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第三話 木陰の狼

朝の森。


レグルは

静かに歩いていました。


これは

レグルの日課です。


森の様子を見て回る

朝の見回り。


今日も

いつものように歩いていると


ふと


ベリーの森の方から

鼻歌が聞こえてきました。


ふんふ〜ん♪


レグルは

少しだけ口元を緩めます。


(……いるな)


ベウルです。


レグルは

大きな木の陰に身を隠し

その様子を見ていました。


ベウルは

小さなかごを持って


森の中を

ちょこちょこと歩いています。


時々

立ち止まっては


木の実を

そっと摘んでいました。


「今日は

いい実があるかな」


ベウルは

森にそっと話しかけます。


その姿を見て

レグルは思いました。


(……相変わらずだな)


群れの仲間たちは

ベウルにどう接すればいいのか

少し迷っている。


嫌っているわけではない。


けれど

距離が分からない。


そんな空気が

群れにはありました。


けれどレグルは

ずっと思っていました。


(……放っておけない奴だ)


そして


気づけば

こうして見守るのが

レグルの朝の日課になっていました。


そのとき。


木の上で

小さな音がしました。


リスです。


リスは

木苺を取ろうとしていました。


けれど

うまく取れません。


取っても

ぽろりと落ちてしまう。


レグルは

それを黙って見ていました。


すると


ベウルが

近くに来ました。


リスに気づくと


何も言わず

そっと


きれいな木苺を

岩の上に置きました。


リスは

しばらくきょとんとしたあと


その木苺を

大事そうに抱えました。


レグルは

少しだけ位置を変えます。


リスを驚かせないように。


(……気づいてないな)


ベウルは

何も知らずに


また

採取を続けていました。


そのとき。


遠くから

音が聞こえてきました。


どたどたどたどた!!


レグルは

小さく息を吐きます。


そして


森に響く声。


「ベーーール!!」


レグルは

少しだけ笑いました。


「……来たか」


ベウルは

びくっとしました。


耳が

ぴょこっと動き


しっぽが

ぶわっと膨らみます。


振り向いた瞬間


どーん!!


子狼ちゃんが

そのまま突撃してきました。


ベウルは

よろけて


ぺたん


と尻もちをつきます。


その上に

子狼ちゃん。


リスは

びっくりして


ベウルの首に

飛びつきました。


「ごめんちゃい!」


子狼ちゃんは

そう言いましたが


すぐに

きょろきょろと周りを見ます。


そして

かごを発見しました。


まだ

ベウルの上に乗ったまま


「ベーーール!」


「これなに!?」


「これたびりる!?」


ベウルは

少し困った顔をします。


「えっと……」


「……そろそろ降りてもらえると」


子狼ちゃんは


「はっ!!」


ぴょん


と飛び降りました。


「ごめんちゃい!!」


それから

ベウルの後ろを


ぴょんぴょん

ぴょこぴょこ


ついて歩きます。


やがて


ベウルは

森の奥の岩陰に着きました。


そこには


小さな焚き火と

木のテーブル。 


ベウルが

少しずつ

せっせと整えてきた場所。


ベリーの

小さな台所です。


「ここで

ちょっと待っててね」


ベウルは

パンケーキを焼き始めました。


子狼ちゃんは

横で


ガン見。


ぴょん


ぴょこ


ぴょんぴょん


落ち着きません。


「ベーール!」


「できた!?」


「まだだよ」


「ベーール!」


「できた!?」


ベウルは

少し笑いました。


やがて


甘い匂いが

森に広がります。


「できたよ」


子狼ちゃんは

目を輝かせました。


「たびていい!?」


「どうぞ」


子狼ちゃんは


もぐ

もぐ


それから


もしゃもしゃもしゃ。


「もいっこたびたい!!」


ベウルは

少しびっくりします。


すると子狼ちゃんは

慌てて言いました。


「ベールしゅごい!!」

「おいちー!!」


その声は

森に響きました。


そのとき。


木陰から

レグルが姿を見せました。


「リェグル!」


子狼ちゃんが

嬉しそうに言います。


「おいちーよ!」


「リェグルもたびる?」


ベウルは

少し戸惑いながら聞きました。


「レグル兄さんも

食べる?」


レグルは

パンケーキを見て


それから

ベウルを見ます。


「……もらう」


一口。


もぐ。


少しだけ

目を細めました。


「……うまい」


ベウルは

ほっとしたように


嬉しそうに

笑いました。


しばらくして


レグルは

子狼ちゃんを


ひょいっと

担ぎ上げます。


「昨日も今日も

山ほど食いすぎだ」


子狼ちゃんは

じたばたしながら言いました。


「ベールのパンケェキ〜

まだポンポンにいれるのぉ〜!」


「もう入んねぇよ」


レグルは

そう言うと


片手を

ひらひらと振りました。


「ごちそーさん」


森は

また静かになりました。


ベウルは

しばらく


ぽかんとしていました。


それから


くすっと笑います。


首には

まだリスがいて


パンケーキを

もぐもぐ食べています。


ベウルは

かごの中の木苺を

ひとつ見ました。


その木苺は

子狼ちゃんが

とても嬉しそうに食べていた実です。


すると

しっぽが

ふわりと揺れました。

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