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03

睦月は今自分がいる場所を理解できなかった。とりあえず、先程までのことを思い出してみた。

駅を降り、バスか何かで向かうのかと思っていれば、車が止まっていた。タクシーでもない、睦月でも知ってるレベルの黒塗りの高級車。

確かにこれから向かう学園を考えれば当然のことかもしれない。日本屈指のセレブ学校のフォンティーネ学園だ。

バスなんて庶民的な乗り物使わないのかもしれない。

そして、学園に着いてその広さと豪華さに通っている学校との落差に驚いた。慣れているのか、性格的な問題なのかわからないが、いつも通りの葉月に泊まる寮に行くと連れて行かれた。

そこに大きく女子寮と書かれており、足を止めたが参加するテイマーの過半数が女だから、多数決で女子寮なんだといわれ無理矢理納得させられた。

中に入れば、外観から予想はしていたものの、ここはホテルかと思うほどだ。しかも相当高級な。

シャンデリアなど初めて見た。

「今日は、家に帰らないの?」

耳元から聞こえたホムラの声に、やっと現実に戻ってきて頷く。

「明日の試合のためにね」

「うーん?なんかあいついないなぁ…ちょっと聞いてくる」

「え!?」

ここに1人残さないでくれと、追いかけようとすればロビーのたくさん並んでいるテーブルのところに学ランを着た男の子がいた。

この学校の男子生徒の制服は見たが、学ランではなくブレザーだ。違う学校の生徒だろう。

しかも、緊張しているのか先程からあたふたと周りを見ている。

隣に座るセーラー服の女の子は、どっかりと座り紅茶を普通に飲んでいる。

「もしかして…」

「ありゃりゃ…まだ新メンしか揃ってなかったのか。なるほど、それは気づかないわ」

「うわぁ!?姉貴!?いきなり出てくんな!」

「なんだよ…聞きに行ってあげたのにさぁ」

葉月は文句を言いつつ、その2人に近づく。

「どうもー」

「あ…!佐倉先輩!」

「よろしくー」

「よ、よろしくお願いします!」

慌てて立ち上がり頭を下げる彼に、向かいのソファに座ろうとしていた葉月は驚いて動きを止めた。

「ぇ…あ、う、うん」

「ほら、神奈ちゃんも」

「よろしく」

「え、あ、うん。よろしくね」

座ったままの彼女は携帯を操作する手を一旦止めて、目線だけ葉月に送りいった。それに、葉月は少し落ち着いたのかソファに座った。どうやら、適当に流されるくらいの方がいいらしい。

睦月も隣に座れば、彼がじっと見ていた。

「えっと…は、初めまして!熊谷郁弥くまたにふみやです!えっと…学校は、埼玉の玉緒学園の中等部です。それと、彼女も同じ学校で、緑川神奈みどりかわかんなちゃんです」

「俺は、佐倉睦月。泉北高で…」

先程の玉緒学園は昔からある由緒正しき学園であり、テイマーの通う学校としても有名であり、スカウトもよくあるらしい。

それに比べて、睦月たちの通う学校はただの公立高校。学校の名前まで言うのはどうしても尻すぼみになる。

「佐倉ってことは弟?」

隣に座っていた神奈は気になったのか、顔を上げる。その質問に頷けば、驚いたように声を上げて妙に納得したように睦月を見た。

「じゃあ、ただの親譲りなんだ」

「え?いや、親は全く才能がないって言ってたけど…」

「そんなわけないじゃん。テイマーの才能は、まず血縁関係。それが一番重要なんだって知らないの?」

「そうなの?」

「何?あんた、全然テイマーのこと知らないの?」

助けを求めるように葉月に目をやると

「まぁ、こいつのエネミーが出てきたのが昨日だし」

「「えぇ!?」」

中学生2人が驚いたように声を上げる。当たり前かもしれない。3日で突然試合など聞いたことがない。

「それで今日の試合に出すの!?」

「まぁ…そうだね」

「馬鹿じゃないの!?」

「まぁ、お嬢様のご意向だからなぁ。私にはどうにもできませんよ。ハハハハハ」

「そういえば、他の人って」

「その内くるんじゃない?」

そんな時、着信音が響く。驚きつつ、携帯を出してその電話にでた。葉月が電話にでたのとほぼ同時に、メイドが現れた。

全員がよく知っているエネミーだ。

「ようこそいらっしゃいました。皆様。会議室にご案内いたします」

「あ、はい」

葉月も電話を切らずにカバンを持つと、先に歩いていった3人を追いかける。


寮の中でも結構奥の方までやってくると、メイドはドアをノックしたあと開けた。

「失礼します。既に初めての方は揃っておいでのようでしたので、連れてまいりました」

「ありがとう。フィオナ」

いたのは、現ナンバーワンテイマーの玲香だった。

「初めまして。私、玲香・C・ウィーリングと申しますわ。どうぞ、お座りください。それから、葉月。入室の時まで電話とはどういうことです?」

優雅な仕草で着席を促されたが、葉月にむいた目は少々優雅ではなかった。

「あ、いやー会長さんからの電話でさ。お嬢様に連絡つかないから、お願いって言われたんだよ」

「美優さんからですの?」

「そーそー」

電話が終わったのか、携帯をしまいながら遅れてくることを伝えれば、玲香は腰に手を当て

「まぁ、美優さんでしたら平気でしょう。私たちは先に明日の説明をしておきましょうか」

そういうと、玲香はスクリーンに明日の予定を映しだした。

「明日の演習もといバトルゲームですが、時間は午前10時より12時までの2時間行われます。ルールは6対6のサバイバル方式。どの地方が一番多く残っているかで競います。

 知っているとは思いますが、撃破はこの…ジュエルを破壊された場合のみです。できる限り、テイマーに怪我をさせないように」

赤く光るルビーのようなジュエル。実際、ジュエルとは言うが、本物の宝石ではないらしい。

それから、ジュエルを手で覆い隠すのは、禁止はされていないがそのジュエルを狙ってエネミーとテイマーが攻撃してくることを考えれば庇わないのが懸命である。

前に化け物に襲われたとき、ホムラが化け物を倒した時の攻撃を生身で受けろなんてまず無理だ。

「まぁ、演習は慣れるのが目的だし、本気を出す必要はないよ」

「慣れるのが目的?」

「そうだよ?ま、明日わかるから」

そのほか、細かいルールなどを聞き解散となる。部屋へ案内するというと、いかにも使用人という服装の若い男性が現れ睦月と郁弥に礼をした。

男用の部屋に案内するという。相部屋を用意したが、嫌ならば個室を用意するとも言われ、睦月と郁弥は断った。

無事に案内された部屋はスイートルーム…とまではいかないが、相当広い部屋だ。人が2人住めるレベルだ。

部屋についての説明もしっかり受けたあと、食事はどうするかと聞かれた。

「お部屋にお持ちするか、食堂で召し上がるかのどちらかとなります」

「え、えっと…」

「どうしましょうか…先輩」

「どっちがいい?」

「僕はどっちでも…」

「え…と、じゃあ…食堂で食べます」

「かしこまりました。では、何かご用がありましたら内線で及びください」

無難な方だと思い、そうしたのだが、これがまた違った。

食堂とは言うが、レストランといったほうがいい広い空間。席に案内され、メニューを渡される。

「なんか、場違いっぽいな」

「そうですね…」

周りを見渡せば、ここは男女共用なのか男も女もいる。ただ全員が超がつく金持ちだろう。

人が多いというのに、うるさすぎず、静かすぎない空間。慣れない2人にとっては緊張する以外に何もない。

そんな2人に、救いが現れた。

「初めまして。こんばんは」

「え?」

高いところで一つに結っているその女に2人とも見覚えがあった。

「もしかして、榊美優さんですか?」

「えぇ。榊美優よ。よろしく」

去年から参加している、今回のメンバーで唯一の3年である榊美優だ。空いている席に座れば、先程遅れてしまったことを詫びた。

「ごめんなさい。生徒会の仕事が終わらなくてね」

「あ、そういえば会長なんでしたっけ」

「あれ?知ってるの?」

「姉貴が会長さんって呼んでたんで」

「あ、もしかして葉月ちゃんの弟くん?」

「はい」

「そうなんだ!佐倉…」

「睦月です」

「睦月くんか。君は?」

「あ、熊谷郁弥です!初めまして!」

「郁弥君か。よろしくね」

「は、はい!」

3人とも注文を終え、世間話をしていると、また1人現れた。玲香だ。

「ここ、いいかしら?」

3人の承諾を得て、玲香は空いていた席に座れば、メニューは無かった。後で聞いたのだが、その日のシェフのおすすめを食べる為、メニューは持ってこないらしい。

「何か質問でも?」

「あ、いえ…」

「そう?別に聞きたいことがあるなら、聞いてもいいのよ?親睦を深めることも兼ねてるんだから」

親睦を深めるとは言うものの、この状況で聞くほど勇気はなかった。ただ、郁弥は一つだけ聞いていた。

「あの、他の方は…」

このテーブルは4人用で、葉月や神奈が来たら座れない。

「2人共部屋で取るそうですわ」

「そういえば、葉月ちゃん起きたかな…」

「あら?てっきり美優さんが個室だとばかり…」

「ううん。私は葉月ちゃんと相部屋。相変わらず広いね」

「そうかしら?2人ならあの程度必要でしょう?」

随分とズレた感覚だ。ある意味、美優が来てくれて助かった。静かに、男子生徒2人は胸をなでおろしていた。


その頃、ベッドに横になっていた葉月は、何かに揺さぶられて起きた。

「そ…べぇ?」

「起きろ。人が来たようだぞ」

「あれ…寝てた?」

「あぁ。放課後の戦闘で疲れたのはわかるが、あまり人を待たせるのは良くない」

「ん…ありがと。って、あぁ…!待った待った!」

帰ろうとする宗兵衛を止めてから、軽く髪を整えながら、ドアを開ければ使用人姿の女がいた。フィオナではない。

「佐倉様。お食事をお持ちいたしました」

「あ、はい。ありがとうございます」

セッティングを終えると、また後で、デザートのタイミングでくると言ってメイドは下がった。

ただ何かを思い出したように、バケットを台から取り出すと葉月に渡した。

「これでよろしかったでしょうか?」

「おぉ…ありがとうございます。助かります」

「いえ。では、失礼いたします」

宗兵衛にそのバケットを持たせる。

「あぁ…悪いな」

「ホムラちゃんの分もあるから、向こうで食べて」

「あぁ」

宗兵衛が消えた部屋で1人で夕食を食べた。


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