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第45話 城に向かう前に

 次の日から3人+3人の生活が始まった。

 夜に突然やってきた騎士3人は、さも当然のように朝食時に挨拶にやってきて、そのまま食事を共にしていった。タダ食いだ。『やりおると』はオルトナスの言葉であった。


「監視と言うておったが、どうするのじゃ? 3人とも常駐するきか?」


「いえ、交代して行います。夜もする必要がありますので」


「リーム……夜……むり」


「ねぇさん。わがままいわない」


「……お肌……あれちゃう?」


 ボソっといいながら、ミリアをみる。

 なぜ私? え? そのタイミングでみるって、私の肌が荒れているって言いたいの? ちょっと、物理的にオ・ハ・ナ・シしましょうか? とか思ったが、それを口にはしなかった。いったら認めてしまうのと同じだから。


 そんなやりとりを見ていたエルマは、いったい夜になにがあったのかとミリアに尋ねたが、なぜか梅干しされた。


「ほんといったい何があったんだよ。師匠も、なんか拗ねて教えてくれないし」


 いまだに拗ねているようだ。見た目と違い中身は年寄りなため、扱いに困ってしまう。

 オルトナスの様子はともかくとして、クロスのいった通り、それから3人が交代で家へとやってきて監視にあたっていた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 4日ほど過ぎたあたり、オルトナスが城にいくと伝えてきた。


「師匠珍しいですね」


「ほんとね。いつも行先いわないのに」


 弟子2人に珍妙な生物でもみるかのような目を向けられ、心外とばかりに、


「いつもは、心配かけまいとしとるだけじゃというのに、こ奴らは……それに、ミリア」


「あ、はい?」


「『はい?』ではなかろう。お前もいくのじゃ」


「え? なぜ?」


「自分が異世界人だということを忘れたか? 報告せんといかんじゃろ」


「あぁ!」


 言われてから気付く。そういえば、その問題もあったと。


「おねぇさん、やっぱり……」


 と、何かいいたげなエルマであるが、その先をいわせないとキッっと睨み付けた。


「ああ、お待ちを。まとめた報告書がありますので、それもできれば……」


「わかっておる。この場から離れにくいのじゃろ。まったく、最初からワシをアテにしておったな」


 交代にきていたクロスが話にわりこんできた。どうやらオルトナスのいう事が図星だったらしく、苦笑いで誤魔化している。


「では、すぐに持ってきますので」


「あ、じゃあ、私も着替えないと」


 いつものシャツと短パン姿でいたミリアがパタパタと自室へともどっていった。決して自分は若いというアピールではない。楽だからそんな恰好をしているのだ。

 いつもの天の長衣に着替えたミリアがやってくると、ちょうどクロスもやってきて、報告書をいれたという封筒をオルトナスに渡していた。


「準備ができたか?」


「はい。師匠はいいのですか? 何も、持っていませんよね?」


「ワシは、ほれ」


 といい、外套についているポッケから水晶玉を取り出した。


「それが何か?」


「なんじゃ知らんかったのか? エルマにも同じものを渡しておったのじゃが。ほれ」


 といい、その水晶に手をいれると……ハィ? 水晶に手をいれ? え? とミリアが固まったが、それを無視しいつも食べているパンを一つ取り出した。


「えぇ―――――!? な、なんですかそれ!」


「何と言われても困るのじゃが……ワシが空間系の魔法を扱っているのは、お前もしっておるじゃろ」


「あ、はい」


 だから、転移魔法陣などといったものを作れる。


「その応用で作ったものじゃ。名前は決めておらんかったが、良い名前があるか?」


 ヒサオがいれば喜々としてアイテムBOXか、インベントリとか言い出しかねない。だが、ミリアはそんな名前を知らない。


「今知ったばかりの私に聞きます?」


「こういったものはセンスが必要じゃからな。ワシやエルマはどうも、そういうものが足りとらん」


 と、いいつつ、取り出したパンをパクリと口にし、むしゃむしゃと食べ始める。

 それは昼食では? とエルマがツッコミをいれると、ハッ!とした顔をし、途中で食べるのをやめ、水晶玉にしまおうとするが、汚い! と怒られた。


「ワシ、偉いはずなんじゃが……」


 と、仕方がないとパンの続きを食べ始める。

 全て食べ終わると、再度名前はないか? と尋ねてきて、困ったとエルマをみるが、目をそらした。逃げたなと思いつつ名前を考え、とりあえずはと、


「エウロパ水晶というのはどうでしょう?」


 オルトナスの家名がエウロパだから、それを付けただけのようだ。安直である。


「うーん。名前のほうがよくないか?」


「オルトナス水晶ですか? 師匠がよければいいですけど」


「……いや、やめておこう。気恥ずかしい」


 自分で言っておいて何をと思う。


「そういえば、その水晶の原石には名前がないんですか?」


「名前……なんじゃたかな? 元々は国宝指定されていた人型サイズの魔力結晶を、空間魔法を使って圧縮凝固させ磨いたものなのじゃが」


 この発言に驚き声をあげたものが一人。クロスである。


「そ、それはもしや、かなり以前に王から頂いたケイオス結晶では!?」


「ああ、そんな名前があったな。忘れとった。もらってすぐに実験材料にしとったし」


「こ、国宝を実験材料とか……私は聞かなかったことにします」


 ヨロっとした足取りで、玄関口からでていく。言葉通り忘れることにしたのだろう。心なしか、顔が青ざめていた。夜勤あけに聞いてはいけないものを聞いたようだ。

 元の名前をしったミリアは、一瞬その名前を付けようかと思ったが、つけたら付けたでマズイきがし考えを消した。


「やっぱりエウロパ水晶で……」


「まあ、それでよいか。いくぞ」


 安直につけた名が正式採用された。それでいいのか? と、黙って聞いていたエルマは首をひねっていた。ちなみに、原石の名前についてエルマは知っていた。まだ若いので記憶力はあるのだ。誰かとちがって。


(僕もソレ持ってるんだけどな~)


 しっかりオルトナスが言っていたが、それに触れることは誰もしなかった。言えばいったで、また騒ぎになりかねない。

 2つあるということは、国宝を割って実験につかった可能性があるのだから。

 大胆にもほどがある。

ミリア:「何で私が名付けるのよ…」

オルトナス:「ワシがめんどいから」

エルマ:「こういう人の弟子をかれこれ10年以上しています」

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