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第十話 違和感 ー音のない森ー
森は
いつもと同じように
静かです。
けれど
どこか
違いました。
風が
葉を揺らします。
その静けさは
どこか
重たくて――
耳に
まとわりつくような
静けさでした。
ベウルは
ゆっくりと
歩いていました。
足音だけが
小さく
森に溶けていきます。
けれど
その音さえも
どこか
遠く感じました。
ベウルは
ふと
立ち止まります。
耳をすませました。
――やはり
何も聞こえません。
いつもなら
どこかで
笑うような
小さな声がしているはずなのに。
今日は
ひとつもありません。
ベウルのしっぽが
ふるり
と
揺れました。
ぴくり、と
小さく
震えます。
ベウルは
自分のしっぽを見て
少しだけ
眉をひそめました。
「……どうしたんだろう」
分かりません。
けれど
胸の奥が
ざわり
と
揺れました。
そのとき
す……
と
風が止みました。
葉の揺れる音も
消えます。
森が
息をひそめたように
静まり返りました。
ベウルは
顔を上げます。
森の奥。
木々のあいだの
暗がりを
じっと見つめました。
――何かがいる。
そう思った
そのとき。
ふ、と
ほんの一瞬だけ
何かが
動いたような気がしました。
けれど
次の瞬間には
もう
何もありません。
風も
音も
すべてが
止まったままです。
ベウルのしっぽが
ぴたりと
止まりました。
森は
ただ
静まり返っています。




