君に出会えてよかった。
「ナイスシュートッ!」
鮮やかな緑色の芝生が映える、サッカーグラウンドに一つの声が響いた。
それと同時に、スタンドから観戦している父母会と書かれたユニフォームを着ている大人からも歓声が巻き起こる。
FC神田、県大会決勝の試合で3−0とリードをしていた。
チームの要となっているのは、崎田勇人と永妻大河というU-12県代表にも選出されているFWの二人。
そして、笹野和樹という攻撃型MF。崎田、永妻と違い、彼はまだ小学5年生であるが、背番号10というサッカー選手にとって花形の背番号を背負っている。
サッカー大好きな小学生が目指す、全国大会。その挑戦権をかけて、彼等は戦っていた。
ここまで圧倒的な強さで勝ち上がった、FC神田は、この日も崎田の2得点と永妻の1得点でリードしている。はっきり言って、余裕だった。
ハーフタイム10分を挟んだ、後半の勝負。相手の攻撃を防ぎ、カウンターで得点するいつもの神田の攻撃が冴えた。
DFのロングパスに対応した、永妻。前線に走りこんでいた崎田にスルーパスを送り、落ち着いて崎田がゴールへ押し込んだ。
その後も着実に得点を重ねる、神田。終わってみれば7−0というスコア。決勝戦とは思えない大勝を飾り、全国への切符を手にした。
「勇人ッ、お前のお陰だよッ!」
スポーツドリンクを口にしていた笹野の背後から、崎田の声が聞こえる。
「でも、全国大会は俺抜きでしょう…………?」
その一言に、黙って崎田は頷いた。
夢の全国の舞台は既に掴んだ。だが、笹野には全国大会を放棄しなければいけない理由があった。
なぜなら、彼はサッカー選手ではないからである――