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異世界へ自分探しの旅  作者: 二枚重ね
パルジャスカ王国
4/7

新しい世界2

・・・ガヤガヤ・・・ガヤガヤ・・・・


今日のライブは客のノリも良く絶好調で気持ちが良い。

俺は客を煽ったりヘッドバンキングしながらライブを楽しんでいる。

曲が終わり千枝のMCが入る。


「今日は重要なお知らせがあります。」

「実は・・私達、才能が無いので解散します。」


え・・・何を言っているんだ。

客だってこんなにノッてくれているのに、と思い客席を見ると

誰もいない。

何が起こっているのか狼狽していると。


「私結婚するからじゃあね~。」

「俺も仕事決まったしな。」

「じゃあな、悠斗。」


そう言い残しみんな去っていく。


「みんな待ってくれよ!急にどうしたんだよ!」


俺は走ってみんなを追いかけるが一向に追いつかない。

それどころかみるみる距離が開いていく。


「みんな・・・どうして・・・」


俺は倒れながらメンバーの後姿を見つめていると

どこからか声が聞こえる。


「・・ト・・・さ・・・ま・・・ユート様!」


ふと目を開けるとそこには姫様とカロルが居た。


「ユート様!ひどくうなされておりましたが大丈夫で御座いますか?」

「良い大人がみっともないのう。」


俺は寝ながら泣いていたらしい。

俺は涙を拭おうとすると急に視界が暗くなる。

ムギュ!

何か顔にやわらかい物が・・・。


「ユート様!本当に大丈夫で御座いますか。悩みが御座いましたらなんなりと仰って下さいね!」

「フガッ!ウゴッ!」


姫様が抱きついてきた。

幸せ。苦しい。幸せ。苦しい。でもやっぱ幸せ・・・


「こらクレリー!ユートが死んでしまうぞ!」

「ああ!申し訳御座いません!大丈夫ですか?」

「あ・・あ。幸せでし・・・じゃない!大丈夫です!」


危うく逝ってしまう所だったがそれも悪くなかった。


「こちらの方が宜しいかと思って伺ったのですが、ひどくうなされている様でしたので・・・」

「あ、すいません。落ち着きましたのでもう大丈夫です。」

「ではお話をさせて頂きますね。」


姫様かわいい。


「実はですね。ユート様には騎士号に叙任して頂こうと思っております。」

「騎士?」

「はい。ですが失礼ながらユート様は我が国へ来られたばかり。実績がありませんとどうしても反対する者もおりまして・・・」

「どうして俺が騎士に?」

「この国は階級による影響がとても大きく、他の星から来られた方も例外では御座いません。」

「そこから先はワシが説明しよう。」


カロルがドヤ顔で話し始めた。


「ユートはパルジャスカ王国へ来たばかりじゃから客人としてもてなしておるが、基本的には平民と同じ扱いとなる。」

「平民のままじゃと行動に制限がつくのじゃ。例えば・・・」


カロルの話を纏めてみるとこんな感じだ。

この世界はほぼ階級社会。一部例外もあるらしい。

ざっくり言えば一番下から、平民、騎士、栄誉職、王族となっている。

平民以外の階級にはその中でまたランク付けがされている。

階級やランクが上がれば上がるほど、行動の制限が外れていったり、商売なんかだと税率が変わったりする。

階級やランクの上げ方は社会的貢献度と陣の強さ。これが1:1の割合で評価される。

俺は陣が使えないので社会的貢献度をかなり上げないといけない。

評価方法は国民からの評判、所謂世論らしい。


「・・・とまあ基本はこんな所じゃのう。ちなみにワシはクレリーの幼馴染であり陣の力が強い為、例外として栄誉職に就いておる。」


完全なるドヤ顔である。


「ふと思ったんだけど、質問いいか?」

「なんじゃ?」


さっきからずっと気になっている事がある。

この世界へ来てまだ間もないが平和にしか見えないのだ。


「カロルは国を救ってもらえる素質がある者を探しに俺の世界に来たんだよな?」

「そうじゃ。」

「平和そうに見えるんだけど、実は魔王が居たり魔物に苦しめられているとかがあるのか?」

「そんなもんはないぞ。古い文献では魔物相手に戦争があったとの記述はあるが、ここ1000年は平和じゃ。」

「じゃあ国を救うっていうのはなんなの?」

「この国を発展させて欲しいのじゃよ。お主が居た世界の様にな。」


俺は今まで国を救って欲しいと言われた意味は

ゲームの世界みたいに勇者になって魔王を倒して欲しいとか

他国に攻められているから助けて欲しいとかそういう事だと思っていた。

拍子抜けしてしまった。


「どの世界も人が集まり村、そして国となれば基本的な物は変わらんじゃろうて。」

「まずは町へ出て実際の国民の暮らしを体験し、お主に何が出来るのか考えて欲しいのじゃよ。」

「でも俺は何かの専門家でもないし、正直勉強も出来なかった方だぞ?」

「そんなもんは知らぬよ。ただ間違いなくお主は何かの素質がある。まずはそれを探すのじゃ。」


探すのじゃ!と言われてもそこまで期待される様な人間ではないんだけどなぁ。

目標はこの国の発展になるが具体的な事が見えない。

まだ魔王を倒してくれとかの方が楽・・・でもないな。

後これは聞いておかないといけないな。


「もし失敗したら俺はどうなるんだ?」

「一回や二回程度ではどうもせんが、あまり程度が過ぎると・・・」

「・・・過ぎると?」

「強制送還じゃな。」


磔の刑にされるとか命を取られるとかではなさそうで

ほっとした・・・・が。


「ここでの記憶は全て消させてもらう。」


まあ当たり前だよな。

魔法みたいなのがある世界だし記憶操作も出来るのだろう。

聞くまでもなく納得してしまった。


「分かった。俺に何が出来るか分からないがやってみるよ。」

「そうかそうか。では早速例の物を。」


カロルはテーブルの上に置いてあるベルを鳴らすと

黒いタキシードの様な服を着て

手には白い手袋をしたいかにも執事といった格好の

白髪の男が大きい袋を持って部屋へ入ってきた。


「こちらにユート様の準備として一般的な平民の服と3000パルご用意させて頂きました。」

「3000パル?」

「この国の通貨じゃ。パルジャスカ王国通貨。略してパルじゃ。」

「大変申し訳ないのですが、こちらが最初で最後のパルジャスカ王国からのユート様への贈り物となります。ですので・・・」

「ああ、分かりました。支度金を頂けるだけでとても光栄ですので後は自分でなんとかします。」

「ご理解頂けたみたいで助かります。これが私個人では精一杯で・・・。」

「ユートに対して好意的ではない者も居るという事じゃよ。」


普通に考えればそういう人も居るよな。

どこの馬の骨とも分からない奴を連れてきて

こいつが国を良くする!なんて言われても素直に賛同出来る人なんて

おそらく少数だろう。

人間関係も少し気を引き締めないとだな。


「それではまず国を見て回ろうと思います。」

「ユート様、頑張って下さいませ。当分の間はカロルがお傍につきますので宜しくお願い致します。」

「光栄に思うが良いぞ。」

「はいはい、よろしくたのむよ。じゃあ行こうか。」


姫様へ一礼をし、客間を出た。


これから何をすればいいのか

何が出来るのか分からないけど自分探しの旅と思ってやってみよう。

そう思いながらカロルと共に城を出た。

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