第九話
ーー執事か……カッコいい職業だとは思うけど、俺もあんな畏まった雰囲気で西園寺さんと過ごさなきゃならないと考えると、少し勿体なく感じる。
せっかく距離が縮まるきっかけが出来たと言うのに、こんな形で距離が遠くなってしまうのは、ちょっと残念に思ってしまう。
「学校までは15分ほどで着きますので、それまでは寝ていても構いませんわ。できればお話し相手になってもらえると嬉しいですけど。」
「せっかくの機会ですし、お話ししましょう。これから近場で過ごす仲同士、お互いの事を知らなくては始まらないですから。」
寝ていいんだったら寝たいところだったけど、普通にお話ししたいって言ってるのに断って寝れるわけがないよな。まあ、西園寺さんとの会話は新鮮味がとてもあって面白いのでこちらとしても眠気覚しになって丁度いい。
「ありがとうございます、天童君。では、今日のお昼はどうしますか?学校はお昼で終わりですからその後帰って家でいただく感じて大丈夫でしょうか?」
西園寺家のメイドさん達が作るご飯もとても美味しいが、今回は遠慮させて貰うとしよう。せっかくのお昼終わりだからな。
「でしたら、どこかで外出しませんか?帰ったら出かける用事もありますから、行きたい場所の近くでお店を見つけてそこで食べると言うのはどうでしょうか?メイドさん達には申し訳ないのですが…」
「いいですわね!でしたらそうしましょう!!そっちの方が面白そうですし、二人で外食というのにも興味ありますわ。」
西園寺さんは嬉しそうに笑って提案を呑んでくれた。
「家で着替えてからではなく制服のまま行きますか。その方が長く居ることができますから。」
「分かりましたわ!でしたら放課後になりましたら私の教室に来てください。一緒に向かうとしましょう。」
「分かりました。最速で向かうとします。」
「廊下は走らないようにお願いしますね?」
西園寺さんは笑いながらツッコんでくれた。
そんな話をしていると学校に着いたようで車が停まった。
「着きました、お嬢様。」
「ありがとう、それじゃ行ってくるわ。」
「ありがとうございました。……行ってきます。」
執事の人に行ってきますって言うのなんか恥ずかしいな。
俺は車を降りて先に出た西園寺とともに校舎に向かう。
今日から二人並んでの登校になるからな、早めに慣れないとな、この視線に。
「……?どうしましたの?天童君。顔がガチガチに固まってるようですわ。」
朝早くで生徒の数が少ないのにこの注目度だからな。とても緊張するに決まってる。
「い、いや皆んなに見られる事に慣れてなくて実は今とても緊張してます…」
周りを見渡してみると、同級生の奴らはとんでもなく驚いている様な表情でこちらを見ている。更には他の学年の奴らまでこっちを見てる人がいる状況である。
見せ物だと勘違いされてないか?
だが、西園寺さんは全く動じていなかった。いつも通りの風格で俺の隣を歩いていた。
その姿は、ファンに囲まれる中を歩いているスターの様であった。
「ふふっ、天童さんてそういう所可愛いですよね。」
か、可愛い?そんな事を生まれて初めて異性から言われたぞ、でも初めてならカッコいいって言われたかったかもしれん。
「……可愛いってなんですか、西園寺さんがカッコ良すぎるだけかも知れませんよ。」
俺は恥じらいに笑いを混ぜながらそう答えた。」
話しながら歩いていると校舎に着いた。それぞれ別の下駄箱から上履きを取り、履き替えるた。
俺は履き替え終わると西園寺さんの元へ向かった。
「西園寺さんのクラスは2-Aでしたよね?」
「そうですわ。天童君はとは2つ隣のクラスになりますわね。」
俺はが2-Cなので二つ隣なのだ。西園寺さんのAクラスは進学特進クラスと言われていて、頭の良い人たちだけでなく、芸能人の人たちもあそこのクラスに選ばれる。この学校はAからEクラスまであるが、B〜からEクラスまでは普通のクラスだ。Aクラスだけが特別なのである。
「Aクラスまで送ります。帰りも寄る事になりますから席を確認しておこうと思いまして。」
「では、次はクラスまで一緒にいきましょうか。」
「は、はい。」
校舎の中を二人で歩くとなると当然外よりも目立つ。そして声も聞こえてくる。
「お、おい西園寺さんと天童が一緒に登校してるぞ、」
「マジかよ、え?アイツら付き合ってんの??」
「普通に許せん…後で締める。」
そんな俺たちの事を言ってるであろう会話が聞こえてくる。
こ、怖え!分かってたけどやっぱ同級生からの目は痛いよなぁ。西園寺さんとの放課後まで命があればいいけど。
クラスまではお互いに無言であった。
西園寺さんもこんな近くで言われると思うところがあったのかな?
「ありがとうございました、天童君。放課後待ってますわ。」
「了解です、西園寺さんの方は食べたいもの考えておいてくれると嬉しいです!」
俺はそう伝えるもAクラスを出て自分のクラスであるCクラスに向かった。
いつも通りに席に着き、本を読もうとした。が、そうはいかなかった。
「天童おぉおおおおお!!!」
奴は入ってきて突然俺の胸ぐらを掴んできた。




