真の聖女
ある日。王宮にサリーを尋ねて来る聖女が二人いた。
「我は聖女の中の聖女、聖なる女王、聖女王!」
「ゴホゴホ、私は柔の聖女、トルーサよ」
「我が妹、サリーに会いに来た!」
「ゴホ、サリーちゃんに会いに来たわ」
私、ナターシャがこの国の筆頭聖女、しかし、彼女らは私を見ない・・・
そう、[真の聖女]を決める戦いが始まるのね。
私に出来ることは陛下に進言し、この人智を越えた戦いを邪魔しないこと。
二人を、王宮の舞踏会場に案内した。
え、殿下も来るの?
「ナターシャ、私は次期国王としてこの戦いを見守らなければならない。戦いの余波で君が傷ついたら、私は・・」
「ええ、筆頭聖女として、心配して下さっているのですね。わかりました。私も簡易な結界ははれます。共にサリー様の戦いを見守りましょう」
・・・・
「待ってたよ!サリー待ちくたびれちゃった!ここで、ぬっ殺し合う?」
「ゴホゴホ、私は病弱のせっていだから、ここで見ておくわ。戦わなくても、もうすぐ死ぬわ」
「トルーサよ。我はお前こそ最大のライバルだったと思ったぞ」
「うん。あたしもトルーサ姉様が一番だと思ったよ」
三人はトルーサを中心にして抱き合った。
「ねえ、聖女王、約束だよ。どちらが勝っても国を乗っ取って戦争を起こさない。サリーの約束!」
「ゴホゴホ、ええ、そうよ。勝った方は、真の聖女として民に尽くすのよ」
「ふん。我の勝ちは決まっておるが、約束しようぞ!我が勝ったらドラゴンに聖女道をひろめてやる!」
二人の聖女の戦いが始まった。
もしかして、サリー嬢は、国同士の争いを個人にしようと頑張っていたのかしら。
何て、覚悟。
私は聖女の端くれとして、サリーさんの無事を祈った。
「我は[聖女王]技は不要!聖魔法をまとい殴るのみ!」
「聖女聖光破断!」
「ふん。聖女気合い!甘いわ、聖女パンチ!」
しばらく一進一退の攻防が続いたの。5分ほど、でも、永遠に続くと思われるほど長かったの、でも、徐々に、サリー様は押され始めて・・
・・・・・・
「聖女陽気な貴婦人のダンス!」
「う、グハ」
「甘いわ!」
サリーさんの奥義、[陽気な貴婦人のダンス]は破られ、聖女王に拳で腹をつかれ、そのまま天上までぶっ飛ばされたの。
天上にめり込んでいるわ!
「はあ、はあ、サリーこれまでかも、テヘ、この後は、ドラゴンをぬっ殺しに行くんだよね。どちらが勝っても人は襲わない・・・約束・・だったね・・ねえ」
「ア~ハハハハ、冥途の土産に教えてやる。甘いわー約束は、戦わせるための方便よ。お前は我が大陸統一すると言うと、逃げて戦わないだろう。この国の王宮でお前に勝てば、この国の殿下が我に惚れるフラグが立つ。我は、聖女界だけではなく、この国を乗っ取り大陸を統一し、イケメンハーレムを作る。まずはこの国の殿下が第一号の男娼だな」
「ヒィ、ヤダよ。あれ、何か、聖女王、意外と可愛い~国の実権を渡したくなってきた」
「それで良い。殿下よ。ここで我とまぐわおうぞ。そして国印を持って来るのだぞ!」
「うん」
「「何!」」
「聖女王ルートは、聖女王が貴公子の前で戦って勝てばホれる[せってい]だ。これで大陸を統一し、我を[真の聖女]として呼ばせてやるわ」
・・・
そんな。もしかして、殿下が付いて来たのは、げーむの強制力ということなの?
私は結界から出ようとする殿下を必死に押さえた。
「しっかりなさいませ!」
パンと頬を弾いた。
あら、私の右手の掌が青く光っている。
「あれ、私はどうしたのだ?何か?夢遊病のような感じになっていた」
「何?もしかして、お前が奥義聖女フラグ潰しの技を使っただと、我の真の聖女道を邪魔する奴は倒してくれよう」
聖女王が私に向かって来たの。私の結界ではすぐに破られるわ。
その時
「ゴホゴホ、させないわ!」
柔らの聖女トルーサ様が立ち上がってくれた。
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