈夫なのです!」


 強がるコリンの声をきき、ニカっと口を開いてみせる。それに笑顔でかえすコリン。こういったジグルドの笑顔が見られるのは稀だ。


(まだ、恐怖は消えぬか。無理もないじゃろうな)


 強がるコリンだが、悪夢にうなされ起きることも多々あった。

 理由はわかっているのだが、それを癒してやる事がジグルドは出来ずにいる。

 ジグルドがアグロの街にいくまで、コリンの意識は誰にも反応を示さなかった。それに比べれば、だいぶ快方しているのだが、完全に消し去るのは難しいのだろう。


「ジグ様、できたのです!」


 外にでて、一応の確認をして戻ると、コリンが食事の支度をすませていた。

 もってきたパンと干し肉。それに大豆でつくった豆スープ。

 これだけである。

 旅先で食べるものとしては十分だった。


「さて、食べるとしよう」


 2人が食べ終え、軽い眠りにつくまでの時間はさほどかからなかった。

 寄り添い眠る姿は、まるで祖父と孫のようである。

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