第四話 ベウルの小さなお店
ベウルは
ベリーの小さな台所で
パンケーキを焼いていました。
ふわり。
甘い匂いが
森に広がります。
その匂いに誘われて
木の上から
ちょこん。
リスが顔を出しました。
ベウルは気づいて
少しだけ笑います。
「……また来たの?」
リスは
気にした様子もなく
ベウルの手元をじっと見ています。
「ベーーール!!」
どたどたどた。
子狼ちゃんです。
子狼ちゃんは
ベウルの横まで来ると
上を見上げました。
「ベール!!
リスしゃんきてるの!?」
そのとき
ぴょん。
子狼ちゃんが
また上を見ます。
「あ!」
「ベール!!
ことりしゃんもきた!!」
子狼ちゃんが
ぴょんぴょん跳ねます。
小鳥は
ベウルの肩に
ちょこんと止まりました。
もう片方の肩には
リス。
ベウルは
少し困ったように笑います。
「……二人とも
そこがいいの?」
すると
草むらから
ぴょこん。
うさぎが
顔を出しました。
ベウルは
それに気づくと
子狼ちゃんに言いました。
「……また増えたみたい」
それから
うさぎに向かって
やさしく言います。
「おいで」
「お仲間は
もう来てるよ」
うさぎは
ぴょん
ぴょんと跳ねて
近づいてきました。
子狼ちゃんは
大喜びです。
「うしゃぎしゃんもきたー!!」
しばらくして
もぞもぞ
もぞもぞ
地面が
少し動きました。
子狼ちゃんが
目を丸くします。
「ベール!!」
「じめん
うごいた!!」
ぽこん。
土の中から
小さな顔が出ました。
モグラです。
子狼ちゃんは
大興奮。
「わぁ!!」
「ちいちゃい
もぐらしゃん!!」
モグラくんは
少し恥ずかしそうに
土を
ちょっとだけ
かぶります。
そして
小さな手で
土の中から
ころんと
丸い木の実を
取り出しました。
ベウルは
少し驚きます。
「……これ」
「くれるの?」
モグラくんは
こくん。
ベウルは
少し笑いました。
「じゃあ」
「これ、どうぞ」
ベウルは
小さくちぎったパンケーキを
差し出しました。
モグラくんは
パンケーキを大事そうに持つと
ぺこりと
頭を下げました。
そして
地面を見ます。
ベウルは
それを見て
少し首をかしげました。
「……もしかして」
「持ち帰る?」
モグラくんは
きょとんとします。
ベウルは
少し笑いました。
「ふふ……」
「持ち帰りやすくしてあげるから」
「ちょっと貸して」
ベウルは
近くの葉っぱを取ると
パンケーキを
やさしく包みました。
「はい」
モグラくんは
それを大事そうに持ちます。
ぺこり。
もう一度
頭を下げると
もぞもぞ
もぞもぞ
土の中へ
帰っていきました。
そして
少しだけ
顔を出して
ベウルを
振り返ります。
それから
また
もぞもぞと
土の中へ
帰っていきました。
森には
また静けさが戻りました。
甘い匂いだけが
残っています。
そしてきっと
また誰かが来ます。
子狼ちゃんは
空を見上げて言いました。
「またくるかなぁ」
ベウルは
小さく笑いました。
しっぽが
ふわりふわりと揺れました。




