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08

バトルゲームの翌日。睦月はクラスメイトから話を聞かれていた。

同じクラスからテイマーが出たためか、やや興奮気味に。何も知らなければ睦月も同じように興奮気味に返したのだろう。ただテイマーの本当の役目。そして、秘密。それを昨日、目の前で感じることになった。

「って!睦月!!バトルゲームもすげぇけど!そこじゃねぇ!!」

「な、なんだよ…急に」

「忘れたのか!?期末試験!!」

すっかり忘れていた。

「いつからだっけ」

「再来週の火曜」

今日は金曜なので再来週とは言うが、ほとんど来週だ。

「しかも、今回点数悪いと夏休み補習だってよ」

「あれって赤点の奴だけじゃないの!?」

「いや、それが違うらしい」

真面目に、2週間前から勉強しているわけがなく、かといって点数がいいわけでもない。今日から、少しずつやるかと、考えはしたものの、多分うまくいかないことも目に見えていた。


放課後、睦月が帰っている時、ふと端末を見ると一点が光っていた。

「これって…」

バグだろうか。その場所に向かうと、路地だった。来たことがあるような気がするが、はっきりとは思い出せない。そんなことを思い出す前に、端末を見ると、ちょうどこの辺のようだ。

端末を操作し、裏世界に行けば、目の前にバグがいた。それは、初めて会ったバグとは形が違う。2度目だとしても、その姿は異様で前と変わらず、動けなくなった。

「睦月!」

ホムラが睦月とバグの間に入るように立つ。構えると、すぐさま撃ち、バグはそのまま消えた。端末を見れば、先程の光は消えていた。

「大丈夫」

「え…」

「私は睦月を絶対に守る。だから」

テイマーとエネミーは共に戦う。それは、昔から憧れていた人たちが言う言葉。それはバトルゲームではなく、このことを言っていたのかもしれない。

睦月はホムラの頭を撫でると

「俺も戦えるようになりたいな」

そう呟けば、驚いたように見上げられた。だが、すぐに目を伏せて嬉しそうに笑った。

「?」

「どうした?」

「エネミー」

エネミーであれば、他のエネミーが近くにいればわかる。ホムラはエネミーのいる方に歩いていった。睦月もついていけば、空き地があった。その前には、よく知ったエネミー。

「宗兵衛!」

「あぁ。無事だったみたいだな」

「あれ?姉貴は」

バグに気がついてきたなら、葉月もいそうだが見渡してもいない。

「教師に呼ばれてな。睦月が近くにいるからと、俺だけ先に行けといわれてな」

一緒に戦うと決めたばかりだからか、それには少しため息がもれる。宗兵衛はそれに楽しげに笑った。

先ほど、バグに気がついた葉月が端末を開けば、近づくテイマーの反応があり、慌てて宗兵衛に行ってと言っていたのだ。睦月が着く前にすでにバグは見つけていたが、強いバグではなさそうだったので、見守るだけにしていた。さすがに目の前に出てきたときは驚いたが。

「そういえば、姉貴ってテイマーの素質検査でテイマーになったんだろ?宗兵衛と、どうやって会ったの?」

「どうしたんだ?急に」

「いや…考えてみたら、俺とホムラって結構すごい出会い方だって思ったから」

「テイマーとエネミーの出会いは、大抵そんなものだ。俺と葉月もちゃんと顔合わせたのは、お前たちと同じようなものだしな」

随分と含みのある言い方だ。ただそんなことよりも気になったのは、同じで出会い方というところだ。

だが、葉月のことだからめんどくさくて特に何もやらず、結局バグに巻き込まれた。というのが簡単に想像できてしまい、渋い顔になる。

そんな睦月の考えがわかったのか、苦笑いで宗兵衛が付け加えた。

「葉月と出会ったのは葉月が7歳の時だ」

「………え!?」

「その前から、俺は葉月のことを知っていたが、その時はまだ前のテイマーの守護をしていてな」

「え…前の?って、宗兵衛ってあの、えっと…継承タイプっていう?」

「あぁ。そういえば、言ってなかったな」

それは意外だった。基本的に、親から継承すると聞いていたが、睦月の両親は共にテイマーではない。いったい誰から継承したというのだろうか。

「なぁ、姉貴の前のテイマーって」

「ん?千代のことか?」

「千代?」

知らない人だ。

「姉貴は、その千代って人から色々教わったの?」

「いや。千代はもう死んだよ。彼女を看取ったあと、俺は葉月のエネミーになったんだ」

「…」

神奈のことを思い出し何も返事ができなかったが、宗兵衛は笑いながら続けた。

「100歳になりたかった。なんて、最期まで変わらなかったよ」

「え…」

「あぁ。96歳だった」

「…」

「どうした?」

「い、いや、そうだよな。全員が全員、バグに殺されるわけじゃないよな…」

「あぁ。そうだな。それに、千代は二十歳に裏世界に来れなくなっていたからな。バグと会うことすら少なかった」

なにかに服が引かれる感覚に、下を見ればホムラが見上げていた。

「睦月は守る。大丈夫」

「あぁ。そうだな」

「さて…睦月。そろそろ戻ったほうがいい。葉月が心配する」

「いや、絶対あいつは心配してない」

「そうとも限らないだろ?」

「宗兵衛は姉貴のこと買いかぶりすぎだって」

その睦月の言葉に、宗兵衛が何か言おうとするが、苦笑して飲み込んだ。それに気づかず、睦月は戻ろうと端末を操作していた。

戻るための最後の操作をする前に、ふと宗兵衛を見れば空き地をじっと見ていた。

「ここ、なにかあるのか?」

「ん?いや…元々、千代がいた場所でな。今は何もなくなってしまったが」

裏世界に無ければ、表世界もきっと空き地なのだろう。多少の違いはあっても、建物は変わらない。

「あまり帰りが遅いと心配するぞ」

「あ、うん。じゃあ、また」

「あぁ」

ホムラは小さく手を振っていた。振り返して、表世界に戻ってくれば、やはり空き地は空き地。売り出し中の土地らしい。

「ここ、どこだろ…」

歩いていれば知っている道に出るだろうと、適当に歩き出し、その小道を見つけた。子供がなんとか通れるような道。向こう側には、小さな公園。

「…あぁ!!」

来た道を振り返り、その場所を見れば思い出した。

「あそこ、木下のおばあちゃんの家だ」

昔、葉月が毎日のように通っていた近所のお婆さんの家があった場所だ。睦月も通っていた。というよりも、葉月を迎えに行っていたというのが正しい。

「じゃあ、木下のおばあちゃんって…」

そういえば、昔、あまり木下の家には近づいてはいけないと言われた。もちろん葉月もそうだ。だが、葉月は無視して木下の家に遊びに行っていた。

睦月は素直に言われたとおりに、あまり近づいていなかったのだが、葉月のせいでよく行くようになっていた。

子供の噂など適当なもので、あの家には魔女が住んでるなんて言われていた。ただ睦月から見た木下千代は普通の優しげなお婆さんで、どうして魔女と呼ばれているのか聞いたことがあった。

結局、誰も答えてくれなかった。いや、子供は知らなかったのだ。

だけど、魔女だと友達みんなに言われ、睦月は葉月を魔女に食べられないようにと友達の元に呼んだこともたくさんあった。最初の方はそれでよかったのだが、途中から友達が葉月を嫌がった。

『葉月、勝手にどっかに行くんだもん!』

『公園の中だけだって言ってのにさ!ズルする奴はいれてやんねェ!』

葉月も結局そのくせを直すことはせず、木下の家に遊びに行くことが普通になったのだった。


家に帰ると、夕飯の支度をしている葉月がいた。

「おかえりー」

「ただいま。って…何普通に夕飯の準備してんの」

「え?」

「さっきまでバグいたのに…それに!来ないしさ!!」

「仕方ないじゃん!先生が休んだ分の数学の範囲やるからって授業やってたの!倒せたんだからいいじゃん!」

「それはそうだけど…」

何か納得いかないでいると、野菜室から玉ねぎを取り出した。

「また玉ねぎの味噌汁?」

「よくわかったねー」

母が夕方のパートを入れていると、大抵睦月と葉月が夕飯を作るのだが、葉月が1人でメニューを作ると何故か玉ねぎの味噌汁の出現率が多い。別に玉ねぎは好きではないらしいが、冷蔵庫に必ず入っているから具にしやすいらしい。5回作ったら、3回は献立に入る。

「他にないの?」

「無いよ」

中身を見れば、そこそこいろいろ入っている。一応、他に何を作るのかと聞けば、なぜか知らないが玉ねぎのコースが出来上がりそうな勢いだった。

「実は玉ねぎ好きだろ」

「別に好きってほどじゃないよ?」

「あー!もう!」

なぜか知らないが、葉月は手伝いはするものの何故かどこか偏る癖がある。だから、睦月も手伝うようになった。

「そういえば、宗兵衛って木下のおばあちゃんのエネミーだったんだな」

「そだよ」

「姉貴、そのこと知ってたの?」

「そもそもテイマーのこと知らなかったし」

「じゃあさ、なんで木下のおばあちゃんのところに行ってたんだよ?魔女に食われるって言われてたじゃん」

「あー…そういえばそんな噂あったね」

楽しげに笑って玉ねぎを切る葉月は、なんでもないように続ける。

「おばあちゃん、神隠しにあったらしいよ?しかも、何回も」

「え!?マジで!?」

「マジマジ」

素直に驚いていると、伊勢が言った、昔は裏世界に引き込まれることを神隠しと間違われることを思い出し、葉月を睨む。

「それって、バグ倒しに行っただけだろ」

「ハハハ。バレたか」

ただ同時に、葉月がいつの間にか居なくなることが多かったことを思い出し、葉月の方を見る。

「姉貴もよく引き込まれたの?」

手が一瞬止まるが、すぐに口端を持ち上げ包丁を持ちながら器用にピースを作ると、いつもの笑みで

「睦月君よりもずぅ~っと強いからねぇ」

「危ない!!包丁もったままやるな!!」

「はい…」

大人しく包丁を置くと、まな板を渡してきた。

「ま、別に宗兵衛が絶対に守ってくれるし、怖くなかったけど」

「宗兵衛が間に合わないとか、考えないのかよ」

「なんで?」

本当に疑問のようで、驚いて聞いてくる。あまりのことに睦月もなんと答えるか迷ってしまった。すると、葉月は笑って

「信じてるし、睦月だって、ホムラちゃんが来てくれるって信じてるでしょ?

 …あ、でも、睦月は男なんだから女に守られるなんてかっこわる…」

「う、うるさいなぁ!俺はホムラと――」


ガチャッ


鍵の開く音がして、2人して会話をやめた。そして聞こえる母の声。

「ただいまーあら、今日はちゃんと2人で作ってるのね」

「睦月が玉ねぎの味噌汁に文句言ってくんだもん」

母と葉月が楽しげに話す様子を、睦月は消化不良となった言葉を飲み込みながら聞いた。

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