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第二話 ベリーの小さな台所

ベウルは森の中を、

ちょこちょこと歩いていました。


かごの中には

今日集めた木の実。


「今日は何を作ろうかな」


ベウルは、そっと森に話しかけます。


ベウルには

お気に入りの場所があります。


森の奥。

大きな岩の陰。


そこに

小さな焚き火と

木のテーブルがあります。


ベウルが少しずつ、

せっせと整えてきた場所。


ベウルの

小さな台所です。


ベウルはかごをそっと置くと、

木の実を一つ一つ並べ始めました。


すると


ふわり。


何かが

ベウルの肩に乗りました。


リスです。


ベウルはびっくりして

少し固まります。


けれどリスは

気にした様子もなく、

ベウルの手元をじっと見ています。


「……食べたいの?」


ベウルがそう聞くと、

リスは小さな両手を差し出しました。


ベウルはその小さな両手に

そっと赤い実を置いてあげました。


もぐ。

もぐ。


ベウルは

少し困ったように笑いました。


「まだ何も作り始めてないんだけどなぁ」


そう言いながら、

ベウルは料理を始めます。


しばらくすると

遠くから声が聞こえてきました。


「ベーーール!!」


どたどたどた。


子狼ちゃんです。


「ベール!!

今日は何ちゅくるの〜?」


子狼ちゃんは勢いよく駆け寄り、

かごの中をのぞきこみました。


「これ、たびりる?

昨日はなかった!!」


「これはね、甘くておいしいよ」


ベウルは

木の実をひとつ差し出します。


「あいあとー!」


子狼ちゃんは

嬉しそうに食べました。


「おいちー!」


その笑顔は

とても明るいものでした。


ベウルはその笑顔を見て

ふっと優しく笑います。


「少しだけ、待っててね」


ベウルは台所に戻ると、

木の実を使って

パンケーキを作り始めました。


子狼ちゃんは待ちきれないのか、

ぴょんぴょん

のぞきこもうとします。


リスも気になるのか、

ベウルの頭から肩へ

肩から首へと、ころころ移動しています。


やがて甘い香りが

森に広がりました。


「できたよ」


子狼ちゃんは

目を輝かせます。


「たびていい!?」


「どうぞ」


子狼ちゃんは


もぐ。

もぐ。


そして


もしゃもしゃ

もしゃもしゃ。


「ベールしゅごい!!

おいちー!!」


その元気な声が

森に響きます。


すると


がさっ。


木の陰から

一匹の狼が姿を見せました。


レグルです。


「……お前」


子狼ちゃんを見て

ため息をつきます。


「またか」


子狼ちゃんは

口の周りをまっかっかにしながら


「リェグル!

今ね、おいちーの食べてるとこなの!」


レグルは

少しだけ笑いました。


ベウルが

おそるおそる聞きます。


「レグル兄さんも

食べていかない?」


レグルは少し考えてから


「……もらう」


パンケーキをひと口。


もぐ。


「……うまい」


そう言って

きれいに全部食べました。


そして

お腹いっぱいになって

動けなくなっていた子狼ちゃんを

ひょいと担ぎ上げます。


レグルは

呆れたように言いました。


「昨日も今日も

山ほど食いすぎだ!」


子狼ちゃんも

負けじと言い返します。


「ベールのパンケェキ〜

まだポンポンにいれるのぉ〜!!」


レグルは

ため息をつきながら言いました。


「もうそれ以上入んねぇよ!」


そしてレグルは、

子狼ちゃんを担いでいない方の手を

ひらひらさせて歩き出しました。


「ごちそーさん」


静かになった森。


首には

我関せずにパンケーキを齧っている

リスがまだいます。


そして

その小さな音だけが

聞こえていました。


ベウルは少しぽかんとして、

それから

くすっと笑いました。


ここは

ベウルだけの

秘密の台所でした。


ベウルは

かごの中の木苺を

ひとつ見つめました。


しっぽが

ふわりと

揺れました。

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