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第21話 小休止

 後方にいる馬車には荷物が積まれている為、それに速度を合わせる必要があった。

 先頭にいた長さんは、ゼグトさんに自分の馬を渡し俺と一緒に馬車の中へと移動。

 テラーが、俺の身柄の確保を優先してくると考えたからだ。


「俺が馬車の中に隠れるのは分かるけど、なんで長さんまで?」


「この方が、護衛達の都合がいいんだ。2人別々より一緒のほうが守りやすい」


 重要な護衛対象をひとまとめにしたってことか。


「いざとなれば、私達が乗るこの馬車は、敵をつる餌にもなる。それは覚悟しておけ」


「え、エサ!」


 納得はできないが、飲み込むことにした。他の対策とか何も浮かばなかったから。


「そんな事より、ミリアだったか? ゼグトから聞いていた話と違うようだが、どういうことだ?」


「あ、それそれ。俺も聞きたい」


「聞いてくるとは思ったけど、今なの? 街に着いてからの方が良いんじゃない?」


「味方の戦力把握は大事だ。追撃がきそうな気もするしな」


「それは同感ね。いいわ、じゃ簡単に言うわよ。今の私は賢者。魔法使いじゃない」


「「え?」」


 俺と長の声がハモッた。


「ヒサオ、私を鑑定しなさい。それで証明になるわ」


「お、おう」


 言われるままに、ミリアを見てみる。


 レベル87 ミリア=エイド=ドーナ

 称   号 召喚され慣れした賢者

 アイテム  トルク宝石 天の長衣

 ステータス 伝説級の討伐者

 ス キ ル 無詠唱 攻魔レベル5 神聖3 強化1


 確認した俺に長が視線を向けてくる。


「前に見た時とかなり違っています。ミリアが言った通り、今の彼女は賢者みたいですね……」


「そんなに簡単に変われるのか?」


「勘違いするのも無理ないけど、私は最初、賢者だったのよ。自分に呪いをかけていたから、魔法使いになっていただけ。こっちが本当の私って事になるわ」


「なるほど、よくわからん。説明よろ」


 気になるのは、呪いをかけていたという言葉だな。

 それが分かれば、なんとなく理解できると思う。


「魔王を倒す為に、高位レベルの攻撃魔法が必要だったの。その為、自分に呪いをかけ攻撃魔法特化型になったわ。それで魔法使いだったわけ。今はその呪いを使えないから、元の賢者に戻っているって事。呪いの説明は不必要だと思うから、これでいい?」


「ン……? ん?」


「どうしたの? 話についてこれなかった?」


「あ、いや。ちょっと思ったんだけど、ミリアのソレ(、、)って、強化や回復にまわしていた能力を攻撃にまわしていたってことだよな?」


 伊達にゲーマーをしていたわけではない。

 これはスキルポイントを振り分けするのとほとんど一緒だろ。


「そうよ。分かっているじゃない」


「で、今それは出来ないんだよな?」


「ええ。そう言ってるわ」


「……もしかして回復や強化特化型にもできるのか?」


「今は出来ないけど、最初に異世界に呼ばれた時は、回復特化型にしていたわ……まぁ、結局攻撃特化にしたけどね」


 もう試したのか。しかも回復かー…死人が出てもすぐ生き返りそうだな。それはそれで怖い。聖女とか呼ばれたんじゃね?


 俺が思ったのは、強化特化型にすれば、とんでもない事になったんじゃないか?って事なんだ。

 だってレベル1で、あれだぜ? レベル9にしたらどうなるんだ? ちょっと予想する事もできない。見てみたい気もするけど、出来ないのはしょうがない。諦めるか。


「分かったよ。という事らしいですよ長さん」


「聞いている。しかし自分に呪いを掛け使える魔法系統を限定していた? なんだそれは。聞いた事もない」


「知らなくていいわ。あと、気にしていた戦力把握だけど、私が使える強化や回復魔法は、さっきの戦闘を参考してちょうだい。攻撃魔法に関していえば、混戦状況じゃなければもう少し効果的な魔法が増えるわよ」


「先ほどの戦闘報告は受けている。ツッコんだ話をさせてしまってすまない」


「いいわ。聞かれることは覚悟していたし。テラーはまたくるわよ」


「分かっている。できれば混戦になる前に、でかい一発を頼みたい」


 両者の苛立ちが感じられる会話を聞かされながら、思ったのだが、


「長さん、ミリアの魔法についてはゼグトさんから?」


「ああ、聞いている。彼女の攻撃魔法は高レベルだと」


「それ話したっけ? ゼグトさんと、そういった会話した覚えがないんだけど」


 いつ話した? と考えていると、ミリアが思い出したように教えてくれた。


「最初にゼグトさんに森を出る案内してもらった時でしょうね。あの時、呪いについて多少話しをした覚えがあるわ」


「ああ、ミリアがエルフなのに、魔力感知が……」


「それ以上は言わないほうがいい」


 言われ長さんを見ると、ミリアの方に目端だけを向けている。


「ん?」


 と、声をあげ俺も見てみると、ミリアの顔が沈んでいた。


 珍しい。


 彼女が落ち込むような態度というのは初めて見た気がする。

 俺がそんな感想を抱いていると、長さんが俺に顔を近づけた。


「知らないだろうが、エルフというのは、魔力操作に非常に優れている。そのエルフが、魔力感知が出来ない。と、いう話ともなれば……あとは分かるな?」


「……了解です」


 ドワーフにモノづくりが下手だ。とか言ってるようなものか。

 しかし、そのエルフとしてのプライドの価値観って別世界でも共通なのか?

 見ている限りは一緒のようだけど。


「街まで何もなければ、夕方前にはつくだろう。もうじきだ」


 そういう長の言葉がフラグに聞こえた。

 すぐに後方から叫び声が聞こえ、やっぱりという嘆息をついてしまったのは仕方がない事だと思う。

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