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その日、葉月と共に電車に乗っていた。

「そういえば、こういう集まりって昔からやってたの?」

「え?やってないよ?」

それだけバグの異常発生は大変なことなのだろう。指定されたカフェに付けば、店長らしき初老が奥に案内してくれた。

ちゃっかりその際に、ケーキを頼んでいる葉月に呆れつつも、席にはすでに前のバトルゲームであったメンバー全員がいた。

「お久しぶりです。先輩」

「久しぶり」

「相変わらず遅いわね」

「ビリじゃないからいいじゃん」

拗ねたように葉月が言えば、神奈は眉をひそめていた。

「ビリでしょ。どう見ても」

「今日はあと1人くるのよ」

驚いたのは、郁弥と神奈、そして睦月だ。

「関東のテイマーって、僕たち以外にもいるんですか?力の衰えで数が減ってるって聞きましたが」

「他にも現役もいるわよ。まぁ、数は減ってるところは否定しないけど…」

「ほかの人って…」

「話はもう伝えてあるわ。ここに呼んだのは、比較的に近い人よ」

「じゃあ、別にメールでいえばいいじゃない」

神奈の言葉は最もだ。玲香もさすがに苦笑いになるが、譲れないようで首を横に振る。

「交友を深めるってこともあるし、ペアを決めるから、ちょっとね…」

色々と疑問はあるが、優雅に紅茶を飲んでいる玲香の次の言葉を待っていると、葉月の頼んだケーキが運ばれてきた。

「というか、こんなところで話していいの?他に言っちゃいけないんじゃないの?」

神奈の言っていることは睦月も気になっていたことだ。バグのことは公開していないし、テイマー以外に言ってはいけないと言われている。それこそ、前に使った会議室などで話をしたほうがいいはずだ。

「あそこにほいほい入れるわけ無いじゃん。一応、国の何かだよ?」

「なんかって…まぁ、そうね。大丈夫よ。ここのマスターは、元テイマーの人だから、事情は知ってるわ」

あまり席の周りに客がいないのは、そこを配慮してくれているのだろう。それに、少し奥まったこの席は入口からは見にくい。そこに小走りで近づいてくる少女がいた。

「すみません!お待たせしました!」

帽子をかぶった少女は、聞いたことのあるよく通る声で言った。

「ぇ…」

「?」

「…」

神奈は驚いて小さく声を漏らし、郁弥は首をかしげ、睦月はその人物がここにいることに驚いていた。その少女は睦月の方を見て、驚いてその大きな目を少しだけ開く。

「それって、アイスケーキですか!?」

「え!?」

「そーだよー」

どうやら、見ていたのは葉月が食べているアイスケーキだったようだ。この店では有名らしく、彼女も注文していた。

そして、睦月の隣に座ると、自己紹介を始めた。

「初めまして!私、冬樹やよいっていいます!アイドルやってて、柊卯月、通称『うさ』!15歳でーすっ!よろしくーっ」

慣れたような自己紹介に、何も言えないでいると、郁弥が驚いたように手を打って

「アイドルの方なんですか」

と、最近有名になってきたやよいにとっては辛い一言を放った。ただ睦月もついこの間まで同じ状況だったので、なんとも言えない。

「バカ!!なんで知らないの!?」

「え…神奈ちゃん?」

「超有名じゃない!!」

逆に反応したのは神奈だった。どうやら、女子には人気らしく、超が付くほど有名なアイドルだという。それを聞いて、やよいも嬉しそうに、でも恥ずかしそうに頬をかいた。

「あ…あと、すみません。1時間しか時間が取れなくて…」

「なら、手短に伊勢さんから伝えられたことを伝えるわね。夏休み、私たちはペアに別れて、各神社や寺、教会の神具の状態を確認しに行きます」

それは突然のことで、なんのことだかわからなかった。玲香もすぐに補足の説明を始める。

「バグの発生が増えたのは、5年程前にもあったの。その際の原因は、ある神社の神具が汚染されていたこと」

「汚染?」

「神具は今も昔も、変わらず巨大な力を持ってるわ。エネミーがテイマーから力をもらうことで、具現化することは知ってるわね?

 バグも同じ。供給元がどこかは、まだはっきりとわかってないけど、その時はその神具から力が供給されていた」

「普通なら、神聖なものだから、バグは神社とかには近づけないんだけどね…汚染されてるとその逆らしいの」

「榊先輩もその、前の時のこと知ってるんですか?」

「私も、テイマーになったのは高校になってからだから…ごめんね」

美優が申し訳なさそうに眉を下げる。

「見つけたらどうするんですか?私、祓うなんてできないですよ?」

「場所さえわかれば、私か…」

一瞬だが葉月を見たが、すぐに視線をそらし

「複数あるのでしたら、安倍さんを呼びます。とにかく、今回の仕事は原因究明。わかったかしら?」

「あ、はい」

「じゃ、ペア決めね」

美優が取り出したのは、地図だった。大量の印がつけられている。

「一応、小さな社とかもチェックは入れてあるけど…」

「こんなに!?」

「全部回るの…?これ」

「うわっ…これすご…」

全員が嫌そうな顔をしていた。玲香もこの反応は予想ができていたし、これからいうことでもっと批判を浴びるのは分かっているためか、自然と苦笑いになる。

「まぁ、正直あまりいい方法とは言えないけど…ペアを決めるにあたって、その辺の事も踏まえて決めていくわ」

「もしかして、片っ端から…とかですか?」

睦月が恐る恐る聞けば、頷かれた。

「要はそうなるけど…」

玲香は少しだけ言うことをためらったが、言った。

「神具が汚染されて、バグが発生している場所ってことはつまり…裏世界に引き込まれやすいってこと。素質がある人は特に」

「えーっと…つまり、どういうことですか?」

やよいの言葉に、玲香がため息をつき、美優が苦笑いで答える。

「引き込まれやすい人をペアに入れて、近くを歩いていくってことよ。もしも問題の場所だったら、その人が引き込まれてわかるってこと」

「あぁ!なるほど!って…それって」

やよいが驚いたように玲香を見る。できれば、違うと否定して欲しかったが、頷いた。

「引き込まれる人は、下手すれば、死ぬわ。だからこそ、ペアにするの」

逃げるにしても1人よりも2人の方が逃げられる可能性は上がるだろう。

「あ、あの…その、引き込まれる人って…えっと…」

「最近、引き込まれたことがある人が適任ね。素質があっても、年齢が上がるたびに力が衰えていくことが多いから。できるだけ、その力が強い方が遠くで違和感か、引き込まれるかするから、安全だし」

その言葉に、睦月の背中に嫌な汗が伝う。最近というと、つい最近引き込まれたことがある。玲香を見れば、やはりこちらを見ていた。

「わかってるようね」

「…」

「じゃあ、睦月先輩は、佐倉先輩とペアってことですか?」

郁弥が他人だというのに、姉弟でペアを組めて嬉しそうに言ってくれるが、こればかりは玲香も申し訳なさそうに言った。

「そうしてあげたいのは、山々なんだけど…」

「ま、無理ですよねー」

「え?」

それには睦月も驚いた。葉月は、フォークをくわえながら、当たり前のように言っていた。

「え!?でも、姉貴って高校からだから――」

「実は睦月が連れて行かれた日に、私も連れて行かれてるのでしたーあははー」

笑いながら、ピースをしてくる葉月に呆れとか驚きとかその微妙なドヤ顔にイラッとしたとか、色々と感情が混ざりすぎて、その感情を消化しきるまで何も言えなかった。

他には、やよいが近いということで、睦月、葉月、やよい、玲香が危険な役回りになり、そこから話を進めていき、『睦月&郁弥』『葉月&神奈』『やよい&美優』そして、玲香は1人ということになった。

「1人で大丈夫なんですか?危ないんじゃ…」

「心配ありがとう。でも、大丈夫よ」

ナンバーワン・テイマーがいうのだから、大丈夫だろうと、話を進めると、葉月が思い出したように重要なことを言った。

「そういえば、私補習あるんだ」

「…またなの?」

「仕方ないじゃん!文系科目というか、歴史苦手なの!」

「覚えるだけでしょう?」

「暗記が得意なら、文系行ってるわ!」

「まぁまぁ…理系の方が将来的にはいいって聞くから、ね?」

そう言っている、美優本人が文系なのだが、理系科目もできるためなんとも言えない気持ちになる。ちなみに、葉月以外は補習はいなかった。美優は補習ではないが、夏期講習があると言っていた。ただ、ペアであるやよいも相当多忙なので、下手に暇な人と組ませるよりもよっぽどましらしい。

「そういえば、みんな家族旅行とか平気?」

美優の言葉に、3人が思い出したような声をだした。

「…葉月」

「い、いや~ごめんごめん。そういえば、そうでした」

どうせなら、補習と同時に言って欲しかったものだ。忘れていた睦月も睦月だが。意外にもなんの用事も入っていないのは、神奈だった。補習に旅行と半分自分のせいで来れないペアである葉月は、一言謝るが、全く気にしていないようだ。


~~♪


軽快な音楽が流れると、慌ててやよいが携帯を取り出して電話に出る。すると、慌てて席を立つと後ろを見ていた。

「うわぁああ!!す、すみません!時間みたいで…榊先輩!また後で連絡します!」

「あ、うん。がんばってね」

「はい!」

やよいが駆け出そうとして、また足を止めると睦月のことを見た。

「そ、そういえば!この前、キョン君が言ってたの、君だよね?」

「え?キョンくん?」

「あーえっと…名前教えてくれないの。だから、キョンシーでキョン。って、あぁ…!すみません!今行きますから!」

携帯に慌てて声をかけている辺り、催促されているのだろう。

「キョン君にひどいこと言われたなら、気にしないで。口すっごぉ~くっ!悪いの」

「う、うん」

「じゃあね!」

バイバイと手を振って、出口の方に走っていった。

こうして、睦月のテイマーとしての初めての夏休みが始まろうとしていた。

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