5 少女同伴
「やっぱりここにいたか」
「あっ……☆」
初めて目覚めた部屋。その隅でこの“バカ少女”は体育座りをしていた。
「お前、一晩中呼んでたんだって?」
「うん☆ 途中で疲れて寝ちゃったんだけど……☆」
「バカだな。さっさと諦めればいいだろ」
「うん……☆ でも、嫌われたままなの、イヤだったから☆ 呼んでたら開けてくれるかなぁって☆」
心なしか元気のなさそうな声。涙を流す機能があるのか不明だが、よく見れば目元も赤いような気がする。
チクリ、と罪悪感が胸を刺した。相手が機械であっても、人型というだけで後味が悪くなるのはなぜだろうか。
臍を固め、詫びをいれることにした。こういうことは、機会を逃すと徒に先延ばしになってしまう。
「あ~えっとな。その、悪かった。昨日は俺も言い過ぎた。疲れてて気が立ってたんだ。お前がその……起きたばっかで不安なところに、キツく当たっちまった」
「ナルミン……☆」
「さっきナオミと話してな。お前、とりあえずは俺の部屋に置くことにしたから」
「えっ☆ ほんと☆」
「ただし、だ。夜は静かにしていろ。俺だけならまだしも、他の連中の安眠を妨害するな」
「わかった☆ つまり、ナルミンだけのオ・ン・ナになれってことでしょ☆」
「……えーっと、粗大ゴミはBブロックの外だったな」
「うそうそ☆ 捨てないでぇ☆」
「まったく……」
こいつを設計した人間の神経を疑う。こんなものに俺たちの命運を託さなけりゃならないとは……。
「ねえ、ナルミン☆」
「だからナルミンは……いや、もういい。なんだ?」
呼称を改めさせようかと思ったが、面倒なのでやめた。
「今日はどうするのぉ☆ もし暇人さんなら、ここ、案内してほしいなぁ☆」
「ああ……そうだな。わかった」
「やったぁ☆」
曲がりにも何にも、こいつとは付き合っていかなけりゃならない。先に一通りのことは教えてやったほうが都合がいいだろう。
「問題ないとは思うが、一応ナオミに聞きに行く。お前も来い」
こいつには泣かせた負い目もある。そのくらいはやってやろうと思った。
「ナルミンと☆ で~と☆ るるんらら~☆」
「そうだな。じゃあスクラップ置き場に連れてってやろうな」
「あ~ん☆」
まったく……先が思いやられる……。