第二十話 心からの笑顔
夜の森は
静かに
やわらかな光に
包まれていました。
木々の間から
月の光が
差し込みます。
その中に
ベウルは
立っていました。
風が
そっと
吹きます。
その毛並みが
ゆらりと
揺れました。
月の光を受けて
ベウルの毛色は
銀青に
輝いて見えました。
「……え」
誰かが
思わず
声を漏らします。
「なんだ、それ……」
驚いた声が
いくつか
重なりました。
けれど――
「……きれい」
ぽつりと
つぶやく声も
ありました。
そのまま
ふっと
笑う気配が
広がります。
ベウルは
少しだけ
きょとんとしました。
自分の毛色を
ちらりと見て
それから
仲間たちを見ます。
驚いている顔。
笑っている顔
その全部を
ゆっくりと
見渡しました。
そして――
ふっと
やさしく
笑いました。
その笑顔は
どこか
少しだけ
変わったようで
けれど
なにも
変わっていないようでもありました。
そのとき――
レグルが
隣に立ちました。
何も言わずに
ベウルの肩に、
手を置きます。
ベウルは
少しだけ
そちらを見て
また
笑いました。
「べウルはベールを脱いだのか…」
おちゃらけ頭脳派が
ぽつりと
つぶやきました。
そのとき――
「ベールは、ベールだよ?」
子狼ちゃんが
きょとんとした顔で
言います。
一瞬
静まりました。
そして――
「……あぁ、そうだな」
くすっと
誰かが笑いました。
その言葉に
空気が
やわらかくほどけます。
ベウルは
そのやりとりを見て
ふっと
やさしく笑いました。
そのしっぽは
ぶわり
ぶわりと
とても嬉しそうに
揺れています。
月の光が
森を
やさしく照らします。
その中で
笑い声が
そっと
重なりました。
森には
やさしい時間が流れます。
ー森の中に、とても心の優しい1匹の狼がいました。
第一部 完
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
第一部はこれにて完結ですが、物事はまだ続きますので、べウルやレグル、子狼ちゃんの様子を追っていただけると嬉しいです。




