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06

バトルゲームが終わり、その様子が中継されていた数あるドームの中でも、最も大きなドームで現在表彰式が行われていた。ナンバーワンテイマーや上位ランクのテイマーたちのインタビューも行われることもあるからか、外の出店はあまり人がいない。

そんな中、出店で買いあさった食べ物を食べている、騒いでいる男女がいた。

「やっぱ屋台のたこ焼きって別格だよな!!」

「わかる!フランクフルトもなんでただのソーセージなのに、外で食べるとおいしく感じる5んだろうね?」

「永遠の謎だな!」

「ほどほどにしろよ…」

宗兵衛が呆れて声をかけるが、聞こえてはいなさそうだ。

『私が何をしたわけではありません。私はフィーと共に戦い、そして勝った。ただそれだけですわ』

玲香のインタビューが大画面で流れていた。次に、近畿のリーダーである安倍清哉、今回の2位のテイマーになる。

「そういや、お前いいの?」

「俺は今回、1人だからな」

前回と同じなら、3位に並ぶのは隣にいる男だった。だが、今回は表彰まではいかなかったらしい。


一方、控え室にいた睦月は、郁弥に色々聞かれていた。

「じゃあ、先輩の方にバグは来なかったんですか?」

「うん。というか、バグって…」

「あ…えっと…僕にもよくわかってないんです。榊先輩がいうには、本来の敵で、この後重要な話があるとか…」

「重要な話…」

葉月はそんなこと一切言っていなかったが、それを聞いたところで、めんどくさかったんだもん。の一言で終わるだろう。生まれてからずっと一緒にいるからか、そろそろ慣れてきている。

「あれ?葉月ちゃんはまだ戻ってないの?」

美優が周りを見てそう言った。つい30分ほど前、葉月は出店の方に行ってしまいまだ帰ってきてない。

携帯を取り出して呼び出せば、すぐに戻ってきた。片手にリンゴ飴を持って。

「おかえり。車きたから、そろそろ行くよ」

「あ、はーい」

あまり広げていないおかげで、荷物はすぐにまとまった。裏口にワゴン車が止めてあり、そこに乗り込んだ。玲香が最後に乗り込み、車は出た。

「あの、僕たちこれからどこに行くんですか?」

「防衛省第一特務部隊よ」

玲香の言葉で車の中には、どこか重い空気が漂い出した。


ガッガッガリッ…シャクシャクガッ


「…あなたはどうしてリンゴ飴を食べてるの?」

葉月の場違いなリンゴ飴の食べる音が響き、玲香がつい聞いてしまった。

「それは、出店で売ってたからだよ。200円」

「あぁ…そう」

心の中で全力で、玲香に謝る睦月だった。


そうこうしているうちに、目的地についたようで、車が止まった。どうやら、地下駐車場らしい。運転手に礼を言って、玲香が足早にエレベーターへ向かう。途中、ゲートがあったが、警備員が開けておいてくれた。

「…な、なぁ」

「ん~?」

リンゴ飴を齧りながら振り返る葉月に、まずはそれをやめさせる。

「とりあえず、リンゴ飴しまえよ」

「しまうって、どこに?」

どこと言われても困るが、これだけ物々しい空気の中、残り少なくなったリンゴ飴を齧れる葉月に呆れるしかなかった。エレベーターに長い間乗り、地下へ向かう。

エレベーターを降り、廊下はすぐに突き当たりについた。ドアの横には、管理室と書かれたプレート。

「失礼します」

玲香がノックし入れば、そこは広い部屋だった。壁一面に映像が映っている。

「よっ!ビリ」

いきなり声をかけてきたのは、東北チームのリーダーだ。一昨年から参加しているので、睦月も顔は知っている。葉月の食べ終わったリンゴを見て、部屋の一角にある給湯スペースを指すと

「ゴミならあそこに捨てていらしいぜ」

「あ、そうなの?」

食べ終わった棒をゴミ袋に捨てにいく葉月に、珍しそうに部屋を見渡す睦月、郁弥、神奈の3人。

玲香はどこの会議室かと聞くと、さっさと向かってしまう。美優もついて行き、睦月も、あまり離れないように、追いかけようとしたが、後ろで郁弥の声がした。

いち先輩ですよね…!東北チームのリーダーの…!」

「…うん。まぁ、知ってた」

「え?」

「そんな変な名前だからだよ。そのへんの難読漢字より難しいじゃん」

「だよなぁ…俺もそう思う。学校の先生とかマジ読んでくれないからな」

そこで、さすがに名前を間違えたことに気がついたのだが、一の読み方が思いつかなかった。

にのまえだ。ちなみに下は飛鳥あすか両方とも普通に読めないってのが、どうかしてるよな…」

「飛鳥は有名じゃん」

「まぁな」

名前を間違えたことに、慌てて何度も謝る郁弥に、神奈も呆れたように読みにくい名前を考える昔の人が悪いと、フォローのようなもの入れていた。睦月も少なからずその読み方に驚いていた。

「ところで、いっちゃん。お嬢様は?」

「もう行った」

後で聞いたのだが、葉月が言った『いっちゃん』というのは、一から取ったあだ名で、昔からよくそう呼ばれているらしい。2人に睦月達もついていけば、広い会議室だった。

「あ…」

「やっ!さっきぶりだね!」

先程まで戦っていた、褐色の彼女がいた。

「なんか物々しい雰囲気だね」

そういって近づくと、睦月の耳元で聞いた。

「なんか、アタシらが戦ってる間に何かあったらしいよ。知ってる?」

郁弥に言われたことを伝えれば、バグについて聞かれ、それはわからないと答えると驚かれた。

「嘘!?だって、アンタの姉ちゃんあの人だろ?知ってんじゃないの?」

「本当に何も知らないんだよ」

「ふーん…あ、そうだ。アタシは日野琉美ひのりゅうみ。アンタは?」

「佐倉睦月だよ」

「睦月ね。よろしく!沖縄にくることがあったら、案内してあげるよ」

「沖縄に住んでるの?」

「そうだよ」

九州地区のメンバーの中でも、琉美は唯一の沖縄出身だという。そもそも沖縄のテイマーは数が少ないらしい。

スーツの女性がパソコンを操作して何かの準備をしていると、もうすぐ始めるから座ってくださいと玲香に言われた。全員がなんとなく地方ごとに集まって座っていた。

「あ、そうだ。睦月。これあげる」

「なにこれ?」

「いっちゃんが北海道土産くれたの」

「じゃあ、自分で食べたほうがいいだろ。せっかく持ってきてくれたんだし」

「食べたって…箱ごともらったから、ちょっとあげる」

「ありがと」

あとで礼を言おうと思って、そのキャラメルを食べた瞬間、2名の目が光ったのを俺は気がつかなかった。

「っ…!?」

甘い。甘いのだが、何かくさい。そして、逃げられない。

とにかく、まずい。

「せ、先輩…?大丈夫ですか?」

「一応…」

お茶で流し込めば、視界の済で親指を立てている2人がいた。

「まずかったー?」

「なんだよ!?これ!」

「ジンギスカンキャラメル!!」

「わりーわりー。口直しにこれやるよ」

そういって、飛鳥が近寄ってくると箱から先程の包み紙に包まれたキャラメルを出してきた。箱には、牛乳キャラメルの文字。

「…それ、本当に牛乳キャラメルですか?」

葉月なら箱の中にジンギスカンキャラメルにして笑顔で出してきそうだ。疑いの視線を飛鳥に送ると、飛鳥は驚きながら葉月の方を見て

「お前、普段弟に何してんだよ」

「んー…いっちゃんが優真ゆうまにしてること?」

「あー…それは確かに警戒されるわー相当のバカじゃない限り。さすがに、初対面のやつにそこまでひどいことはしねぇから。安心しろって」

「そうですか」

今だに警戒してはいるものの、食べてみれば本当に普通の牛乳キャラメルだ。

「あ、これはおいしい」

「だろ?」

「俺も食べたーい!」

北海道地区のメンバーである優真が、そういえば、飛鳥にすごく嫌な顔をされ、それでもキャラメルが欲しいといえば、やっともらえた。そして、口に入れた瞬間、さっと青い顔に変わった。

「うわぁ…」

葉月が珍しく同情した。

「葉月。遊びはそこまでにして、始めるわよ」

「え…!?どう考えても、私そんなに騒いでないよね!?」

「あなたが発端でしょ」

そこは否定しない。というよりも、発端ではある。飛鳥も優真も席に戻った。

全員が着席したところで、スーツの女性が立ち上がり挨拶を始めた。

「まず演習、おつかれさまでした。私は、伊勢と申します。貴方がた、テイマーの方々と連絡は基本的に私を通すことになります。連絡先は端末に入っているので、後で確認をお願いします。そして、今ここで話す内容全てを口外することを禁止します」

部屋の電気が切れると、スクリーンが映し出される。

「最初に、バグとエネミーについてですが、ここにいる半分以上が新テイマーということなので、説明しますと、共にこの世界とは違う世界…平行世界である我々が裏世界と呼んでいる場所に存在するモノです。先程のバトルゲーム、つまり演習を行なっているのはその裏世界です。エネミーはみなさんも知ってる通り、テイマーと共に戦う存在ですが、違うのが戦う相手。

 本来のテイマーとエネミーが戦うべき相手は、バグです」

「アタシはバグっての知らないんだけど」

琉美は手を挙げて聞けば、伊勢も頷き

「バグというのは、エネミーと敵対する裏世界のモノであり、災害です」

「災害?」

「はい。バグが裏世界で現れた時、表世界にも少なからず影響がでます。これは、個体差があるようですが、バグが存在することによって、表と裏が近づき、境界があやふやになるためだと思われています。そのため、才能がある人間は自分の意思に関係なく、裏世界へ引き込まれる場合があります。神隠しのほとんどこれに当たると考えられています。ここにいる数名のテイマーも経験があると思います。ですが、最も我々が危険視しているのはバグが暴れている際、表世界に自然災害としてその影響がでることです」

初めてホムラと出会った時の風が強かったのも、バグが起因していた。

「その災害の規模を段階分けし、危険度Bから上。死者が出る可能性があるバグが現れた場合のみ、端末から警報がなります。その場合、速やかにバグを倒してもらいます。もちろん、危険度B以下のバグも見つけ次第、倒していただきます。我々がテイマーに求めるのは、バグを倒す。それだけです」

「あ、あの!!それは、絶対なんですか?」

郁弥の手が震えていた。小さい時に嫌というほど、バグの恐怖を思い知らされたためだろうか、バグと戦えと言われてすぐには頷けない。

「はい。そうです。これは、テイマーの義務です。そして、これは親だろうと同じテイマー以外に言ってはいけないことです」

「何で」

「バグは裏世界から出てくることはなく、表世界に影響を及ぼすだけ。つまり、テイマーで無ければただの自然災害です。それを無駄に恐怖を煽るということをしたくありません。あなたたちテイマーからみれば、人災だとしても、一般の人間からは天災としか呼べないものなのです。わかりますか?対抗しうる力がなく、耐えるしかないなら、それは天災なんです。だからこそ、それを止めることできるあなたたちだけなんです。そのためのサポートには惜しみません」

それが、テイマーの特権だ。

勉強しなくても有名な学校に行き、それなりの成績が約束され、貧しい家には給付金が入る。金にも肩書きにも困らない。

代わりに、テイマーにしか言うことのできない秘密、そして命をかけて戦う義務。

「嘘つき」

「神奈ちゃん…」

神奈の声に気がついたのは郁弥だけだった。

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