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Sforza~スフォルツァ~

作者: 黒主零

zero→α→本作→???

        ???

・ここはある中学校。

いたって普通の中学校。

時期は文化祭を終えた11月。

舛崎世一は3年生。

受験生だ。

とはいえもう推薦で合格はしている。

受験が終わって残る中学校生活を楽しんでいる。

10月に推薦が終わって1カ月。

そろそろ退屈し始めてきた頃だ。

「・・・何か面白いことでもないだろうか。」

舛崎は考える。

休み時間の廊下を歩く。

腕時計を見れば授業開始までまだ25分ある。

図書室に行って勉強という柄でも、グラウンドに出て走ると言う柄でもない。

舛崎は足の赴くままに廊下を歩いている。

と。

目前に何かを見た。

「・・・鍵?」

鍵だ。

鍵が浮いていた。

「誰かのいたずらか・・・?」

周りを見る。だが誰もいない。

舛崎は鍵を拾う。

と、直後頭の中に言葉が浮かんだ。

「・・・契約・・・?」

舛崎は驚く。

頭に浮かんだ言葉はこうだ。

{願いを一つ叶えよう。その代わり私と契約し能力を得てもらおう。そして、能力を得たものと戦ってもらう}

舛崎は保健室へ行こうとしたが足が動かない。

{答えは今すぐでなくもいい。

仮契約がある。願いはかなえられないが一週間だけ契約せずに能力を得ると言うものだ。}

「一週間後には契約か?」

{望むなら。契約を断ることもできる。ただしその場合はこの一週間の記憶と能力を消す。}

舛崎は考える。

その時。

「当然契約するだろうな?」

窓が割れた。

3階の窓が割れた。

割れた窓の外から見慣れた男が入ってきた。

同じクラスの柿崎だ。

「契約って、お前もか・・!?」

「俺はもうとっくに契約しているぜ。さあ、契約しろよ。そして俺に殺されろよ!」

柿崎が言う。

同時に突風が吹き荒れた。

舛崎の体が吹き飛ばされる。

「くっ!」

受け身をとり、廊下に着地する。

「・・風・・・!?それがこいつの能力!?」

「受け身か。だが、能力なしでいつまで持つかな!?」

柿崎が笑うと、風が弾丸となって放たれる。

舛崎が受け止める。

が、受け止めきれずにはじき飛ばされる。

「ぐううう・・・!」

壁にたたきつけられて膝まづく。

防いだ腕から血が流れていた。

「・・・内出血している・・・!ひ、人を殺せる能力なのか・・・!?」

舛崎が驚く。

「さて、そろそろ殺すぜ。」

柿崎が近寄ってくる。

と。

「それ以上動くな。」

舛崎の前に立つ少年。

同じクラスの後藤だ。

「後藤・・・!後藤一也・・・!」

「ちっ、てめえか。」

「柿崎、動くなよ?まだ契約もしていない奴を襲うとはな。」

「はっ。だから襲うんだろうが?契約すればどんな力を持つかわからない。

だから契約する前に殺す。てめえも殺す!」

柿崎が走る。

「・・・愚かな。」

後藤が言う。

と。

急に柿崎の姿が消えた。

「・・ド、どうなったんだ?」

舛崎が見る。

「・・・安心しろ。もう奴は襲ってこない。

舛崎、契約するかしないかはお前次第だ。俺は好んで戦ったりはしない。

だけど、敵として戦うときは容赦はしない。」

そう言って後藤は去って行った。

{契約はどうする?}

言葉が浮かぶ。

「・・・一晩考えさせてくれ。できるか?」

{・・・了承。}

言葉が浮かぶ。

「飛んでもないものが動き始めたな。」

舛崎が汗をぬぐう。


・夜。舛崎が考える。

「・・契約か。どんな願いでもかなう代わりに不思議な力を持たされて他の奴らと殺し合う。」

舛崎が考える。

あれから一度も言葉は浮かばない。

舛崎は考えながらそのまま眠りについた。

翌日。

舛崎は学校へ行く。

と。途中で後藤と会った。

「後藤、」「舛崎か。契約はしていないようだな。」

「ああ。一晩考えることにした。・・・後藤はどうして契約したんだ?」

「・・・俺は両親の仲が悪いんだ。今にも離婚しそうで。

だから願ったんだ。両親の仲が良くなるようにって。

おかげで家族が楽しいんだ。」

「・・・後藤・・。」

「・・俺もあのカギのことはよくわからない。」

後藤が言う。


昼休み。

あれから24時間たった。

舛崎の前に鍵が現れた。

{決断は下したか?}

「・・・俺の決断は・・・、」

舛崎が何かをいいかける。

その時。

「くっ!」

後藤が視界に入ってきた。

だが、明らかにいつもの後藤ではなかった。

右足には20センチくらいの定規が3本刺さっていた。

「後藤!?」

「・・ま、舛崎か・・!に、逃げろ・・・!」

後藤が言う。

よく見れば腹にも定規が2本刺さっていた。

「へえ、面白い。」

歩いてきた男。

隣のクラスの有地だった。

「有地・・・!」

「舛崎。お前も契約するのか?まあ、しなくても俺がここで殺すんだがな。」

有地が定規を出す。

「俺の能力は座標転換。触れずにものを瞬間移動させる。こうやってな。」

定規を見る。

一瞬で定規が消える。

同時に後藤の左肩に刺さる。

「ぐううう!!」

「後藤、貴様の能力は危険だからな。ここで始末させてもらう。」

有地が言う。

「・・・俺の決断は、」

舛崎が口を開く。

「・・仮契約する!」

{・・・仮契約承認。}

鍵が輝き、舛崎の体に触れる。

瞬時に舛崎の脳に自分の能力についての知識が理解された。

「コード・フォース!」

舛崎が叫ぶ。

と。

後藤に刺さった定規が全て消える。

「何!?こいつもテレポートか!?」

「違う。俺の能力は「力」。お前が使った定規を純粋な力に戻した。

そして、食らいやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

舛崎の正面に力が漂う。

純粋な力が有地を襲う。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

有地の体を吹き飛ばす力。

その体が数十メートルも飛ばされた。

鈍い音がした。

「・・・死んではいないだろうが、全身の骨は折れただろうな。」

舛崎が推測する。

と。

「立派な能力ね。で、あなたは敵?味方?」

一人の少女があるいてきた。

「・・・須田郁美・・・。」

須田は後藤のそばにより、手で触れる。

と、後藤の傷が治っていく。

「・・・私の能力は再生。私は一也の味方よ。」

「味方・・・?」

「そう。二人で協力して黒幕を探すの。で、あなたは敵?味方?」

「・・・俺は誰も殺さない。

まだお前達の仲間にはなれない。けど、誰の敵でもいたくない。」

舛崎はそう言って教室に戻って行った。

「・・・面白そうね。」

「・・・ああ。」

「で、あいつはどうするの?」

「・・・好きにしとけ。俺も好きで誰かを殺したくない。」

二人が言う。


・須田郁美。15歳。

細胞再生の能力者。

望んだ願いはこの戦いに関係ない人に一切の影響が出ないこと。

そのため能力者達は力の誇示のために一般人を攻撃することができなくなった。

朝6時に起床。

朝食を済ませて7時に家を出る。

電車で30分。8時前に学校につく。

「・・・今日もいい天気。」

須田が空を見る。

と。

いきなり目前にナイフが浮かんだ。

「!?」

ナイフが右目に突き刺さる。

「・・・まずはお前だ。」

手前に有地がいた。

「・・・昨日の・・・!」

「お前のせいで一般人を殺せなくなったんだ。

だがお前が死ねばその願いは無効となる。」

有地が言う。

「・・・あなたは何を望んだの!?」

「俺が望んだものはスリル。平凡な日々に退屈していたのさ。

おかげで今は最高にスリルを感じているぜ!」

有地がいい、ナイフが須田ののどに刺さる。

「!?」

「喉をつぶした。さあ、死んでもらうぜ。」

有地が言う。

直後、空気が変わった。

「…やはりとどめを刺すべきだったか。」

後藤がいた。

後藤の隣の空間。

そこに穴が開いていた。

「・・冥土へ直接、物理的に送ってやる。」

後藤が言うと、周囲のものが全て穴の中に吸い込まれていく。

「ちっ!」

有地が壁にしがみつく。

だが、壁ごと吸い込まれていく。

「・・・終わりだ。」

後藤がいい、有地は吸い込まれて消滅した。

「大丈夫か?」

「ええ。」

須田は自分の細胞を再生させて傷を治す。

須田の願いによってこの戦いに気付いたもの、影響されたものはいなかった。

ただ一人を除いて。

「・・・今のがお前の能力か・・・。」

舛崎だ。

「・・・お前か。戦いにでも来たのか?」

「いや、お前達の味方になろうと思ってな。」

「・・・どうして急にそう思った?」

「俺だって望んでこの力を得たわけじゃない。

昨日はお前を守るために仮契約したんだ。

本契約は・・・する気はない。」

舛崎が言う。

3人が学校へ行く。

つまらない授業が終わり、放課後になった。

舛崎の仮契約時間は残り142時間。

3人が廊下を歩いている。

「俺達の目的は一体だれが能力を与えたのか。

そしてその目的が何なのかを知ることだ。」

後藤が言う。

直後3人の足が止まった。

「・・このやばい感覚は・・・!」

「ああ。敵だ。」

3人が構える。

「・・・能力者が3人。しかも一人は一般人を守る邪魔な願いを望んだ女か。」

2年生の、平井だ。

本来は3人と同じ年齢だが留年した不良少女だ。

「・・・まあ、ごちゃごちゃ言わないで。・・・死んでもらうよ。」

平井が言うと、背中からおぞましい物体が生えてきた。

「・・・腕・・・!?」

舛崎が見る。

平井の黒い腕がのびて舛崎に迫る。

「・・・くっ!」

舛崎は力の壁でそれを防ぐ。

「・・・珍しい能力だ。今まで見たことがない。あんたは後回しだ。

まずはチャージに120秒もかかる男と、再生の女を殺す。」

平井が二人に向かう。

「させるか!」

舛崎が向かう。

だが、黒い腕で足場を崩された。

「うわあああああああああ!!!」

舛崎は地下2階まで落とされた。

「…くっ!足が・・!」

衝撃で右足がねん挫していた。

「・・・私が現れてからまだ20秒弱。

チャージまでまだ1分以上もかかる・・・!」

平井がいい、黒い腕が後藤に向かう。

「・・・なめるなよ!」

後藤はかわしてナイフで黒い腕を切り裂く。

「1分もかけさせない。お前に能力なんて必要ない!」

後藤がいい、懐に入り、ナイフで平井の首をさす。

「・・・侮ったな?」

「!?」

平井の首にナイフは刺さらなかった。

ナイフを伸ばす右腕。

その右腕が引きちぎられていた。

「くうううううううううううう・・・・!」

「能力なしで私に挑むなんて自殺としか思えないんだよ!」

黒い腕で後藤をなぎ払う。

後藤の体がまるでラケットにはじかれたボールのように勢いよくはじき飛ばされた。

「ぐっ!」

何枚もの壁を突き破って後藤が倒れる。

「とどめだ!」

黒い腕が後藤に迫る。

「ダメ!」

須田がそれをかばった。

黒い腕が須田の上半身を貫く。

「郁美!」

後藤が見る。

須田は力なく手足を下ろす。

だが。

「・・・チャージ完了。消え失せろ。アウト!」

後藤が叫ぶと、空間に穴が開く。

その穴に黒い腕が吸い込まれていく。

「何!?」

視界には入っていないが200メートル先の平井も吸い寄せられていく。

「・・・郁美、大丈夫か?」

「・・・ええ。何とか。」

血だらけの須田は傷を治す。

続いて後藤の右腕を再生させるために集中する。

直後。

須田の首が消し飛んだ。

「・・・これで結界は解けた。」

平井がいた。

吸い寄せられていた黒い腕を切断し、別の黒い腕を生やして須田の首を消し飛ばした。

「・・・い、郁美・・・!」

首を失った体は血を吹き上げながら静かに崩れ落ちた。

同時に平井の黒い腕も消える。

「・・・スタミナ切れか。貴様の始末は次に回すよ。

どうせその体じゃまともに動けないだろうからね。」

そう言って平井は去って行った。

舛崎が戦場にたどり着いたときに見た光景は

全身の骨を粉々にされて軟体動物のように床に倒れ込んでいた後藤と、

首を失って血を吐きだしながら硬直していた死体だけだった。


・病院に運ばれた後藤。

全身粉砕骨折と、右腕の喪失。

かなりの重症だった。

舛崎が救急車を呼び終わったときにはもう須田の死体は消えていた。

「・・・これが、闘いか・・・。」舛崎が病院のベンチに座ってつぶやく。

・同じ頃。学校。

「・・・ずいぶんと手傷を負っているな。」

苦痛に悶える平井の前に一人の男。

「・・・大川・・・!」

「ふん、だが貴様のおかげで一般人を殺すことができるようになった。

感謝するぜ。」

そう言う大川の手にはマシンガンがあった。

「・・・私も殺す気か・・・?」

「・・・いや、それはお前次第だ。

今のお前は腕を失ったダメージでしばらく戦えない。

いつでも殺せる。だから傷が癒えるまでの間だけ生かしてやる。」

「・・・いやな取引だね。

今ここで死ぬか、部下になって殺されるか。どっちにしろ死ぬじゃないか。」

「当然だ。で、どうする?」

「フン、私にはまだやらなきゃいけないことがある。手を組ませてもらう。」

二人が握手する。

夜。

車いすに乗った平井と、大川はある家に来た。

「なるほど。まずは復讐か。」

「・・・そうだ。」

大川が鈍く笑う。

「・・・このドアを破れ。」

「・・・わかったよ。」

平井は傷だらけの体から黒い腕を生やし、ドアを粉砕する。

ドアの向こうはやくざの世界。

「なんじゃいてめえらは!?」

リーゼント頭の男がにらみを利かせながらやってくる。

「後は下がってろ。」

大川が言う。

「・・・わかったよ。」

平井は後退する。

「…さて、パーティの始まりだ。」

大川が鈍く笑う。

「デス・カーニバル!」

大川が言うと、いきなりバズーカ砲が出現した。

「うおらああああああああああああああああああああああああ!!」

バズーカ砲をぶっ放つ。

直径20センチほどの弾丸が手前の男の体を簡単に消し飛ばし、奥へと進んでいく。

弾丸が奥の壁に命中して大爆発が起こる。

「ひゃははははははははははははははははははははははははははははは!!!」

大川はバズーカ砲を捨て、両腕にマシンガンを出して連射する。

数万発の弾丸がやくざたちを屠っていく。

「な、何だてめえは・・・!?」

頭領らしき男が撃たれたと思われる腹を抑えながらにらむ。

「・・・大川ラムネを知っているな?」

「大川ラムネ?」

疑問する頭領に大川は一枚の写真を見せる。

「俺の妹だ。心臓病で死にそうだった。

俺は契約することで心臓病を治した。

だがその翌日にてめえらがラムネを殺した!

手足を丁寧にもぎ取って!目玉を丁寧にくりぬいて!

綺麗に目のない首だけを俺の眼前にたたきつけたんだ!」

「・・・!まさかてめえあの時の・・・!」

「・・・てめえだけは許さねえ。殺すなんてものじゃない。総括してやる・・・!」

大川が言うと、頭領の全方位にマシンガンが出現する。

「骨のかけらも残さず砕け散れ!!」

大川が合図すると同時に一斉にマシンガンが連射される。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

1秒間に10憶発の弾丸が1時間以上放たれ続けられた。

言葉通り骨のかけらも残さずに総括した大川は血の匂いを体中にべっとりさせながら去って行った。


・落合美香子。13歳。中学一年生。

中学生とは思えないほどの小柄な体。

それゆえにクラスからは迫害されてきた。

それが原因で両親は離婚した。

そこで鍵が現れた。

望んだ願いは結界。

誰も自分に害をなそうとしなくなること。

それにより美香子は迫害されることなく生活を送っている。

「・・・こ、この女の子もなのか・・・?」

偶然美香子が能力を使っているところを見た舛崎が驚く。

「!能力者!?」

美香子が構える。

だが、舛崎は構えない。

「俺は敵じゃない。誰とも戦いたくない。」

「・・・・。」

舛崎は美香子へ協力を求めることにした。

仲間であった須田は戦死、後藤は再起不能。

それでもこの能力が何なのか、何のために存在するのかを探るために。

美香子もそれに協力することを決めた。

「でも先輩。どうするんですか?」

「ああ。まずはできるだけ能力者の横暴を止めよう。

あいつが死んだことでもう一般人へ平気で攻撃が行われるようになっちまった。」

舛崎が言う。

直後。廊下で銃声が響く。

「あっちか!」

二人が向かう。

そこには大川と、車いすに座る平井がいた。

「!お前は・・・!」

「・・・へえ、生きていたのか。」

舛崎が平井をにらむ。

「知り合いか?」

「昨日殺した奴の連れだよ。

地面にたたき落として殺したつもりだったんだけど。しぶといね。」

「お前が、あいつを殺した・・!

それに、俺達とは関係ない一般人を襲うなんて、許せない!」

「やるかい?力の少年。」

平井が笑う。

「丁度いい。2VS2だ。それでいいだろう?」

大川が言うと同時にマシンガンが出現して連射される。

「くっ!」

二人はかわす。

「こいつもくらいな!」

大川が手榴弾を蹴り飛ばす。

二人はかわして下の階に逃げる。

「君!君の能力は!?」

「私の能力は、水です!」

「水!?」「はい!水を自由に操れます!」

「なら!」

舛崎は水道管を握りつぶす。

同時に水が噴き上がる。

「・・・何をしようってんだ?」

大川が来る。

「・・・行きますよ・・・!」

美香子が集中する。

と、噴き上がった水が鎌の形に変わって大川に向かう。

「何!?」

大川はかわす。

だが、かわしきれずにその右足に突き刺さる。

「ちっ・・・!」

大川がバズーカ砲を放つ。

美香子は水の盾で防ぐ。

「くらいやがれ!」

舛崎は力を集約して大川に振り下ろす。

「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

大川は地面にたたきつけられて下の階まで落ちる。

「・・・野郎・・・!流石に二人がかりはきついか・・・?」

大川が立ち上がる。

だが、

「・・・!?」

すぐに倒れてしまった。

美香子の水に毒が混じっていた。

その毒で体が動かなくなっていた。

「3週間くらいで直ると思うぜ。」

舛崎が上から声をかける。

「・・・こういう戦いですか?」

「ああ。誰も殺さずに無力化だ。」

二人が去っていく。

「・・・くそっ!手足が動かねえ!」

大川がじたばたする。

そこへ平井が来た。

「お前か・・・!」

「無様だね。手を貸してやろうか?」

「ああ、頼む。あいつらめ、覚えてやがれ・・・!」

大川が吐き捨てる。

だが。

「けどもうお前があいつらに会うことはないね。」

直後黒い腕が大川を両断した。

黒い血が噴き上がる。

「・・・回復されたら私は間違いなく殺される。

あんたが手傷を負ったのはいいチャンスだったさ。」

そう言って平井は車いすで去っていく。

大川の死体もすぐに消滅した。

・舛崎が仮契約してから120時間がたった。

残された時間はあと48時間。

「・・・学校がなくったって、落ちつかねえよな。」

舛崎が自室で言う。

外は雨。

今日は日曜日。

「・・・後藤のお見舞いにでも行くか。」

舛崎が向かう。


・一方。

美香子は家にいた。

離婚したショックで母は精神崩壊した。

「・・・私の可愛い娘・・・私の可愛い娘・・・・ヴぁああああああああああああああ!!!!!」

台所で何度も壁を殴っている。

すでに腕の骨は完全に折れていて血も激しく流血している。

美香子はすでに我を失った母を悲しい目で見つめながら外に出る。

「・・・雨の日は嫌い。でも、雨の日の私は無敵だから・・・。」

美香子がつぶやく。

自然と足が昔よく遊んだ公園へと向かっていた。

「・・・まだ残っているんだ。」

美香子が見る。

と。

「きゃ!」

「っと、すみません!」

道の途中で立ち止まっていたために通行人とぶつかってしまう。

美香子は傘を拾って公園の中に入る。

自然と懐かしく幸せだった頃の記憶がよみがえっていく。

美香子には姉がいた。しかし腹違いの。

離婚した時に別れてしまった。

それ以来2年間、一度も会ったことはない。

「・・・今さら会えないよね・・・?」

美香子がうつむく。

すると。

「そんなことはないさ。」

後ろで声がした。

「・・・!この声は・・!」

美香子が振り向く。

そこには見覚えのある顔。

「お姉ちゃん!?紀香お姉ちゃん!?」

「ハロー、美香子。」

紀香がそこにいた。

「お姉ちゃん!!」

美香子が思わず駆けよって抱きつく。

「さびしかったよ・・・お姉ちゃん!」

「よしよし。美香子。ゆっくりと楽になりな。」

「・・・え?」

美香子が違和感を感じたときにはすでに胸にナイフが刺されていた。

「お、お姉ちゃん・・・?」

美香子が膝まづく。

「悪いね、美香子。私も契約したんだ。

あなたたち親子と別れてからお父さんは単身赴任ばかり。

でもさびしくなんてなかったよ。

信じてたもの。

いつか必ず4人仲好く暮らせるときが戻るって。

だから願ったんだ。今家族達は何をしていますかって。

そこでみたのは、単身赴任先で過労死したお父さん、あなたの家で壊れちゃったお母さん。

そしていつまでも自分から逃げることしかできないあんたよ!」

紀香が美香子を殴り倒す。

「くっ、でも、私も負けられないもの・・・!

せっかくこんな悲しい戦いをやめられるかもしれない可能性に出会ったんだから!」

美香子が集中する。

だが、

「・・・!能力が発動しない!?」

「そうよ。私の能力は触れた者の能力を120分間使用不可能にすること。

さっき触れたでしょ?

あんたは2時間能力を使用できない。

私達姉妹の戦いに能力なんていらない。

愛する心と憎み合う心があればいい!」

紀香がナイフで美香子の首を狙う。

「お姉ちゃん!」

美香子はかわす。

だが胸に刺さったナイフの傷が思ったよりも深く、動きが鈍い。

「はあ、はあ、雨で体力まで奪われて・・・、目がくらくらする・・・!」

「早く楽になりなよ!美香子!」

紀香が押し倒して馬乗りになる。

そこでナイフをさせば終わったのだが

あえてナイフを捨て、何度も美香子の顔面を殴る紀香。

「あんたのせいで・・・!あんたのせいで・・・!お父さんも!お母さんも!

それだけならまだいいのに、どうしてあんたは自分から逃げようとするの!?

あんたはお父さんとお母さんの悲しみさえも殺したのよ!

死んだことさえ殺したのよ!

お父さんの死も、お母さんの壊れたことも全部認めずに自分から逃げていたのよ!

そんな、美香子が許せない!」

美香子の頬骨が砕ける。

「・・・ごめんね。お姉ちゃん。」

美香子が笑う。

同時に銃声が響いた。

「え・・・?」

「あの時拾った拳銃。取っておいたの。」

笑う美香子の前で崩れ落ちる紀香。

「・・お家に帰ろう?お姉ちゃん。」

美香子が血だらけになった紀香を担いで家へと帰っていく。


・月曜日。

舛崎の仮契約の期限まであと6時間を切った。

「・・・俺はどうする?契約するのか・・・?

・・・契約するのだったら須田と同じ願いを望みたい。」

舛崎が昼休みを歩く。

と、悲鳴がする。

「・・一年生の教室から・・・?」

舛崎が向かう。

向うにつれて廊下が水浸しになっている。

「・・・いやな予感がする・・・!」

舛崎が走る。

走った先に待っていたものは。

「・・・美香子ちゃん・・・!?」

同級生10人以上を水で殺す美香子の姿だった。

「・・・先輩も来てくれたんですね・・・?」

「その子たちは、能力者なのか?」

「さあ・・・?私にはわかりません。もう、何が何だかわかりません。

・・・でも、もういいんですよね・・・?」

美香子が笑うと、水が鎌の形をして舛崎に向かっていく。

「美香子ちゃん!」

舛崎はかわしていく。

と、全方位から水の針が飛来する。

「力に戻れ!」

舛崎が手をかざすと、水が全て純粋な力に戻る。

「先輩・・・?先輩は私のこと、愛してくれますよね・・・?」

「美香子ちゃん、何が君を壊してしまったんだ・・・?」

「・・・先輩は私を愛してくれますよね・・・?」

「・・・戦うしかないのか・・・?」

「・・・愛してくれますよね・・・?」

笑いながら美香子が水の鎌を振るう。

「俺は君とは戦わない!」

舛崎は襲ってきた水をすべて力に戻す。

そして美香子に近づく。

「美香子ちゃん、誰だって君を愛する。愛に飢えた君を愛さないわけがない。」

「・・・先輩・・。違うんですよ、もう愛なんてどうでもいいんです。

もう愛なんてどうでもいいんです。愛してくれますよね?」

「・・・もう、だめなのか・・・?」

舛崎は拳を握り、美香子の腹を打つ。

「・・・眠ってくれ。美香子ちゃん。」

舛崎が言う。

美香子の体から力が抜けていく。

よほど精神的にも疲れていたのか、美香子は死んだように深い眠りについた。

「・・・保健室に運ぶか。」

舛崎が背負う。

と。

「そんな甘くていいのかい?」

そこに杖の音。

「・・・平井芽吹・・!」

舛崎がにらむ。

車いすから降り、杖をつきながら歩く平井がいた。

「知っているかい?もう能力者は私とあんた、

そこの子、そして後藤一也だけなんだってこと。」

「何・・!?もうそこまで・・・!?」

舛崎が驚く。

「・・・そろそろ始めないかい?最後の戦いを。」

平井が言う。


・舛崎の仮契約期限まであと2時間。

平井が現れた。

「・・・さあ、今日ここで全てを終わらせようか。」

「終わらせて何になる?戦って何になる?

残っているのが俺達だけならこのまま戦わずにいることもできるはずだ!」

「甘いね。今は私達だけさ。だがすぐに鍵は生まれる。

ここで最後の一人を決めないといつまでも戦いは続くのさ。

まあ、私はそれでもいいけどね。」

「・・・戦いを終わらせるチャンスってわけか。」

舛崎は美香子を下ろして構える。

「須田のかたき討ちをさせてもらう。」

「やれるものならどうぞ。」

平井がいい、黒い腕が2本出現する。

「2本!?」

「そう。今日は全開で行く!

手加減はできないと思ってくれて構わないから!」

平井がいい、2本の黒い腕が振るわれる。

「力に戻れ!」

舛崎はそれを力に戻す。

「へえ、だけどこの腕は・・・!」

黒い腕は力に戻らずに舛崎の腹に突き刺さる。

「!?」

「残念だったけど、この黒い腕は力の塊。

戻されるまでもなく最初から力なのさ。」

平井がいい、そのまま舛崎を窓から投げ捨てる。

「・・・さて、そろそろ出な。引きずり出してやったんだからね。」

平井が言う。

闇の奥に何かがいた。

だが、

「その前に貴様を殺す!」

声と同時に空間に穴が開く。

「!?これは・・・!」

平井がすぐに非難する。

穴が全てを吸い尽くしていく。

だが、10秒も持たずに消えてしまう。

消えた先に後藤がいた。

「やっぱりあんたか。最も重症の体を押してきたようだね。」

「黙れ。貴様を殺すのに腕は左右そろってる必要ない。」

後藤が言う。

「フン。効力が10秒しか持たない代わりにチャージ時間も短縮されているか。」

「黙れ!」

後藤がいい、空間に穴をあける。

平井は黒い腕で壁を掴んで持ちこたえる。

だがその壁も吸い込まれる。

「ちっ!」

平井は黒い腕を戻して走り去っていく。

「逃がしはしない!」

後藤が追う。

平井が角を曲がる。

後藤も角を曲がる。

直後、黒い腕が襲いかかってくる。

「くそっ!」

同時に後藤も空間に穴をあけて黒い腕を吸いこんでいく。

「くっ!」

平井が苦しみ、黒い腕一本丸ごと虚空に消えた。

だが同時にもう一本の黒い腕が後藤をなぎ払う。

後藤の体が数十メートル飛ばされる。

傷が開いて血が噴き上がる。

「…はあ、はあ、その体で腕を一本吸い込んだか・・・。」

「もう一本、そして貴様自身も吸い込んでやる。」

後藤が立ち上がる。

「・・・あの体、おそらくあと一発叩き込めば奴は死ぬ。

問題はどうやって叩き込むか。」

「・・・あと一回。それでフィニッシュだ。」

二人が考える。

と、平井がポケットから拳銃を出す。

「何も能力で殺さなくてもいい!」

拳銃を発砲する。

弾丸が後藤の体を貫く。

そこへ黒い腕を振るう。

「今だ!」

後藤が空間に穴をあける。

その穴に黒い腕が吸い込まれていく。

だが。

黒い腕は吸い込まれる前に消えた。

「この腕は戻すことだってできるのさ!」

平井は穴が消えた瞬間に黒い腕を出して後藤に振るう。

「俺をなめるなぁァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

後藤が叫ぶと、消えたはずの穴が再び開く。

「え!?」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

開いた穴に黒い腕が吸い込まれていく。

「これで終わりだ!」

そのまま平井の体も吸い込まれていく。

「はあ、はあ、やったぞ・・・郁美・・・!」

後藤が倒れる。

「後藤!」

そこへ舛崎が来る。

「・・・無茶ばかりしやがって・・。」

舛崎がつぶやく。

「・・・これで今立っている能力者は貴様だけとなったな。」

声がする。

同時に闇が発生した。

「闇・・・!?まさか、黒幕か・・・!?」

舛崎が構える。

「我が名はフォルテ。よくぞ最後まで立っていたな。」

闇の中から怪人が出現した。

フォルテと名乗る異形の怪人。

「訊いてもいいか?」

「何だ?」

「何のために俺達に能力を与えた?何のために殺し合わせた?」

「なるほど。教えよう。我が好んでいるからだ。」

「好んでいる?」

「そうだ。我は能力で死んだ者の血が好物なのだ。」

「血・・・?」

「そうだ。我が望むものはそれだけだ。

だから貴様らに能力を与えて殺し合わせ、そして死んだ者の血を飲む。

これが我の快楽。何物にも勝る美味なものだ。」

「・・貴様・・・!貴様はそんなことの為に今までどれだけ多くの血が流れてきたと思っている!

どれだけの悲しみが、怒りがあふれて行ったと思っている!

どれだけの命が散って行ったと思っているんだ!」

「そんなこと我の知ったことではない。

我はただ血がほしい。それだけだ。」

「貴様・・・!貴様のような奴は生かしてはおけない!

今まで死んでいった全ての能力者たちの無念の為に!

俺は貴様を倒す!」

舛崎が叫び、膨大な力を集束してフォルテに叩き込む。

「無駄だ。」

フォルテはそれを片腕ではじく。

「何!?」

「我が与えた能力だ。我に通用するとでも思っているのか?」

「・・・それでも俺は・・・!貴様を許せない!」

舛崎がさらに大きくて強い力を集めていく。

「消えてなくなれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

舛崎が集束した力を放つ。

だがそれさえもフォルテには届かなかった。

「さて、我に勝者などいらぬ。貴様の存在は不要だ。そのため選択肢を与えよう。

願いを一つだけかなえてやる代わりに記憶を失うか、あるいはこのまま死ぬか。」

「何だと・・・!」

「さあ、選べ。能力者よ。」

フォルテが迫る。

「・・・お、俺は、お前を許さない!」

舛崎が力を集める。

その時。

集めた力が消えた。

「!?」

舛崎、そしてフォルテも驚く。

「・・・仮契約が・・・切れた・・・!」

舛崎の体から鍵が出てしまった。

仮契約が切れた。

「貴様、仮契約だったのか・・・!?」

「こいつ、それを知らなかったのか・・・!?」

舛崎が驚く。

{汝、仮契約の期限は終わった。さあ、選択するのだ。契約するかしないかを。}

頭に文字が浮かぶ。

「・・・俺の決断は・・・!」

「させん!」

フォルテが舛崎に迫る。

だが。

「させるか妖怪野郎!」

後藤が意識を取り戻し、空間に穴をあける。

「ぐおおおおおおおおおお・・・・!」

「舛崎!逃げろ!こいつは俺が倒す!」

「後藤!?」

「・・・郁美の願いは平井を倒すことだけじゃない。

全ての黒幕であるこいつを倒すことだ!」

後藤が集中し、吸い込む力が強くなる。

フォルテの体が吸い込まれていく。

だが。

「貴様の契約を無効とする!」

フォルテが宣言する。

それにより、穴が消える。

「な・・・に・・・?」

「これで貴様の契約は無効となった。

貴様の望んだ願いも無効となった。

今貴様の両親がどうなってるか教えてやろうか?

互いに包丁を持って殺し合っているぞ!

ふはははははははははははははははははははははははははは!!!!」

フォルテが笑い、後藤は奥歯から血がにじむほどかみしめる。

「・・・俺の答えは決まった!」

舛崎が叫ぶ。

「何・・・!?」

フォルテが見る。

「俺は、契約する!そして望む願いは未来永劫の能力の封印・消滅だ!」

「馬鹿な・・・!?」

フォルテが驚く。

その邪な目の先で最後の能力者が契約を終える。

「パワァァァァァァァァァァァァドフォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォス!!!」

舛崎が集束した力を放つ。

「ふん、何度やろうとも・・・!」

フォルテが受け止める。

だが、

「な、何だこれは?我の体が・・・・消えていく・・・!?」

「俺の新たな能力、それは「封印」だ。俺が封印できるものは3つ。

そのうちの一つ!まずはてめえを封印する!

封印を解く方法は一つ!俺が封印解除を認めること、それだけだ!」

「ば、馬鹿な!?」

フォルテは封印されていく。

「・・そして、二つ目の封印。それは俺が封印を解除することだ。

俺は、封印を解除することを封印する!これでもう貴様の封印が解除されることはない!」

「そんな、馬鹿なぁァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

フォルテは完全に封印された。

「・・・そして、最後の封印。

それは、この戦いに関わったものからこの戦いの記憶をすべて封印することだ。」

舛崎が言うと、この能力者の戦いに関わったもの全てからその記憶が封印された。


・時が過ぎた。

もうあの戦いを知る者は誰もいない。

「・・・郁美、俺はお前が何で死んだのかは分からない。

だけどさ、なんとなくわかるよ。俺を守って死んだんだってな。

大丈夫。自殺しようなんて無責任なことはしないさ。

お前に救われたこの命、最後まで生き続けてやるさ。」

後藤が言う。

後藤は自分が右腕を失った理由を覚えていない。

「…ただ、どうもあのおせっかいな男のことが気になるがな。」後藤がどこ吹く風を見る。

「・・・お父さん、お母さん、お姉ちゃん。何も覚えてないけど私を許さなくてもいいけど見ててね。

私、今日から新しい家族と住むんだ。名字は、このままでいいんだ。

新しい人と一緒でもみんなとは家族のままだもん。」

美香子が言う。

意識を取り戻した美香子は家族が死んでいたことだけを知っている。

葬式を終えて今新しい一歩を踏み出そうとしていた。

「ねえ、お兄ちゃん。」

そして。

風は今日も吹くばかりである。


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