マリーの悪役令嬢体験記
初の悪役令嬢もの(変形版)です。
楽しんでいただけると嬉しいです。
「マリー・アン・フォートナム!貴様のような女がこの私、ヘンリー・アルバート・デイビスの婚約者たる資格などない!ここで貴様との婚約破棄を宣言する!!」
学園のダンスパーティーでマリーは突如始まった宣言に目を白黒させた。
突然、名指しされたかと思えば、貴様呼ばわりされ、婚約者たる資格がないときた。
そして、婚約破棄を公衆の面前で宣言されてしまった。
ここはルビオン王国の貴族や裕福な家の子女が通う寄宿制の学園だ。
学園と言えど、同じ教室で男女が席を並べることもなければ、学園内ですれ違うこともない。
男女は完全に敷地を分けられたなかで学園生活を送っている。
学園内で関わり合う場は、入学式、卒業式、年に2回ほどある交流会を兼ねたダンスパーティーだ。
婚約者がいる場合は休日は学園指定の場でのお茶会や交流は認められているが、あくまでも休日に品位と節度を持った関わり合いだ。
今このダンスパーティーの場には学園の全生徒がいて、ヒソヒソと小声で何かを噂している。
マリーは約2年ほど海をはるか越えた先、東の帝国の港町で過ごした後、半年ほど前にルビオンに帰ってきて、そのまま学園に入学した。
期間は3年、ここでは貴族女性としての立ち居振る舞いや社交術の仕上げはもちろん、領地経営、商会の経営などの基礎を習う。
マリーはルビオンにいた間はやんちゃで手が付けられなかったが、帝国での出会いをきっかけに淑女としての意識を持つようになったのだ。
マリーの父は一族が持っている下位の爵位を与えられている。
ただし、領地はないため、商会の帝国支部を管理し、帝国との交易に従事するやり手の実業家だ。
将来的にはマリーも父がいる帝国支部に行き、帝国やその周辺地域との交易をするつもりだ。
なによりも、帝国でできたお姉様…大好きな年上の親友の故郷に行きたいのだ。
海外にいるマリーの父に代わって、祖父が婚約を決めてきた。
相手は国内最大手のデイビーズ商会の三男坊、ヘンリー・デイビーズ、マリーより1つ年上だった。
学園入学直前に初めて会ったとき、ヘンリー・デイビーズはマリーをお茶を飲む作法も食器の使い方も知らない野人か何かと勘違いしていた。
「確かに、ルビオンにいたときは作法の勉強を好まないやんちゃなお子ちゃまだったけれど…」と自身を顧みながら、マリーは美しく特訓の成果を見せたのであった。
しかし、話をしてみれば、口の端々からルビオンと周辺国の外を未開とする彼の思想が露わになった。
彼の言葉を借りれば、ルビオンや周辺国の支配下にはいった国はようやく、道具を使い、服を着ることを覚えたという。
当然、船などは見たこともなく、家ではなく洞窟で寝起きし、火を起こす技術もない、と。
ルビオンから離れれば離れるほど未開度は高くなり、東の帝国と言ったら、まだ石器を使っている、さらには人を食うと高説を垂れるのであった。
あまりの高説にマリーは耳を疑った。
マリーが知っている限り、東の帝国は非常に文明的だった。
確かに、帝国の港町はルビオンの船だらけだったけど、焼き物や細工、織物の美しさは人の手だろうが機械だろうがルビオンでは到底実現できないものだ。
マリーの手元にある茶器に黄金色に輝く茶はその帝国の一地方、水の郷と呼ばれる場所で作られるものだ。
「あはははは!ルビオンや周辺国以外が未開なんて、行ったことあるの!?」
マリーは思わず笑ってしまった。
茶や合わせた茶器を作るのも、美しく光を放つ繊細な織物を作れるのも文明も文化も高い証拠なのに、帝国のどこが未開の地と言うのか。
「行かなくてもわかる!」
「行ったことないのに?どこからそんな話を聞いたの?」
「みんなが言っている!」
「みんなって?」
「みんなはみんなだ!」
大きな声で怒鳴ったヘンリーにマリーは呆れてしまった。
ヘンリーみたいな子どもと比べては失礼だけど、マリーの初恋の人は優しく賢く素敵な人だった。
あ、彼は奥さんを溺愛しすぎで束縛が強かったのは玉に瑕だけど。
マリーは使用人に言って世界地図を持ってきてもらった。
開いてそれを見せて、マリーは地図の一点を指さした。
「私はここにいたわ!船では、ここと、ここと、ここ、あとここも、こことここと…ここでしょ、それにここも!港だけだけど通ってきたわ。家もあるし、服も来ているし、言葉もしゃべるし、火だって普通に起こしてたわ!」
「それはルビオンの支配下だからだ!」
ヘンリー・デイビーズはかたくなだった。
もう引っ込みもつかないのだろう。
おじいさまの設定してくれた婚約者になることがありきのお見合いだけど、やめた方がいいな、そう思った。
だが、そんなマリーの気持ちはどこへやら、ヘンリー・デイビーズはマリーに好印象をもった。
しかもマリーが未開の地へ行って、生きて帰ってきたということにひどく心を揺さぶられたらしかった。
なんか釈然としなかったけど、学園では休日を中心に週に1時間くらいのお茶をする程度の交流を持ち、今日を迎えたのであった。
ダンスパーティーでのあまりの出来事にマリーは唖然とした。
だいたいにおいて、婚約破棄などこんな公衆の面前でやることではない。
そもそも、婚約と言うのは家同士の約束なのだから、個人の好き嫌いで勝手に破棄などできるものではない。
マリーに婚約破棄を居丈高に告げたヘンリー・アルバート・デイビスは傍らに一人の女子を置き、マリーがいかに彼女に嫌がらせをしたかを訴えている。
ヘンリー・アルバート・デイビスの隣にいる女子生徒は入学以来、何かとマリーに因縁をつけてくるが、つけられる因縁に心当たりがないマリーは「それって私のこと?」と聞き返すのだった。
「ヘンリー様はあんたと婚約したくなかったって言っているわ!!」
「ヘンリーは確かに婚約者だけど…」
「ずいぶんと無理やりに婚約者になったって言っているわよ!彼は毎日泣いているわ!」
心当たりのないことにマリーはさらに首を傾げた。
彼女は確かに貴族籍を持っているわけではないけれど、マリーの婚約者を「ヘンリー様」と呼ぶことにマリーは納得いかなかった。
それにしても、毎日学園の男女が密会している、しかも婚約者ではない男女が…それがそもそもまずいのでは?とマリーはおもう。
「マリー・アン・フォートナム!貴様との婚約破棄のあと、私はシンシア・ルイスと婚約をする!」
高らかな宣言に周囲の目は冷たいが、燃え上がる二人には見えていない。
マリーは、この状況を思い至った。
「あ!!これって、最近はやりの劇『突然の婚約破棄、そのあとで』と同じじゃない?ってことは、私って、悪役令嬢!?私が悪役令嬢まあ…私じゃ力不足じゃない!?」
「おい!何を一人で盛り上がっている!マリー・アン・フォートナム!貴様との婚約破棄を宣言しているのだ、少しは動揺したり、泣いて縋ったりはないのか!?」
シンシア・ルイスの肩を抱き、ヘンリー・アルバート・デイビスはマリーを指さしながらぶしつけに叫ぶ。
気の抜けたマリーの反応が彼の怒りをさらに燃やしたのだろう。
「今更ですけど…人違いですよ?」
マリーがケロッとした顔で小首をかしげる。
「何を言っている!貴様はマリー・アン・フォートナムだろ!」
「そうです、それは合っているんですけど」
「ヘンリー様に無理やり泣きついて婚約者になったんじゃない!!」
シンシア・ルイスの怒鳴り声にヘンリー・アルバート・デイビスは耳をキーンとなりながらも、うんうんと頷いている。
「私は、ヘンリー様?…えっと…ヘンリー・アルバート・デイビス様でしたっけ?の婚約者なんですか…?」
「はあ????」
会場にいた一同は目を丸くする。
「だって!あんた!ヘンリー様の婚約者だって言って歩いていたじゃない!!男爵令嬢のクセに侯爵子息と婚約なんてズルいのよ!!」
ズルいってなんだ…茶番に巻き込まれた一同は心を同じくした。
シンシア・ルイスは裕福な家とは言え、小金を稼いだ成り上がりの平民ではないか。
マリー・アン・フォートナムは男爵令嬢だが、本家は公爵を賜り、多大な領地を管理し国内の食糧生産や織物や窯業といった王国の生活の基礎を支えている。
また、一族総出で古くから周辺国との交易をおこない、今では海外との取引も行うルビオン経済の屋台骨だ。
格が違う。
「私、婚約者いますよ。実際に何度も会ってますし、最近は偏屈なところも猫のツンデレみたいだなって思うようになって。でも…ヘンリー・アルバート・デイビス様とは今日初めて会いましたよね…?あれ?私、記憶喪失???私たちお見合いでお茶会しました?帝国の帝花茶をお入れしましたっけ?」
マリーの突拍子もない問いに、ヘンリー・アルバート・デイビスは目を丸くし、だんだんと自分の勘違いに気づいたのかドンドン顔が上気する。
「何ごまかしてんのよ!あんた!ヘンリー様が婚約者だって言っていたじゃない」
シンシア・ルイスはなおもがなり立てる。
「私の婚約者の名前はヘンリーです。ヘンリー・デイビーズです。デイビーズ商会の三男です。ヘンリー・アルバート・デイビス様とは違う人だと思うんですけど」
「は…は…はぁ!?ヘンリー・デイビーズ!?誰よ、それ!」
「国内の最大手デイビーズ商会の息子です」
マリーが言えばシンシア・ルイスはわなわな震え上がり、ヘンリー・アルバート・デイビスは真っ赤にゆであがっている。
その様子を見て、クスクスと笑い声が響き、「みじめ…」「笑っちゃダメよ」「だっさ」「それな」と会場のいたるところから小声が飛び交う。
「じゃあ、今この場に連れてきなさいよ!連れてこなきゃあんたが婚約破棄したくなくて嘘ついているってことだわ!」
ここまで来ると引っ込みがつかなくなったのだろうシンシア・ルイスにいちゃもんをつけられる羽目になるとはマリーは思ってもいなかった。
「あの!シンシアさん、一つ聞いていい?」
「なによ!」
「なんでそんなに私を目の敵にするの?」
マリーには本当にわからない。
なぜシンシア・ルイスという女生徒に入学以来執拗に絡まれているのかを。
移動も含めて3年ほど外国にいたマリーには思い当たることはない。
その前…?
マナーができなかったマリーは外で他の子との交流を制限されていたから、覚えていない。
「だって、あんたズルいのよ!」
「ズルい…?」
「領地もない男爵の娘、商会をやってるなんてほぼ平民と一緒じゃない!それなのに、侯爵子息と婚約しているなんて!!」
だから、それが全面的に勘違いなのだ。
マリーが指摘しようと口を開く前にシンシア・ルイスが叫ぶ。
「それなのに!デイビーズ商会の3男坊なんて!!デイビーズ家は裕福だけど、ただの平民じゃない!それじゃ意味ないわ!!」
わめきたてるシンシア・ルイスからヘンリー・アルバート・デイビスもそろそろと距離を取る。
他の生徒たちの視線は冷たい。
「せっかく!あんたからヘンリー様を奪い取れれば、侯爵夫人だったのに!!なんなのよ!あんた!」
なにからなにまでシンシアの逆恨みだ。
「あら?奪い取ったらよろしいのよ。侯爵夫人になれるかどうかは知りませんけど」
そう声をかけたのは一人の女生徒だった。
金髪だが、ブルネットの髪の毛がメッシュのように入り、髪の毛を上品に結い上げている。
ダンスパーティだけあってシンプルながら仕立ての良いドレスは光の加減で水面のように揺らいだ。
「あんた誰よ!」
「マリアン・フォルトナー。侯爵令嬢です。第3学年に所属しておりますので、初めてお会いしますね、シンシア・ルイス様。私、ヘンリー・アルバート・デイビス侯爵令息の婚約者でした」
あえて過去形で自己紹介をするマリアンにシンシアは彼女の名前を繰り返す。
「マリアン・フォルトナー…で、こっちはマリー・アン・フォートナム…ややこしいのよ!!」
シンシア・ルイスは叫ぶ。
マリアンは視線を逃げようとするヘンリー・アルバート・デイビスに移した。
ヘンリー・アルバート・デイビスは周囲に取り押さえられ、マリアンの目の前に引き釣り出された。
「私と彼女を間違えるなんて…情けない。それにこの婚約に泣いて縋ったのは5歳の時の貴方でしょう?それなのに1歳とは言え年上が婚約者というのが気に入らない。婚約後ろくに交流もなかったとは言えお粗末さにめまいと頭痛がしますわ。ほとほと愛想は尽きたので、これで婚約は破棄と言うことは家族に伝えておきますね」
マリアンは冷たく告げると、ヘンリー・アルバート・デイビスはパクパクと何か言いたげにした。
マリアンが冷たい視線で見下ろせば、がっくりとうなだれてしまった。
「マリー・アン様。大変失礼なことをしました。このお詫びは必ず」
「いえいえ!悪役令嬢の立場になるなんて、貴重な体験でした!」
ちっとも堪えていないマリーにマリアンは目を丸くし、周囲はクスクスと笑っている。
これでは詫びのしようがない。
「あの!一ついいですか!?」
「はい、なんでしょう?」
マリアンがなにか適切な詫びをと考えていると、マリーの勢いにマリアンは反射的に返事をする。
「今日の話!親友にしていいですか?あと、お姉様達にも」
「親友とお姉様達ですか?」
「はい、親友は帝国の役人の妻で…20歳…あれ?21?22歳…まあいいや!シュリって言うんです。お姉様達はエレノア様とシャーロット様とイーディス様。シュリとエレノアお姉様とイーディスお姉様は…あと、シュリの旦那様のリューと赤ちゃんもですけど、今はルビオンにくる船の上なんです。だから今日のことを書いておいて、会った時に話したくて」
マリーの親友のシュリはともかく、エレノア、シャーロット、イーディスと聞いてマリアンとヘンリー・アルバート・デイビスをはじめ話を聞いていた周囲は急に青ざめた。
王家と直接血のつながるその3人はヤバい。
女王陛下の覚えめでたい3人だ。
マリアンより1-2歳年上の彼女たちの才色兼備さはルビオン貴族なら知らない者はいない。
マリーが「お姉様」と呼ぶくらいなのだから仲はいいのだろう。
マリーは気にしないにしても、3人のお姉様に睨まれたら明日はない。
と言うことは、今日のとんでもないマリーへの濡れ衣と数々の暴言がお姉様たちに知られたら、いくら侯爵令息でもヘンリー・アルバート・デイビスに未来はない。
下手すればデイビス侯爵家も何かしらの措置を受けるに違いない。
「マリー・アン様。エレノア様、シャーロット様、イーディス様とは仲がおよろしいの?」
「はい、帝国の港町でお会いした時は怖いって思ったんですけど!」
マリーの率直な言葉に一同息を呑む。
その3人のお姉様を怖いなんて、こんな公衆の面前でぶちまけていいのか、と。
「お転婆な私にもよくしてくださるし、シュリや王国群のアニタ、パドマ、それに、戦闘部族のビビとも仲良しになりたいって言ってくださって、とても素敵な大好きなお姉様達です」
シュリ以外にもアニタ、パドマ、ビビとルビオン以外の名がマリーの口から発せられた。
「お姉様たちは私と同じ金髪と青い目と白い肌でしょう!シュリは黒髪黒目、肌は薄い蜂蜜色なんです。アニタもパドマはとても艶のある黒髪黒目ですけど、濃い蜂蜜色と薄い紅茶色の肌、ビビは黒髪が細かく縮れていて目は黒曜石のように艶めいて、肌の色はチョコレートのようなんですよ!私たちがそれぞれの衣装で並ぶととても素敵だと思いません?で、私たち、それぞれの飾り物から珠をみんなで分け合って持っているんです。帝国の港町で出会った『永遠』の証なんです」
そう言って首元を飾るネックレスに手を当てる。
紫色のアメジストに混ざって様々な色の珠が混ざっているのは、彼女のいう「永遠」の証か…
全員の背が一斉にブルッと震えた。
シュリもアニタもパドマもビビも彼女たちがどこの誰であってもいい、容姿がなんであってもいい、重要なのはマリーとお姉様たちと仲良しだということだ。
マリーの言葉に彼らは決めた。
絶対にマリー・アン・フォートナムだけは敵に回さないようにしようと。
「ところで、マリー・アン様の婚約者様は?」
「今日はフォートナム商会で帝国語のレッスンを受けてるはずです。卒業して、結婚したら、帝国に戻るので」
マリーの笑顔に一同気圧される。
彼女には学園だの、ダンスパーティーだの、婚約破棄の茶番など些末なことだ。
広い世界と遠い国を知っている。
「マリアン様のドレスに使えるような生地をたくさん帝国から紹介しますね」
後日、マリアン・フォルトナーよりヘンリー・アルバート・デイビスへの婚約破棄が行われた。
ヘンリー・アルバート・デイビスは領地での謹慎が言い渡され、シンシア・ルイスは学園からの退学が余儀なくされた。
もちろん、この二人の結婚は許されることなかった。
「マリー…」
「いらっしゃい、マリーさん」
「ヘンリー、シューさん」
マリーがルビオンのフォートナム商会の学園近くの支店に顔を出せば、平日の夕方や休日は商会で修行中の婚約者のヘンリー・デイビーズと帝国からやってきた従業員のシュウが出迎えてくれた。
シュウはマリーの初恋の相手リュウにちょっとだけ似ている。
「リューよりはちょっとだけおじさんだけど」と思いながらもマリーはシュウにリュウを思い出す。
シュウはマリーがルビオンに帰ってくる時に同じ船に乗っていて、マリーの絵を描いてくれた。
1番のお気に入りの絵、絶滅したはずのドードーという鳥とマリーが並んだ絵はシュリに送ってしまった。
同じ絵をもう一枚お願いして描いてもらった。
初めは渋っていたけど、ルビオンの港で別れる前にくれた絵はマリーの宝物だ。
フォートナム商会の学園都市支店でシュウの姿を見た時は本当に驚いた。
「便箋を買いに来たの。シュリに書く手紙用よ」
「出さない手紙ばかり書いたって、相手が字を読めなきゃしょうがないだろ?」
「出さないじゃなくて、出せないの!もうすぐ会えるから!それにシュリは帝国の文字だけじゃなくてルビオンの文字だってちゃんと読んで書けるわ!」
「帝国の文字ってあんな絵みたいなのを文字っていうのかよ…」
「未開の地は文字なんて持たないんじゃなかったの?ヘンリー・デイビーズ」
憎まれ口をたたくヘンリー・デイビーズに言い返してマリーはシュウが出してきた便箋をペラペラとめくった。
「だったら別に手紙なんか書かなくったって…」
「会えたら嬉しくて、何から話していいかわからなくなっちゃうもの!」
シュリやお姉様たちに書く内容を思い出して口元が綻んでしまう。
シュリやお姉様たちの話をする時、マリーは恋をしているように頬を染め、目を輝かせる。
ヘンリー・デイビーズはそれが気に入らなくて、ついつい憎まれ口を叩いてしまう。
シュウはわけ知り顔で、ヘンリー・デイビーズにあえて何もいうことはしなかった。
「また、面白いことでもあったんですか?」
「そうよ、今回は私、なんと悪役令嬢になったのよ!」
シュウの問いかけにそう言ってマリーは胸を張って、ヘンリー・デイビーズのいなかったダンスパーティーで何があったかを面白おかしく話すのであった。
シュウは丸メガネの奥で笑いを噛み殺した。
ヘンリー・デイビーズはマリーを見て笑顔でこう言った。
「なんだよ、マリーって本当に面白い奴だな」
主人公マリーやマリーの友人(シュリ、アニタ、パドマ、ビビ)とお姉様達(エレノア、シャーロット、イーディス)は別の長編(未掲載)で色々活躍しております。
マリーが本編でルビオンに帰って学園に入ると言ったので「悪役令嬢ものできるのでは?」と考えて生まれました。




