表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/20

07

映し出されるグラフはほぼ横這いだが、数ヶ月で緩やかに上がっている。

「これは、バグの発生件数です。ここ数ヶ月で数が増えています。原因はまだ分かっていませんが、主に関東で増えているようです。これからも増えるのか、一時的なものかも分かってはいません」

「原因がわからないって…そもそもバグとか、色々説明が足りないよ」

琉美が呆れたように聞けば、伊勢も痛いところをつかれたのか、難しい顔をした。

「そもそも、裏世界について、あまり解明されていないんだ」

答えたのは安倍清哉だった。

「裏世界が暗く荒廃している理由。この表世界と鏡のように同じ建物がある理由。バグだけじゃない。エネミーだって、彼らが何からできているのか、そもそもなにものなのか。わからないことだらけだ」

「待ってください!エネミーについては、協力的なエネミーのおかげで研究が進んでいます!それに、バグの発生パターンや対処方法、それについては研究が進んでいます!全部が全部わからないというわけではありません!」

さすがに何も知らないというわけにはいかないのか、伊勢が慌てて訂正した。

一度グラフを閉じると、新しいファイルを開く。どうやら、今回の会議で話す予定はなかったらしく、準備に手間取っている。画面に映った日本地図は大きな都市に、グラフが立っている。

「バグの発生ですが、主に大都市での発生が多く、離れれば離れるほど少なくなります。対処は、バグの中に存在する核を破壊すること。他の部分を破壊しても、時間によって回復します。特定の誰かを狙うわけではなく、目の前のものを破壊する。それがバグの主な行動原理だと思われています」

そのため、バグを取り逃がすということはなく、対峙すれば必ず倒せる。途中撤退という言葉は、バグには存在しない。

「エネミーについても、バグと同じく核が存在しています。我々がテイマーを判別するための検査は、この核から出される波長とテイマーから出る波長が一致することから作られています」

これが、最近学校で身体検査と共に受けることが多くなってきた検査だ。だが、まだすべての学校というわけではなく、私立を中心とした中学、高校のみだ。もちろん、個人的に受けることはできる。公立で受けるのはごく稀だ。だからこそ、葉月がその検査があり驚いてきたのだ。

「じゃあ、なんで俺の時わかんなかったんだ?」

こっそりと葉月に聞けば、首をかしげた。

「新生エネミーだったからでしょう」

答えたのは玲香だった。

「エネミーには継承するタイプと新しいタイプの2種類が存在してるの。伊勢さん。時間をもらっても?」

「えぇ。構いません。元々、新たなテイマーの為の会議ですから」

「では…先ほど言ったとおり、エネミーには前の世代から受け継ぐタイプと、新たにその人につくタイプがいるの。

 私や安倍さんは継承タイプの代表みたいなものよ。継承タイプはその高い知性が特徴。エネミーによっては、昔のテイマーを覚えているエネミーもいるわ。

 新生エネミーは、あなたのように、誰かから譲り受けたエネミーではないエネミーのことで、あまり知識を多く持ち合わせていないのが弱点よ。戦闘力も個々でばらつきが激しい。これは、テイマーの才能が大きく左右していると考えられているの」

玲香は一度葉月の方を見て、そして睦月に視線を戻した。

「だから、あなたの場合エネミーが生まれたのが、検査よりもあとだったのよ」

「そうだったんですか…ありがとうございました」

一応、納得して、礼をいえば玲香は微笑んだ後座った。

「その検査でテイマーが波長を出す物。エネミーであると核のような何か重要な鍵があるようです。それが、エネミー発生の起因となっているようです」

「え?そこははっきりしてないの?」

「はい。すみません。現在、研究中です」

先程、玲香が言っていた継承タイプのエネミーであれば、多少その鍵に予想がつくというが、新生エネミーではそれがなく結局わからないという。

「何か質問があれば、できうる限り答えますが」

誰も手を挙げなかった。というよりも、挙げられなかった。今、説明されたことを現実として受け入れるには、随分と大きすぎるもので。伊勢も悟ったのか、端末からいつでも聞きたいことがあれば聞いていいと言われた。

「では、今日はこれで終了とします」

解散は自由らしい。

「あー終わった終わった」

飛鳥が時計を見ると、ため息をついた。

「俺ら、先に帰るな。飛行機の時間あるし。東京土産買って帰りたいし」

「相変わらず急ぎだな。北海道は」

「本州じゃねぇし…帰るのも時間かかるしな。そのくせ、明日普通に学校だし、テストも近いしな」

「北海道はでっかい――」

「ん?なんかいった?」

「ナンデモナイデス」

東北チームの中でも、北海道の2人は、先に帰ってしまう。葉月も手を振っていた。睦月は、背中を叩かれてやっと気がついた。

「日野?」

「琉美でいいよ。アタシも帰るから、挨拶くらいしておこうかなって」

「あ、そっか」

「…なんかさ、やっとスッキリした感じするんだよね」

「え?」

「先輩がさ、黒い変なののことになると妙にはぐらかして、私だけでできるからーって、あんまり近づけさせなかった理由っての?やっとわかったからさ。睦月もそんなんじゃないの?あの姉ちゃんとかに、はぐらかされてたんじゃないの?」

睦月の場合、はぐらかすというよりも、突然のバトルゲームへの参加で、聞くタイミングなんてものが無かった。それを葉月が狙っていたかと言えば、もちろん狙ってなどいない。

「そうだ!アドレス交換しとこ!」

ほらほら!と急かされ、アドレスを交換すると、その勢いで帰っていってしまった。

その頃、葉月はのんびりとお茶を飲んでいた。

「何事もない?葉月」

「問題ないでーす。毎回心配してくれなくても大丈夫ですよ?宗兵衛いるし」

「そう。よかった」

安倍はそういえば微笑んだ。ただ隣にいる九十九は目を細めた。

「あら…ずいぶんと信用されているようですね。猫又」

「ははは…だからといって、色々やんちゃをされるのは困るんだがな」

「今回の主人は、随分と手間の掛かる御方のようで。…まぁ、楽しそうには見えますが」

「すまない。最後の方、なんといった?」

「まるで親子のようだと言っただけです」

「それはどうなんだ…」

宗兵衛が呆れるのだった。玲香もじっと葉月を見ていた。

「な、何?」

「いえ。貴方は何も言わないくせがありますから…私は関東テイマーのリーダーなんですから、そういうことは知っておく必要があるの」

「ぇ…あ、はい。ありがとうございます…?」

「素直じゃないわね」

美優が苦笑いする。


徐々に人は減り、ついに関東チームだけになった。玲香が労いも込めて、家に招待すると言われ立ち上がった。

「あ、あの…」

「何?」

郁弥が帰ろうとする玲香に声をかけた。

「もし、バグとの戦いで死んだら…両親とかには」

「事故で死んだと処理されるわ」

「そんなのって」

「慈悲で教えたとして、どうなるっていうの?どうにもならないのに」

「…」

「最悪っ!要はただバグを倒して、負けたら忘れて捨てられるだけの駒!」

神奈がその場にいた全員を睨みつけ、そして出ていった。

「あ、神奈ちゃん!」

慌てて追いかけていく郁弥と、睦月も追いかけた。

「もしかして、あの子も…」

玲香の呟きに葉月が反応したが、何も言わなかった。


追いかけた2人だったが、見事に神奈を見失っていた。

「ど、どこいったんだ…?」

「…」

「俺、あっちの方探すから」

「先輩」

「何?」

「もういいです。たぶん、帰ったんだと思います」

「でも…」

あの怒り方は尋常じゃない。1人にしておくわけにもいかないだろう。

「神奈ちゃんが怒るのも無理ないです。僕も今日の話を聞いて、正直嫌でした」

「…何かあったの?」

「小学生の時、僕と神奈ちゃんと、もう1人、女の子と一緒によく遊んでたんです。でも、その子は、テイマーでバグに殺されたんです」

「!」

「僕はバグが出るとよく引き込まれる体質だったみたいで、もちろんその子はテイマーですから、すぐに助けに来てくれました。でも、神奈ちゃんは来れなくて、僕とその子でその話を教えていたんです。その時は、これを話しちゃいけないとは知らなかったので。

 それで、ある日、その子が目の前で殺されて…学校では事故死ってことになってました。でも、神奈ちゃんには、ちゃんと教えないとって、僕が本当のこと教えたんです」

睦月は何も言えなかった。2人の間に漂う空気を見事にぶち壊したのは、葉月だった。

「2人共~お嬢様の家にいくよー」

「…空気読めよ」

「男2人の空気なんて読みたくないよ。…まさかいい雰囲気だったとか…?」

「違うし!読めないの間違いだろ!!」

「その可能性はなきにしもあらずかな!」

「あ、あはは…あ、でも…神奈ちゃん、帰っちゃいました」

「あらら…それは伝えとくよ。でも、君はこないと、こいつが男1人になるから、来てあげなよ」

「というか、俺は参加決定なの!?」

「え…だって、いつも私が夕飯いらないって言ってるから、お母さんたぶんお前の分用意してないよ?」

考えてみればそうだ。同じ場所に行って、姉は必要なくて、弟が必要なんておかしな話だ。

「ね?」

「あ、はい」

郁弥が頷くのと同時に、踵を返して歩き出す。玲香の家は、ここから歩いて行ける範囲にあるらしい。

「はーやーくー」

「は、はーい!」

「こういう時だけは元気だなっ!ホント!」

急いで葉月を追いかけるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ