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[双子百合]うまれる前から永遠に  作者: 唯凜
わたし達の高校生活
3/3

第三話

「いや~つかれた~~~」

「もう......早く髪乾かさないと傷んじゃうよ」

「ん~~お姉乾かして~......」


 入学祝に外で家族でお昼ご飯を食べてから家に帰り、早めのお風呂から上がって現在。自分の部屋に行かずにまっすぐお姉の部屋にやってきていた。


「仕方ないなぁ......ほら、こっちおいで」

「やったあ!」


 お姉がドライヤーと櫛、ヘアオイルを用意しながら隣のカーペットの上をぽんぽんと叩く。

 疲れたという言葉なんてなかったかのように軽やかに身体が動き、お姉が叩いた場所にシュバッと素早く座る。

 

 お姉がヘアオイルを手のひらに出し、両手を合わせて数秒してからわたしの髪にゆっくり丁寧に塗ってくれる。

 身を任せて目をつぶってゆったりしているとすぐにブオォォという音と共に暖かい風が頭部に当てられる。

 お姉の手が左右に細かく振られつつ頭を掠めながら優しくわたしの髪を梳いて乾かしていく。

 心地よさにぼーっとしてしまいながらお互いに無言でドライヤーの音だけが部屋に鳴り響き数分間の時間が過ぎていく。

 全体がある程度乾ききったかと思われる頃にお姉が櫛を使って髪を梳かし始める。そして温風から冷風に切り替えられ丁寧に仕上げをしてくれた。


「......はい、おしまい」

「ありがとお姉〜。今日も気持ちよかったぁ」

「どういたしまして。今日もまた可愛くなったよ、環樺」


 お姉が優しく微笑みながらそんなことを言ってくるのでなんだか照れくさくなってしまう。

 こうして髪を乾かしてもらった後、たまにこんな感じに人を勘違いさせそうな事を言う時があるんだよなぁ。



「......お姉、それあんまり他の子にやっちゃだめだからね......」

「......? なにが?」

「まぁいいや......とりあえずお姉もお風呂入ってきなよ。今度はわたしが髪乾かしたげるから。」

「うん、じゃあ行ってくるね」


 お姉が立ち上がってから「んーー」と伸びをしてから部屋を出ていった。






「でもさぁ、クラスが別にはなっちゃったけど昔みたいに休み時間とかは会えるもんね! お姉!」


 先ほどから数十分が経過し、お姉がお風呂から帰ってきたこの部屋には激動だった今日の前半とは打って変わって、ゆったりまったりとした至福の時が流れていた。

 わたしはカーペットの上に寝そべりながらリラックスして、お姉はベッドに腰かけていつも枕元に置いてあるハリネズミのぬいぐるみを膝に置いて撫でていた。

 もちろんお姉の髪は宣言通りにわたしが乾かしてあげた。それはもう髪の一本一本まで愛でるように丁寧に。

 でも、髪を乾かし終わってからお姉みたいに、微笑みながら「うん、お姉、今日もすっごく可愛いよ」なんて言ってみても、お姉は何ともないように「ありがと」って言ってニコッと笑うだけ。

 わたしは未だにちょっとドキッとするのに(......ホントにちょっとだけなんだから......)お姉の方は何ともなさげなの、こういうところはなんか不公平だ。


「環樺。あのね、そのことなんだけど」

「ん?」


 そんなことを考えているとお姉が少し真面目な雰囲気で膝の上にあったぬいぐるみを横に置くとわたしの方に向き直り、わたしの目を見つめてくる。

 こういう時はなんだか良くない予感がする。手をついて上半身を起こし、話を聞く体勢を取る。


「どうしたのお姉......?」

「えっとね、お互いに今のクラスとか、新しい環境に慣れるまでは学校ではあんまり会わない方がいいと思うの......」

「え......?」


 今お姉が言った言葉をわたしは理解できずにいた。いや、正確に言うと理解したくなかった。

 だってわたしがクラスが別になって最初は絶望してしまってもしばらくしたら少し立ち直ってこられつつあったのは、さっき言った通り休み時間とかにはお姉に会えると思っていたから。


 それなのにそれも許されないなんて......

 しかもよりによってそれを、あえて離れることをお姉の口から提案されるなんて......


「なんでなの、お姉......? 中学校でクラスが別れた時はいつも会ってたじゃん」


 わたしは縋る思いでお姉の目を見つめ返して問いかける。


「中学の時は私達の事を皆が知ってくれてたでしょ? だからお互いのクラスを頻繁に行き来しても、仲良しなんだねって言われるくらいで皆見守ってくれてた。でも今は全く新しい環境で私達の事を知ってる人は居ない」

「うん......それは、そうだね......」

「その状況でお互いのクラスメイトよりも私達が一緒に居ることを優先しちゃったら、クラスでの立場を築きにくくなっちゃうでしょ?」

「うぐ......確かに......」

「最悪、あの二人はほっとけばいいんだ、って空気が出来上がっちゃったらこれからの三年間ずっと二人で孤立しちゃう、なんてことにも繋がりかねない。まぁ、流石にそれは考え過ぎなのは分かってるけどね。あくまでも最悪のケースで」

「......」




 わたしにとってお姉と一緒に居ることは何よりも大事なこと。   

 きっとお姉もそう思ってくれている。


 だが、それは周りの全てを犠牲にして手に入れるものじゃない。

 わたしはお姉に世界で一番幸せな人になってほしい。

 さっきのお姉の例えのようにわたしと一緒にいる時は天国だったとしても、一緒に居ないときは地獄、みたいな状況にはさせられない。


 わたし達はそんな関係を望まない。

 そんなことをしなくてもわたし達なら両立して叶えられるから。

 

 何よりもきっとお姉もそうやってわたしの事を第一に考えてくれてこんな提案をしてくれているんだって言う事が分かっているから。

 それなら答えないわけにはいかない。


「ありがと、お姉......。うん、わかった! そうしよっか!」

「環樺......」


 お姉は理解してもらえてホッとしたような、でもどこか寂さも孕んでいるような、そんな表情を浮かべていた。


「きっと二人の事を想って考えてくれたんでしょ? 不安もあるけど、わたしはそれがすっごく嬉しい!」

「ううん、こっちこそありがと、環樺......。でも、言っておくけど、私だって寂しいんだからね! それにあくまでもお互いに今のクラスにしっかり馴染めるようになるまでの何か月かくらいの話だから!」

 

 お姉のテンションが少し上がってこちらにグイッと顔を寄せて念を押すように補足をしてくれる。


「うん、私も寂しいけど頑張るよ」

「それから、別に絶対会っちゃいけないってわけじゃなくてどこかでたまたま会ったりとかしたらちゃんと話そうね! 無視とかしたら怒るからね!」

「分かってるよ、大丈夫だって」


 なんかどんどん語気が強くなってきている気が......

 それに顔もどんどん近くなってきていてこのままだと......


「放課後たまに一緒に帰るくらいはしてもいいよね!? それと家に帰ってきてからは毎日たくさん話そ!? 休みの日もお互い友達と遊びに行ったりすることもあるだろうけど一緒に居る日もちゃんと......」

「ちょっとお姉!? ストップストーーーーップ!!」

「ハッ......!?」


 ガッチリと肩をつかんで、我を忘れてどんどんエスカレートしていくお姉を流石に止めに掛かる。きっともう自分でも何を言っているか分かってないんだろうっていうのが見て取れるくらい興奮して顔が赤くなっている。


 ......ていうかこのまま止めなかったらチューしちゃうんじゃないかっていうくらい顔が近くてこっちがもたなかった。

 きっとわたしの顔も少し赤くなっているんじゃないか......?


「ご、ごめん環樺......! つい......!」

「だ、大丈夫大丈夫! 一回深呼吸して落ち着こ!?」

「う、うん。......フーーーー......スーーーーー」


 お姉が素直に深く深呼吸をし始める。

 ついでにわたしも少し高鳴った鼓動を鎮めるために一緒に深呼吸を何度か繰り返す。

 二人の深呼吸する音だけが耳に届く状態がしばらく続いた。 


「ふぅ......。どう? 落ち着いたお姉?」

「うん、ありがと」


 お姉が少し申し訳なさそうに眉根を寄せて目を伏せながら胸をなでおろす。


「お姉の気持ちはよく伝わったよ。......よしよし、頑張って伝えてくれてありがとね」


 なんとなくそうしたくなったので、手を伸ばしてお風呂上がりでサラサラのお姉の髪を優しく撫でる。

 何回か撫でるとお姉が視線を上げ、お互いの目が合う。


「いつまでか分かんないけど、しばらくの間一緒に頑張ろ?」

「うん、頑張る......。お姉、大好きだよ」

「私も大好きだよ、環樺」


 二人で少し照れながらお互いのおでこをコツンと合わせて笑い合う。

優しい気持ちに包まれて、二人の深いところにある何かが溶け合っていくような幸せな感覚。お姉としか感じ合えない感覚。


 学校でお姉とあまり会えない日々がこれから始まることはもちろん悲しいが、お姉に心配をさせないように頑張ろうと気合を入れた。

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