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04

葉月に教わりつつも、なんとか裏世界に来れた睦月は久々に通常のサイズのホムラを見た気がした。

「こっちだと、サイズを変えられない…ごめん」

「別に小さいほうがいいっていったわけじゃないよ!?」

「おっと、ここで板好き宣言か?」

「ちげぇよ!!」

「?」

ホムラが首をかしげ、宗兵衛に軽いゲンコツを食らっていた葉月だった。

「気にしなくていいから!でも、こっちに来たのはあの時以来か…」

化け物に襲われて、ホムラに初めて会った時。改めて見渡してみれば、確かに先程の表世界の面影こそあるが、廃れている。

空も暗い。夜というよりも、日が差していないような感じだ。

「ホムラたちって普段、こっちにいるんだよな?」

「うん。表世界に行けるのは、睦月たちテイマーがいるから」

「じゃあさ、他にエネミーはいるってこと?」

「核となるものはあるかもしれない。でも、それをエネミーに出来るのは一部だけ」

「核?」

そういえば、エネミーについて何も知らないと、ホムラに聞いてみればその返事をかき消すような爆発音。

遠くで煙が上がっている。

「な、何!?」

「始まったんだよ…てか、移動しながらにしない?」

葉月が呆れたように路地裏を指す。睦月も今の状況を思い出し、ついていく。

裏世界では携帯は使えない。そのため、連絡は全て端末で行う。そして、サバイバルゲームの進行情報もそこに映されている。

表世界では、いくつか設置されているカメラの映像が映し出されている。

「え!?もう一人?」

玲香の撃破数がすでに1となっていた。


その情報はすぐに回っていた。

「相変わらずね…上級生が減るのは色々と助かるけど」

「あわわわ…こんな見晴らしのいいところでいいんですか?」

おろおろと辺りを見渡しているのは、美優のエネミーの皐月だ。美優は辺りを見てから、誰もいないことを確認すると

「こんなわかりやすいところにいた方が、迎撃しやすいし、私たち上級生がやることはひとつだしね」

「そ、そう、ですね…」

怖そうに辺りを見渡す皐月だった。


神奈は、屋上でのんきにも座っていた。エネミーは近くにいない。

「…」

端末をじっと見ながら、画面に映る映像と地図を見比べる。そして、映った生徒とエネミー。生徒の付けているジュエルは黄色。

近畿のチームらしい。神奈は立ち上がると、心臓の部分で拳を握り

破壊筒(デストロイキャノン)

そう呟くと、拳の中から光が溢れ出し、大砲の形を作った。それを、その生徒とエネミーが出てくるであろう道に向け、その生徒が十字の中心に来たとき、引き金を引いた。


郁弥は自身のエネミーである、ベリアルの前を歩いていた。

「もっと胸を張れ。こそ泥のようだぞ?」

「そ、そんなこと言っても…どこからくるのかわからないし…」

「来たときに考えればいい」

「いや、来てからじゃ遅いから」

相変わらずその自信はどこから来るのかわからない。ため息をつきながらも、歩く郁弥を見る影があった。

巫女の服に、金髪、加えて狐耳がついている。

「頭首様。どういたしましょうか?」

「一応、牽制だけして、戻ってこい」

「はい」

風のごとく走っていった巫女に、いち早く気づいたのはベリアルだった。ジュエルに一直線に向かう巫女の攻撃を弾く。

「こそ泥テイマーが不意打ちを食らうとは…ミイラ取りがミイラになるとは、まさしくこのことだな」

「いや、意味違くない…?」

郁弥は先程の攻撃で体の自由が効かないほどに驚いたのだが、ベリアルの言葉に力が抜けた。

そして、改めて、襲ってきたエネミーを見て、また驚くことになる。

九重つくも…」

「む?有名なのか?」

「有名も何も、近畿地方のリーダーのエネミーだよ!」

「ほぅ…随分な獲物だな。初白星が敵の大将とは」

「おや、私の主人の首を取る気でいらっしゃるとは…驚きです。確かに、貴方の実力は認めます。ですが、貴方の今回の主人はまだ戦いに慣れていない様子。それで勝つ気でいらっしゃるとは」

「ハッ!こやつは確かに戦いにも慣れてない、こそ泥のような性格…だが!」

(まだ言うんだ…)

郁弥は心の中で悲しみつつも、ベリアルの話を聞く。

「確かに光るモノを持っている。舐めてかかれば痛い目にあうのはどちらだろうな?」

「忠告感謝します。でしたら、最初から全力で――おや?」

「?」

九重はテイマーの異変に振り返る。固有の武装の出すなど、戦闘に入った証拠。何かあったのかと察すると、ベリアルの方を見て、撤退する隙を伺った。

そして、その瞬間は案外すぐに来た。

爆発音が響いた。

「え!?」

2人がそっちに気を取られているうちに、テイマーの元へ走り、状況はすぐに理解した。

新人のテイマーが狙われたのを防いだようだ。

「敵は、あの屋上だ。行け。今度は、壊して構わない」

「はい」

九重が跳躍すれば、体と同じサイズの大砲を抱えた神奈がいた。

「なっ…」

「エネミーを連れていないとは、なんたる不覚。容易にジュエルを壊せそうですね」

神奈もできる限り離れようと、フェンスまで走った。いくら裏世界だからといっても、表と同じ、飛び降りれば飛ぶ系の能力がなければまず死ぬ。

エネミー対テイマーとなれば、勝ち目はほぼない。しかも、隙の大きな神奈の武器ではまず勝てない。

「っ…」

九重の腕が動いた時だ。


ガシャンっ


フェンスが激しく揺れ、神奈の後ろに黒い影がいた。2人がそれを認識する前に、神奈はその影に抱えられ屋上から飛び降りた。そこに残ったのは、青い残光だけだった。

残された九重は、口を開けたまま唖然としていたが、正気に戻るとテイマーの元に戻った。

「きゃぁぁぁああああああ!!!」

突然のことに神奈は落ちながら絶叫した。重力に従っていたはずの体が、途中で止まり、また跳んだ。

神奈はその感覚に顔を青くしながら、自分を抱えている男の胸ぐらをつかんだ。

「そんなことしたらバランス崩して落としますよ?」

「落とすな!ていうか、なんであの時戦わなかったのよ!!」

「戦術的撤退ですよ。だから言ってるじゃないですか。戦闘は不向きなんだって」

「だからってねェ!」

とはいえ、防がれたのは自分のせいだ。エネミーは仕事はした。これ以上何か文句を言ったところで、エネミーに勝てないのは目に見えていた。諦めて、ため息をつくだけだった。

「とりあえず、今は逃げるってことでいいですね」

「…」

無言を肯定とみなし、奇襲に警戒しつつ進んだ。


その様子を見ていた玲香は、同じようにため息をついた。神奈は、今回の新メンバーの中では最も優秀なテイマーだ。

「ですが、こうも派手では戦術的にも難しいモノがありますわね」

「いきなり出てきておいてそれかよ!」

足元には、東北チームの青のジュエルが粉々に割れていた。

「ですが、うまく逃げ切ったようですし、やはり才能はあるようですわね。あのエネミーの能力は…索敵…というところかしら…?」

「俺の話を聞けよ!!…あ、聞いてください。お願いします」

「貴方はエネミーを使うということをしたらどうなんです?2年になっても、私にすぐに倒されるのはどうなんです?」

「う゛…それは、俺が噛ませ犬だって言いたいのかよ!」

「噛ませ犬だろ。どうみても」

頭に乗った小人のエネミーにまで頷かれる不憫な彼を、玲香は無視した。

「無視した…!?」

「お前、うるさいからな」

「何!?俺に味方はいないのかよ!?」

端末が鳴り、取り出して通信をつなげば、縋るように叫んだ。

「きいてくれよぉ!飛鳥ァァ!!俺、み――」

「何開始数分でジュエル壊されてんだよ。雑魚」

それだけ言って切られた。見事に落ち込んだ姿勢になり、水たまりを作っていた。

「フィオナ。行くわよ」

「はい」

「がんばれー」

敵だったエネミーに応援され、見送られた。玲香たちが居なくなったあと、

「本当に誰も反応してくれないの…?」

「めんどくせぇ…さっさと起きろよ」

「はい…」

エネミーにすらこの扱いを受けるのだった。


葉月と睦月は相変わらずのんきに歩いていたが、突然、エネミー2人がそれぞれのテイマーを抱えて飛ぶ。

「うわっ!」

「敵。気を付けて」

ホムラの言葉に、気がついたように先程までいた場所を見れば、水が蠢いていた。それは徐々に消えていく。

ホムラがすぐさま銃を撃ったが、全く聞いていないようだ。

「睦月。下がって」

睦月を庇うように立つホムラに、睦月は何かできないかと辺りを見渡し、葉月が屋上にいることに気がついた。

葉月は宗兵衛に抱えられ、一気に屋上まで上がっていた。睦月たちがよく見える。

「いやーそーべーさんさすがですわー助かりました」

「それは構わない。だが…」

その水は葉月を狙っているようだ。排水溝から逆流してくる気配に、宗兵衛は排水溝を爪で叩き割った。

(いつも思うけど、あれは切ってるのだろうか…割っているのだろうか…)

葉月の素朴な疑問は心の中にしまい、テイマーを見つけた。

「げっ…」

「げっ…じゃない。見たことがないのだから当たり前だろう」

「あ、あはは…そうでした。あー…よしっ。睦月君ガンバ!」

下でハァ!?という声が聞こえたが、葉月は聞こえないふりをして屋上から飛んだ。

その様子に1匹を除き全員が驚く。

「どうすんの?追ってみる?」

「い・や」

「どうしてさ」

「また目の前の道が消えるなんて経験したくないもの」

水が人の形を取ると、下で銃を構えているホムラを見る。

「あっちを倒しましょう」

「了解。アタシはどっちでもいいよ」

ホムラと睦月はそれに構えた。

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