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その大きなハンマーで攻撃を防ぐ。その敵は、皐月しか狙っていなかった。だからこそ、後ろから刀を構えた美優に切られた。

「皐月!大丈夫?」

「は、はいです…」

「よかった…それにしても、今のは…」

バグにしては、皐月を執拗に狙っていた。そして何よりも、その姿が異様だった。端末を開けば、端末を持っている人がこの近くにいる。

「とにかく、みんなと合流しよう」

皐月が頷き、周囲を警戒しながらそちらに向かう。


玲香はすぐにフィオナの元に着くと、それを見た。

「なんですの…これは…」

直感的にわかった。その敵は黒く変色した、エネミーだ。

「っ!フィー!!」

傷ついたフィオナになおも攻撃しようとする、そのエネミーにレイピアを穿つ。さすがに体に刺されば、気になるのか玲香の方に血のような赤い目を向けてきた。

「玲香…!」

玲香が反応するよりも早く、フィーは玲香を抱えその場から離れた。後ろに追ってきているエネミーがはっきりと見えた。


宗兵衛を小脇に抱えブラックボックスを鎖に変え、収縮する勢いを使って屋上に逃げた葉月はギリギリ校庭の見える位置に座り込んだ。

「はぁ…さすがに疲れた」

「ぅ…」

腕の中で宗兵衛が呻く。ひどい傷だ。

「大丈夫?」

「大丈夫だ。そんな顔をするな」

珍しく本気で心配している葉月の表情に、宗兵衛は少しおかしかったのか微笑めば、葉月はふてくされたようにそっぽを向いた。

校庭には黒いエネミーが上を見上げていた。どうやら、登ってくるものは持っていないらしい。テイマーを探してみるが、どこにもいない。

「ねぇ、アレってエネミーでいいの?」

「あぁ。多分、エネミーだとは思うが」

「うーん…」

異様な空気だ。あの状態ではエネミーというよりも、バグだ。目が合い、身を隠すように少し下がる。

この状況をどうにかしないといけないと思っていると、突然携帯が鳴った。

「うひゃぁ!?」

慌てて携帯の決定ボタンを押して、画面の通話中という表示にあれ?と言ってから耳に当てる。

『葉月。無事かしら?』

「無事だよ。お嬢様も無事みたいだね」

『えぇ。そうですわね。フィーの怪我はひどいですが』

「こっちも同じような状況かなぁ」

『…いい加減気づいてくれません?』

「何が?」

『はぁ…』

電話の向こうであからさまにため息をつかれた。

「なっ!?」

宗兵衛の声に校庭を見下ろせば、先程のエネミーの前の地面に何故か整然とした建物、そして青空がぽっかりと浮かんでいた。

この裏世界は荒廃した建物に空だって暗い。青空なんて見れない。

「…」

すぐにそれが表世界だとわかった。そして、自分の手にもっている通話中の携帯を見て、ようやく察した。

「ま・じ・か」

裏世界では携帯は通じない。連絡手段は端末だけなのだが、こうして電話が通じているということは、電波が入るということだ。

「何故だ!?テイマーをもたないエネミーは表にはいけないはずだ!?」

宗兵衛を引き寄せると、そのエネミーの様子を見る。

「実際にいこうとしてんだからいけるんじゃない?お嬢様の方も同じってことだよね?」

『えぇ。このまま放っておくわけにもいきませんが…』

このまま怪我をしたフィオナたちを置いていくわけにもいかない。

「とりあえず、追うしかないか…」

『そうですわね』

電話を切れば、宗兵衛を抱える。

「…何をする気だ…?」

「宗兵衛もくるんだよ?こっちも危ないなら、向こうに連れていくほうがいいでしょ」

「それは構わない!俺もそう頼もうと思ってたいところだ。そこではなくだな!」

「うん?あそこに飛び込むよ?」

長い付き合いだ。葉月の時々行うビルから飛び降りるという行為には慣れたつもりだった。だが、いつもと状況が全く違う。いつもは宗兵衛が抱えるが、今はそれが怪我できない。慌てる宗兵衛を他所に、フェンスに上ると青空に向かって跳んだ。


「私もいきます」

「危険よ。そのケガでは」

「エネミーとテイマーの力の差は歴然としています。正面堂々と戦うのでしたら、私もいきます」

「…」

確かにフィオナの言うとおりだ。エネミーにテイマーが勝てる可能性は限りなく低い。

「わかりましたわ」

2人もエネミーの通った穴に入った。


戦うホムラを見ながら、何かできないかと辺りを見渡しがなにも出来ることはないことを悟った。自分ができるのはただ見てるだけだった。郁弥も自分の身を守るように、銃を持っていた。

「俺には、何もできないのか…」

「先輩?」

つぶやいた言葉に郁弥が目を向けると、足元に何かが蠢いていた。

「危ない!!」

その声に弾かれたように顔を上げたが、遅かった。郁弥の銃口がそれに向くが、睦月に近すぎて撃てなかった。バグは睦月の足元から生えると、鞭のような腕を振った。

だが、その腕は睦月に当たる前に消えた。

「ぇ…」

そして、もう一発銃声が聞こえると、そのバグの核が砕け散った。

「ホムラ…?」

青い髪の少女がバグの後ろで銃を構えていた。

「よかった…睦月、無事」

微笑んだホムラには、黒い槍のようなものが刺さっていた。そして、その槍はホムラを引き裂いた。

バグが霧散するように、ホムラもまた霧散して消えた。

「ホムラ…!ホムラ!!うわぁぁぁぁあああ!!!」

睦月の絶叫だけが響いた。

「そんな…」

ベリアルはエネミーを2体とも切り捨てると、剣を収めた。

「これで終わり…とは言い難いな」

「先輩!しっかりしてください!」

「俺は…俺は…」

うわ言を繰り返す睦月に、郁弥は必死に声をかけるが声は届かない。

「2人共!大丈夫!?」

美優が合流すると、睦月の様子に原因を聞けば目を伏せたあと

「…とにかく、一度もどるよ。玲香ちゃんから、あのバグみたいなエネミーが表世界に移動したって話があるから」

「え!?どうして!?」

「理由は分からないけど、そうらしいの…睦月君。辛いだろうけど、ここにいたらもっと危険よ」

「…はい」

美優がつきそうように隣に屈んだ。郁弥もせめてこの2人が戻るまではと、周りに目を配れば、緑色のそれが目に入った。

「これ…」

見覚えのあるソレは、前にホムラが拾ったカメだった。

「おい」

「え?あ、うん」

どうやら、美優と睦月は行ったらしい。郁弥も急いで表世界に移動した。


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