第八話 騒がしいのも悪くない
森は
朝を迎えていました。
やわらかい光が
木々の間から差し込みます。
いつもの
穏やかな森です。
――けれど
どこか
様子がおかしいのです。
そのとき
「おい!!それよこせ!!」
森に
大きな声が響きました。
「やだね!!これは俺のだ!!」
「ほっほっ、どれどれ…わしにも見せてみぃ」
木々の間を
三匹の狼が
ばたばたと走り回っています。
一匹は
くわえていたものを守るように逃げ
もう一匹は
それを追いかけ
もう一匹は
のんびりと後ろからついてきていました。
「待てって言ってんだろ!!」
「待たねぇよ!!」
「転ぶぞ〜」
その瞬間
「うわっ!!」
どすん!!
土煙が
ふわりと舞いました。
そのとき――
「なにしてるのー!?」
元気な声が
森に響きます。
ぴょんっ
草むらから
子狼ちゃんが飛び出してきました。
「わぁーー!!」
きらきらした目で
三人を見つめます。
「おいかけっこ!?」
「まぜてー!!」
三人は
一瞬だけ動きを止めました。
「いやこれ――」
「遊びじゃ――」
「ちが――」
次の瞬間
「いっくよーー!!」
子狼ちゃんは
勢いよく走り出しました。
「うぉっ!?」
「増えたぁ!?」
「ややこしくなったのぉ」
森の中は
さらに賑やかになりました。
そのとき――
とことこ
森の中を
歩いていたベウルの背中に
「わーー!!」
どんっ!!
「わっ」
子狼ちゃんが
勢いよくぶつかりました。
ベウルは
少しよろけて
それから
振り返ります。
「……どうしたの?」
困ったように
やさしく笑いました。
子狼ちゃんは
ベウルの足にしがみついて
「おいかけっこ!!」
「いっぱい!!」
後ろを指さします。
その瞬間
「うぉぉぉ待てって!!」
「返せぇぇ!!」
「転ぶぞと言うとろうが〜」
どたどたどた!!
三人組が
そのまま突っ込んできました。
ベウルは
一瞬だけ目を丸くします。
そして
「……あ」
少しだけ
状況を理解しました。
次の瞬間
ふわっ
ベウルのしっぽが
やさしく広がります。
「こっち」
子狼ちゃんを
そっと引き寄せました。
どたどたどた!!
「止まれぇぇ!!」
「無理だぁぁ!!」
「だから言うたじゃろうが〜」
ドシャァァン!!
三人組は
そのまま勢いよく
地面に転がりました。
土煙が
もくもくと舞い上がります。
「すごーーい!!」
子狼ちゃんの目が
きらきらと輝きました。
「もういっかい!!」
三人組は
がばっと起き上がります。
「今のは違うだろ!!」
「俺ら勝手にぶつかっただけだろ!!」
「もう一回だ!!」
三人は
距離をとって走り出しました。
そのとき
ベウルは
森の奥へ視線を向けます。
「……あ」
そして
子狼ちゃんを
しっぽで守ったまま
その場に立ちました。
「いくぞぉぉぉ!!」
一直線に
突っ込んできます。
その瞬間――
すっ
進行方向に
一匹の狼が現れました。
「……何をしている」
「……あ」
「……やべ」
ドシャァァァン!!
三人は
そのままレグルにぶつかり
盛大に転がりました。
「……お前たち」
空気が
一瞬で変わります。
そのとき――
「すごーーい!!」
子狼ちゃんが
ベウルを見上げました。
「ベールすごぉい!!」
三人組は
地面で叫びます。
「違うだろ!!」
「俺らのせいだろ!!」
レグルは
ため息をつきました。
「……はぁ」
そして
三人の足元を見ます。
「それは」
「何だ」
三人は
顔を見合わせました。
「……朝さ」
「ベリー見つけたんだよ」
「ベールがこの間」
「採ってるの見てさ……」
「ベールのやつは、うまそうだったろ?」
「それで揉めてたらこうなった」
ころん
地面に
ベリーが転がります。
「おっきい!!」
子狼ちゃんが
目を輝かせました。
ベウルは
くすっと笑います。
「……それなら」
「みんなで分けようか」
「いいの?」
「うん」
森には
また
穏やかな時間が戻ります。
やわらかな風が
木々を揺らし
楽しそうな声が
広がっていきました。
べウルのしっぽは
楽しそうに
ふるふると
揺れていました。




