第八話
〜〜〜〜〜ピピピピピピッ
ーーカチャ、俺は鳴っていたアラームを起きて止めると、しばらくの間ボーッと知っていた。
そうか、俺は今西園寺さんの家にいるのか。親父に売られて昨日から西園寺さんの家で雇われる事になったんだよな。
時計を見てみると現在時刻は6時15分であった。
西園寺さんの起きる時間は6時30分であるが、雇われた俺が寝坊などする訳にはいかないので早く起きる事にしたのだ。
「ふあぁ〜、今日から夏休みまでの間西園寺さんの付き人か…」
俺は大きなあくびをしながら今日からの事を考えていた。
しかし、付き人といってもクラスが同じ訳ではないもんな。ずっと一緒にいるわけではないか。
しかし、西園寺さんと暮らすなんて買われた立場とは言え、嬉しいとしか言えないよな。実際買われたい学校の奴は多そうだもんな。
「っよし!起きるか!!」
俺はそう言って立ち上がり、カーテンを開けた。
カーテンを開けると眩しいくらいの光が立ちこんできた。
俺は眩しくて顔を手で覆ってしまった。
「……眩しいな。でも、今日は晴れか。」
季節は7月の中旬で一学期最後の一週間。
「今日も一日暑そうだな。」
そんな事を言っていると時刻は6時30分になっており、遠くの部屋でアラームが鳴っているのが微かに聞こえた。
「西園寺さんも起きたのか。それじゃあ俺も学校の支度を始めるか。」
昨日の夜支度してから寝ようと思っていたけど、結局すぐに寝落ちしてしまったからな。
とりあえず制服を着用し、カバンに今日ある授業の教科書などを入れていく。朝からこう言う作業はめんどくさいのだが、まあ、仕方がない。
「よし、とりあえず準備はこんなもんで良いかな。それじゃ、カバンを持って下に行きますか。」
俺は荷物を持つと一階にあるリビングに向かった。
「おはようございます。」
一階で先に働いていた執事さんやメイドさん達に向かって挨拶をした。すると、一人のメイドさんがこちらにやってきた。
「天童様、おはようございます。朝食の支度ができておりますので、あちらに座ってお待ちください。花蓮様、玲奈様達が集まりましたら朝食としましょう。」
「分かりました。」
俺はそう言うと席に座った。
女性達は朝に時間がかかるって言うから朝はみんな早起きなのかな?
俺は普段朝ごはんも食べないから遅起きだしな。そう考えると朝ご飯なんて小学生以来かもしれないな。
当時、まだ真っ当だった親父は朝から働くことが多かったから一緒に朝ごはんをよく食べていた。
耀介!朝ごはんは一日の中で一番大切な時間だからな!朝ごはんを食べると一日の動きが変わってくるぞ!
「ーー親父はよくそう言ってたな。」
まあ、その親父に売られたんですけど。
そんな昔の事を思い出していると階段を降りてくる音が聞こえてきた。
「天童君、おはようございます。」
「耀君、おはよう〜」
どうやら二人一緒に降りてきたようだ。
「あぁ、二人ともおはよう。」
そう答えるが、西園寺さんは意外そうな顔をしていた。
「以外ですわ。天童君はいつも寝坊していると思っていたので、起こしに行くまで起きないと思っていましたのに…私より早く下で待っているなんて!」
「そんな驚く事じゃないですよ。何時もなら目覚ましを止めて二度寝しますけど、流石に今日からは寝坊する訳にはいかないんで。」
自分もやればできます。と言わんばかりに俺は誇らしそうに笑って答えた。
「別に誇れる程の事ではないと思いますわよ?まあ、とりあえず揃いましたから、朝食にしましょう。さぁ玲奈も席について!」
俺からしたら誇れる事なんだけどな…
そして、眠そうにリビングの入り口でふらついていた玲奈を席へと誘導する。
「それじゃあ、頂きましょうか。」
「はい、頂きます。」
俺と玲奈ちゃんは合わせて言った。
朝食はトーストされたパンとスクランブルエッグ、そしてウインナーにサラダで構成されていた。
西園寺家の朝食は洋食なんだな…俺も実は朝はパン派だからありがたい。なんか朝はご飯食べれないんだよなぁ。
食事の間は無言が続いた。
「ふぅ〜ごちそうさまでした。」
久しぶりの朝食だったけど案外食べれるもんだな。とりあえずみんなが食べ終わるまで待つか。
そして、みんながそれぞれ食べ終わると西園寺さんが喋り始めた。
「ごちそうさまでしたわ。さて、天童君。」
「はい。」
「今日はお昼で学校が終わりますので、午後はお家に一度帰ってから買い物など行きませんか?夏休み前に用意しときたいものがありまして。」
「そんな事でしたら全然オッケーですよ!着替えてからの集合って感じですかね?」
「そんな感じでお願いします。」
そんな話をしていると時刻は7時10分になっていた。
「そろそろ出発の時間ですわね。天童君、私についてきてください。」
「分かりました。」
西園寺さんは玄関に向かったので俺は後ろからそれについていく。
俺は靴に履き替え、玄関を出た。
「行ってきます。」
西園寺さんと二人でそう言うと車へ向かった。
庭を観てみるとポンちゃんが一人で遊んでいるのが見えた。最初は怖かったけどやっぱ愛嬌あって可愛いな。
俺はそんな事を考えながら車の前へと向かった。
「さぁ、乗ってください。早くしないと遅くなっちゃいますよ?」
先に乗った西園寺さんが平然と乗車を促してくる。
「は、はい。失礼します…」
学校に向かう車もリムジンであった。西園寺さんは普通だと思ってるけど、乗り込むってだけで朝から緊張するわ。
耀介が乗り込むとドアは自動で閉まり、車は発進した。
「学校までお願いしますわ。」
「かしこまりました。」
西園寺さんがそう言うと執事がそう答えた。