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第一話 ひとりで歩く狼

絵本のような物語を書きたくて生まれたお話です。

森の中で暮らす少し気弱で、とても優しい子狼のお話。

どうぞゆっくり読んでいただけたら嬉しいです。

挿絵(By みてみん)


ー森の中に、とても心の優しい1匹の狼がいました。


朝の森には、まだ少し霧が残っていました。


木々のあいだから、

やわらかな光がこぼれています。


その中を、

一匹の子狼が歩いていました。


名前は、ベウル。


ベウルは小さなかごを持って、

森の中を歩いています。


「今日は、いい実が見つかるといいな。」


ベウルは森にそっと呟きながら、

木の実を探していました。


赤い実。

山の実。


食べられるものを、少しずつ。

かごの中へ入れていきます。


そのとき。


森の奥から、声が聞こえました。


「ベーーール!!」


ベウルはびくっとして振り向きました。


お耳がぴょこんと立ち、

しっぽがぶわっと膨らみます。


ベウルはそのまま、固まってしまいました。


「ベーーール!!」


元気な声が、もう一度響きます。


そして――


小さな狼が、

森の中を一生けんめい走ってきました。


「ベール!」


子狼ちゃんは、にこにこしています。


「ベール、なにしてるの〜?」


そう言いながら、

もうベウルのかごをのぞきこんでいました。


「これなぁに?」


赤い実を見つけて、

ベウルを見上げます。


「たびりる?」


ベウルは少し驚いてから、

やさしく笑いました。


「うん。これは甘くて美味しいよ。」


ベウルは木苺をひとつ取り、

そっと差し出します。


「あいあと!」


ぱくっ。


「おいちー!」


子狼ちゃんは夢中で食べました。


そしてまた、

かごをのぞきこみます。


「こっちは?」


「それは山の実だよ。」


「たびりる?」


「うん、食べられるよ。」


子狼ちゃんは、

きらきらした目で質問します。


ベウルは少し困りながら、

ひとつひとつ答えていました。


でも――


木苺を食べたときだけ。


子狼ちゃんの笑顔は、

とても明るくなっていました。


ベウルは、その笑顔を見て思いました。


(あの、とても明るい笑顔……)


ベウルは、かごの中を見ます。


今日は木苺がたくさんあります。


ベウルは小さくうなずきました。


それから少し歩きます。


大きな岩の陰にある場所へ。


そこには、

ベウルの小さな台所がありました。


「ここで少しだけ待っててね。」


ベウルは火をおこし、

木苺をつぶして生地を作ります。


じゅう……


甘い匂いが広がりました。


子狼ちゃんは

となりでじっと見ています。


でも。


待てません。


ぴょん。


ぴょん。


背伸びして

フライパンの中をのぞこうとします。


そのとき。


ぴょん。


一匹のリスが、

匂いに釣られてベウルの肩へやってきました。


子狼ちゃんの目が輝きます。


「わぁ!」


やがて――


パンケーキができました。


「できた?」


「たびていい?」


ベウルは少しぎこちない笑顔で言いました。


「……どうぞ。」


「いただきまーしゅ!」


もしゃ。


もしゃもしゃ。


「おいちーー!!」


子狼ちゃんは夢中で食べます。


そして――


「ベールしゅごい!!」


ベウルはきょとんとしました。


「え?」


「こんなにおいちーの

ちゅくれるなんてしゅごい!!」


「もいっこたびたい!」


ベウルは、また一枚焼きました。


しばらくすると。


子狼ちゃんは

その場にごろんと転がりました。


どうやら、電池が切れたようです。


そのとき。


森の奥から、低い声がしました。


「……やっぱりここか。」


ベウルが振り向くと、

そこにレグルが立っていました。


レグルは子狼ちゃんを見て、

ため息をつきます。


「また電池切れか。」


そう言って、ひょいと抱え上げました。


「……悪かったな。」


ベウルは少し驚いて、

小さく首を振ります。


それから、ぎこちなく笑いました。


「レグル兄さんも……食べる?」


ベウルはパンケーキを差し出します。


レグルは少し黙って、ひと口食べました。


「……うまい。」


そう言うと、

あっという間に食べてしまいました。


「ごちそーさん。」


レグルは片手を上げて歩き出します。


そのとき。


腕の中で子狼ちゃんが

もぞっと動きました。


「ベール……」


「ぱんけぇき……」


レグルは呆れたように言いました。


「……山ほど食ってただろうが。」


そう言いながら、

森の奥へ消えていきました。


ベウルはしばらく、その場に立っていました。


ぽかん。


そのとき。


くいっ。


ベウルの首の上で、小さな動きがありました。


リスです。


どうやら、まだ乗っていたようです。


ベウルは少し笑いました。


そしてまた、採取を始めます。


かごの中をのぞくと、

赤い木苺がいくつか入っていました。


ベウルは、ふっと小さく笑います。


森の中を歩くベウルのしっぽは、


軽やかに

ふわふわと

揺れていました。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

この物語は、森で暮らす優しい子狼「ベウル」と

その仲間たちの物語です。

少しずつ優しい世界が広がっていきます。

もしよろしければ、また次のお話も読んでいただけたら嬉しいです。

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