追放された。そして次元移行する。どの文明も独自な進化を遂げていて素晴らしいのだけどその力を奪い合ってアホらしい。それが嫌なので理想の世界を探す。
『俺のスキルは力を拡大する』
『私のスキルは物を発射する』
◇◆◇
「ルケ。私のこの火炎スキルを良い感にバフして良い感じな料理を作れるようにして」
「はいはい」
「フェルベさん。この物資をあそこまで運んでもらえますか?」
「分かりました。えーい物資発射―!」
『ルケのスキルは便利なんだけどダサいよね……』
『フェルベさんスキルは便利だけど面白くないよね……』
『ダサくて悪かったな!』
『面白くないって何!? 』
『生命文明』の種族のルケ。
『継承文明』の種族のフェルベ。
二人のスキルは地味な需要と若干ネガティブな評価があった。
◇◆◇
ある街の種族は先進的に魔術や超能力を開発してその産物によって生活を繁栄させていった。それは人呼んで『生命文明』
一方。
ある森の種族は森の自然の産物によって生きている。その自然の産物は古代の民が先祖がいかなる時も路頭に迷わないように構築した自給自足のシステムだった。その機構は解明されずロストテクノロジーだった。その使い方だけ継承されていた。彼らは自らを『継承文明』と呼称し閉鎖的に存在していた。
双方の文明は各々独自にテクノロジーを繁栄させた。どちらも過不足のないそれなりに豊かな生活をしていた。
ある別の文明があらわれるまでは。
◇◆◇
その日。悪夢が到来した。
自らを奪略文明と名乗る文明が二つの文明へ攻撃を仕掛けた。奪略文明は全く別の次元同士に存在する文明に介入できるテクノロジーを持っている。そして様々な次元の文明を征服して私腹を肥やしていた。
二つの文明は奪略文明に対して対抗手段を持たなかった。何の因果か、二つの文明には戦争のや抗争のような概念が抜け落ちていた。ありていに言えば、どちらも平和ボケしていて頭に花が咲いているような血の気のない文明であった。
二つの文明は違う次元に存在し本来ならば交わらない存在だった。
しかし。
奪略文明の侵攻の影響、それに加えて属性の近い文明。この要素が同調した結果、二つの次元が一つの次元に収束した。
二つの文明はお互いの境遇を理解して協力関係を結ぶ。
だからといって、状況がすぐさま劇的に改善されることはなかった。二つの文明は領土と安息を取り戻すための対抗手段の研究と打開策の模索を進めた。
そこでルケとフェルベは出会った。
「私達、地味なスキル持ち同士だね!」
「地味って言うな。虚しくなる。ああ、俺はスキルの有名な学術書に特筆されるようなすごいスキルが欲しいわ」
◇◆◇
奪略文明に対抗する二つの手段が二つの文明の研究者達によって開発された。
一つ目は、別次元から侵攻する奪略文明のゲートを遮断して侵攻の手を抑える技術。二つ目は、奪略文明の行動を一時的に止めるいわゆるスタンの技術。
二つの文明は各々この技術を自らが行使できるスキルとして取り込んだ。
これによって、奪略文明の侵攻は勢いを失った。このまま対抗手段の開発が進めば奪略文明を封殺するのも夢ではないかと思われた。
これらが領土奪還のはしりになる。
それで徐々に勢いを取り戻した二つの文明は次々と対抗手段を開発して、奪略文明を圧倒していった。
それに誰もが希望を見出していた。
◇◆◇
二つの文明の領土の奪還や対抗策の開発が進むたびに、それらの文明の民が少しずつ減っているという奇妙な現象に誰も気づかないままに。
◇◆◇
二つの文明の中心都市の奪還作戦が立てられた。
そしてその現地。奪略文明と二つの文明が対峙していた。
大きな損害が出ると思われ各々覚悟した。緊張の表情がうかがえた。
二つの文明をまとめるリーダーが号令をかける。
「攻撃せよ!」
強張った空気が弾けた。
二つの文明と奪略文明が構えてスキルの攻撃が飛び交うように思えた。
ドクン。
その場所に大きな鼓動が鳴った。その瞬間、二つの文明の戦闘員が動かなくなった。
これはどういうことだ? 誰かが睡眠系のスキルを大規模に使ったのか? あるいは時間停止系のスキルを使ったのか? 理由は分からないが妙だ。俺とフェルベとリーダーと奪略文明達だけが動けている。
奪略文明の戦闘員達の後衛から胡散臭そうな中年らしき男が前に出て
こちらのリーダーに声をかけてきた。
「手筈通りにいきましたねぇ……その二人ですかぁ?」
「ああ」
リーダーが答えた。
何が起こっている? こんなことは聞いていない。作戦外の事象だ。
「最後の慈悲だ。ルケとフェルベ。教えてやる。私達の上層部と奪略文明の上層部は取引をした。それは、彼らに研究素体を提供することを条件に、私達へ技術や資源の提供そして侵攻の一時的緩和などをしてもらう、という取引だ」
フェルベが嘆く。
「そんな……?」
「私達はとうの昔に、奪略文明に敗退していた、ということだ。現在は彼らにほとんど生殺与奪の権利を握られいる。記憶や感情なども関与されて従順になるように操作されている。そこで君達が気づいていないようなので言っておくが奪略文明に私達が研究素体を提供することで私達の人口が減っているのにそれに気づかないように仕向けられている。分かったか? いわば私達は彼らの家畜に等しい。彼らの気分次第で私達は滅亡する。今は泳がされ遊ばされているだけだ。ただ彼らの要求に答えれば私達の一部の民を生きながらえさせてもらえる。全ては一時しのぎのためさ」
俺は問う。
「その研究素体というのが俺とフェルベなんだな?」
「ああ」
「リーダー。あんたは馬鹿げてやがる。自分達が少しでも生きるために誰かを生贄に提供し続けるなんて。なんとかならなかったのか? 何のための俺達のテクノロジーだよ」
「ああ。なんともならないよ。奪略文明の方がずっと進歩している」
「そのへんでよろしいですぁ? 無闇に素体を破損させたくありませんから、その研究素体には私の凍結のスキルをかけていないのですよ。うだうだ話して逃げる隙などを与えないでくださいね」
「悪い。たとえ君達のような無能が生きていても私達には何も貢献しない。君達、私のために死んでくれ。」
「断る。そしてお前らはまさに馬鹿だ」
◇◆◇
奪略文明の中年の男が顔をしかめた。
「何ィ?」
「フェルベ! 俺とスキルを共鳴させるんだ!」
「ッえ、なになに! どういうこと?」
「良いから!! 俺の読みが正しければッ」
俺の前に巨大なエネルギーが集まる。
「行っけー! フェルベ!」
「えっ、えぇー!?」
巨大な雷が落ちた。
そこには既に俺とフェルベの姿はなかった。
◇◆◇
「ぶっつけ本番のアドリブでも何とかなるもんだな。スキルの学術本を読んだ成果がでたぜ」
「逃げられたのは良いけどこれからどうする?」
「というかここどこだ?」
「えぇ……ルケ知らないの……?」
「次元と座標を指定する暇なんてなかったからな!」
「自慢げに言わないでよ!」
結局、何をしてどうなったのか? なんてことはない。俺のバフスキルを最大限に高めそれをフェルベのシュートのスキルに共鳴した。彼女のスキルのポテンシャルを引き出すように特別に調整したバフスキルを合わせて発動した。結果、巨大な力をもってどこか遠くへ移動(発射)させた。
単なる長距離移動? ではない。 これには誤算があった感じがする。バフの調整がまだ甘かった影響か、別の次元に移動したような気がする。いや、これはただの直観なんだが。想定したのは先ほどの二つの文明と奪略文明がひしめき合うが一方誰にも気づかれていない局所的な場所に行くことだった。わざわざ全く馴染みがない場所にいくのはやや抵抗があったから。まぁ、結局。奪略文明から大きく逃げられたのなら結果オーライだ。もっともここが彼らの領土ではないとまだ言い切れないが。
「なんにせよ情報収集しないと始まらんなぁ~」
「始まらんなぁ~ ってここ何もない草原だよ?」
ひたすら草原だった。
「いや。よく見て。向こうに何かいる? 人だ! 彼に聞いてみよう!」
「運が良いんだか悪いんだか……ああ。言葉が通じる人なら良いなぁ」
こうしてその猟師に話を聞く。言葉は通じた。特にどこかの文明に征服されているような感じはない平和な世界のような印象を得た。
「それにしてもすごいですねぇ。身体二つだけでこの場所……にたどり着くなんて。さぞ優れたお力を持っているとお見受けします。それでは二人にご武運を!」
ずっと草原にいるわけにもいかないので彼の案内に従い人里まで移動した。それにしてもこの猟師は何を目当てにここまで来ているのだろう? こんな何もなさそうなところに獲物がいるのだろうか? やや疑問だった。
そして。
「ねぇ。ルケ。何で占いなの?」
「こういう時は占いと相場が決まっているんだよ」
「見えました。これを見なされ」
占い師に差し出された水晶をのぞくと、以前まで俺達がいた世界らしき場所が奪略文明に壊滅されたような映像が見えた。
「おそらくあなた方のいた世界は……」
「奪略文明に滅亡させられた、か」
「私達の故郷がなくなっちゃったんだ……」
「……見えました。どうぞ」
次に映し出されたのは、俺とフェルベが仲良くしていて……
「えぇー これどういうこと!! 何がこれから起きるの!?」
「楽しみだなぁ」
俺達はどうやら栄光と幸せを掴み取るらしかった。
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