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◆ モアナの過去〜 一生に一度の願い


 モアナは幼い頃から実年齢より、かなり幼く見られていた。

 母は、そんなモアナの歳をいつも訂正する事に忙しかった。


 もうすぐ10歳を迎えようとしているのに…… 未だに6歳にも満たないのかと、世間から驚かれる始末。


 そんな事がモアナを時折、不安にさせていた……。


 そんな不安がーー ある日を境に、霧散する事になったのだ。

 あの不安な日々はなんだったのかと、モアナは考えを改めた。


 幼いながらも、モアナはどこか冷めていたことが功を奏したようだった。 聡いモアナはある日、ふと気がついてしまったのだ。


 まあ……… もしかして…… 私の幼い見た目に、皆さまは騙されているのではないかしら? 


 武器になる?

 ふふふ…… この見た目に油断して、まさか…… 幼子の前だからと、心の内を隠しもしないなんて。

 でもそうね……… 寧ろ、こんな使える特権を利用しなくちゃ、勿体無ですわね。


 気づいてしまってからのモアナは、良い意味であざとくなった。

 人々の期待する、モアナを演じるのだ。


 ある人にとっては、

「 あの幼気な瞳に見つめられると、何でも許してしまうわ 」 

 あざと可愛いと言われながらも、続けて話す会話で家門の噂話をちゃっかり聞いたり


 またある人にとっては

「 どうだ、あの子の柔らかな微笑みは!私はそれだけで癒されるのだ 」

 あざと美しいと言われながらも、紳士の弱みをしっかり握ったり


 そして

 ………

 巨乳ロリと言われたり

 言われなかったり………


 そう、ここで、問題が起きてしまったのだ。 モアナが思春期に差し掛かった、14歳のある日………


「い、痛い……」

 寝ても起きても、胸が痛くて痛くて…苦痛な日々を過ごすことになった。

 人より小さく幼い身体だった筈が、むくむくと胸だけ大きく成長を遂げようと、していた。


 モアナは、予想外に大きく育った胸が存外に恥ずかしかった。


( 背が伸びないのに……胸ばかり大きくなるなんて…… )


 モアナの理想とし、目指してきた…幼い容姿なのに、頭の中はキレッキレの〈処理能力が高い女路線〉が、早くも挫折の憂き目に遭いそうだった。


 最初…モアナは、大きな胸を隠す方向で動いた。 ダボダボした、ドレスを身に着け始めたのだ。

 それでも目立つ胸が腹ただしくなり、柔らかな絹のショールを何枚も羽織り隠すのだが…… 残念ながら、その姿は余計に太って見えて、整った幼い顔だけが浮いたような… アンバランス感を醸し出していた。


 モアナの父は、誇らしかったはずの娘が小デブに育った事がショックだったようで、目をかけてやる事もしなくなってしまった。


 残酷に2年の時だけが過ぎる。

 あれから多少………申し訳程度には背も伸びたモアナだったが、巨乳の小デブモアナを『王国三代美女』と表される事を面白く思っていなかった貴族の子女達は、これ見よがしに面白おかしく囃し立てた。



「まあ、モアナ様ともあろう方が、こんなに可愛くブクブクにおなりましになるなんて…ホホホホ…」


「昔は妖精のように美しかったのに、今では見る影もないですね………」


「まさかこんなに太って醜くなんて、残念ですわ……ホホホ」


 モアナは令嬢たちの顔と爵位を即座に覚える。


 思った以上の口撃に、少しイラッとしたが嫌な事は重なるもので……。そんな時に一度目の王太子妃候補の話が舞い込んだのだった。



 王城で試験が行われてすんなりと通ってしまう。 巨乳が馬鹿だなんて噂はモアナにはあり得ない。 全てに満点パーフェクトを収めてしまったのだから。

 


「 未来の王太子妃ですか? そう……面倒臭そうなこと…… 」


 モアナはアンドリュー王太子の顔を思い浮かべた。

 だが浮かぶのは、まさに〈顔だけ〉が歩いていた舞踏会の姿……。


 ・・・・・・・・・

 

 うん、駄目だわ。

 私には、あんな大きな子守りは出来ないわね。

 それでもこの王国で指名されれば、断ることなど到底できない。


(ま、なるようになるのでしょう?)


 いよいよ神殿にて…書面での婚約が整い、モアナは大きな応接間で王太子アンドリューを待っていた。



 だが、王太子アンドリューは、モアナを見た途端に悲鳴にも似た雄叫びをあげた。


「 嫌だ! 美しいと言うから、期待していたのに! こんな『デブ』はゴメンだ! 破棄だ、破棄! 婚約破棄だ!」


 モアナは王太子の婚約者になり、最速で破棄された。


 あって1分かそこらで婚約破棄されたにも関わらず、モアナは静かに冷笑して席を辞したのである。

( やぱり足りないお人だったわ…… )



 私は邸宅に帰ると、一目散に母の所に向かった。


「お母さま、婚約破棄をされましたの。申し訳ございません」


 既に通達が母の手元に届いていたようで、ぐしゃりと握り締められていた。

 母は大きな一息を吐き

「モアナ、良かったではありませんか。外道な家畜より躾が出来ていない王太子など、余計にタチが悪いわ。そんな者に一生を捧げる難題から逃げ出せたのです」


「 ええ、そうですね。ところでお母さま、実は私…… 。一生に一度のお願いがございますの……… 」


 母は普段、決してしてこないモアナのお願い事を大いに喜んだ。

 常日頃から頑張る姿が誇らしかった娘が婚約破棄され、その理由も行為(破棄の仕方)も到底許す事など出来なかった……母の心の中では、既にアンドリューは100回くらい殺されているのだ。



「 モアナの頼み。母がすべからく叶えてあげましょう 」

 モアナはやっぱり母に頼んで良かったと、パッと抱きついた。


「お母さま、それでは………」




最後まで読んでいただきありがとうございました。

とても嬉しいです。

一人目の令嬢の婚約破棄のお話をチラッと書きました。

今日はあと2話投稿しますね。


これからもよろしくお願いします。

楽しく読んでいただけるように頑張ります。


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そしてこれからの励みになりますので

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