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7.お買い物 下着編

駅から歩き始めて数分…目的地であるショッピングモールまであとちょっと。少し気になってたんだけど、僕は駅から歩いて来て今まで、ずっと柚希ちゃんと手を繋いでいる。周りの人は僕たちの事を見て、どう思ってるんだろう。仲良し姉妹、みたいに見られてたりするのかな?…それはそれで悪い気はしないけどね。


 「そろそろだね。あ、そうだ。お店に着いたら、葵ちゃんは洋服屋さんに行く前にちょっと別のお店に寄るからね」


 「別のお店…?」


歩いてる途中、ゆの姉が言った。…今日の目的は、洋服を買う事だけじゃないのか。正直、早くドーナツが食べたいから、出来るだけ早くして欲しいけどね…。というか、別のお店って一体…


 「…ねぇ柚希ちゃん、ゆの姉が言ってる、別のお店ってなんだと思う?」僕は隣にいる柚希ちゃんに、小声で聞いてみた。


 「葵はまだ知らなくてもいいんじゃない?多分そっちの方が葵の反応が面白いし…じゃなくて…やっぱなんでもない!」

 

 「…どういうこと?」


…なんか怖いんですけど。興味本位で聞いたみたんだけど、なんか濁されたような。僕はまだ知ってはいけないの?そのお店について。…なんかもう、恐怖と不安しかない。


そんな会話を交わしながら、ショッピングモールの中へ入った。平日の昼間だけど、以外と人がいる。僕と柚希ちゃんは春休みなんだけどね。大体が女の人で、みんなお洒落。主婦っぽい人も入れば、ゆの姉見たいな若い人も歩いている。


 「じゃあ、柚希ちゃんはこのお店にいてね。」

 「おっけー! 葵に似合いそうな服でも探しとくよ〜」

 「またね、柚希ちゃん」


洋服屋さんの前に着いた辺りで、一旦僕と柚希ちゃんは別れる。ずっと繋いでた柚希ちゃんの手がなくなって、少し寂しい気分。それで…一体僕はなんのお店に向かうのだろうか…。


 「それじゃあ葵ちゃん、こっち着いてきて」


僕はゆの姉の後ろを歩く。…怖いようで気になるなぁ。しばらく歩いた辺りで、ゆの姉が足を止めた。


 「じゃあ、ここ入ろっか」


僕は目の前のお店を見て…思わず言葉を失った。



――僕の目の前には、色とりどりの下着が広がっている……それも女性用の物だった。


 「ゆ、ゆの姉…まじでこのお店入るの? ほんとに…?」

 「もちろん。今の葵ちゃんは女の子な訳だし、下着は買っておかないと…」


えっと…流石にこのお店に入るのはなんというか…抵抗がある。僕がこのお店に入ってしまったら、男子としての大切な何かを失ってしまうような…。そんな気がした。


 「えっと…ゆの姉、流石に僕がこのお店に入るのは色々まずいんじゃ…。ゆの姉1人で買いに行くっていうのはダメなの?」


 「大丈夫よ。今の葵ちゃんは誰がどう見ても女の子だから。それに、葵ちゃんが来てくれないと困るから…」


「えぇ…でも…」


…僕は少し立ち止まった。けど、僕がここでお店に入らずに立ち止まっているのは迷惑だし…。


僕は半ば諦めて、店内に1歩足を踏み入れた。…本当にこれで良かったのかな…。男子だった筈の僕が、女性用の下着に囲まれた空間にいると、どことなく罪悪感が湧いてくるような…。


店内に入り、少し辺りを見回した。やはり女性用の下着に囲まれている。でも、今は僕達以外にお客さんはいないみたいで少しだけ安心した。変に思われるかも知れないしね。


ゆの姉が向かったのは、店内に入りちょっと右側。様々な色のブラジャーが棚に掛けられている。


 「葵ちゃんはどれがいい?」

 「どれがいいって…派手なものじゃなければなんでも」


正直見ただけじゃ色ぐらいしか違いが分からない。どれがいいって言われても分からないよね。


 「とりあえず、どのサイズを選べばいいか分からないから、店員さんに測ってもらおっか」


 「は、測ってもらうの?」

 「うん。葵ちゃん、自分じゃ測れないでしょ?」

 「ま、まぁそうだけど…」


拒否する理由もないので、少し黙った後に僕は返事をした。…店員さんに測って貰うのかぁ…。ちょっと恥ずかしいけど、ここまで来たら羞恥心なんて捨てて乗り越えよう…。


 「すみませーん。この娘、測って貰えますか?」

 「あ、少々お待ち下さい」


ゆの姉が店員さんを呼んだ。…なんだか緊張するなぁ。


 「それじゃあ、こちらへどうぞー」


僕は店員さんに案内された通りに歩いた。たどり着いた場所は、試着室…のような所。多分、ここで測って貰えるんだと思う。そして僕は、店員さんにある事を聞いてみる。


 「あのぉ…やっぱり服脱いだ方が良いですか?着たまま測るって事は出来たりしますか?」


服を脱ぐのが結構恥ずかしかったので、ダメ元で聞いてみた。


 「今回は測るだけなので、服は着てもらっていても構いませんよー。」


 「ほんとですかっ…ありがとうございます!」


良かった…優しい店員さんで。なんて思っていると、店員さんはメジャーを持って僕の目の前まで来た。そして、僕の脇を突然触ってきたのだ。


 「ひゃあっ!ん…」


突然脇を触られて、思わず変な声が漏れてしまった…少し恥ずかしい…。そんな僕の反応を見て、店員さんは少し笑っていた。やっぱり優しくない店員さんだったのかも知れない。


 「ちょっと手を挙げてて下さいねー」


僕が手を横に伸ばすと、店員さんが僕の両脇に手を入れ、片手に持っていたメジャーを両腕で持ち、背中に当てた。そして、メジャーを回して僕の胸の真ん中辺りに回してきた。僕は今、背中と胸をメジャーで巻き付けられた状態になっている、という事だ。


店員さんはメジャーを確認して、紙に何かをメモした。次に、メジャーを少し下にずらした。そしてまた何かをメモする。


 「ええっと、バストはCの65ですね。もう測り終わったので、戻ってもらっても良いですよー」


あれ?もう終わったのか…1分程と、以外と短い時間で測れた。店員さんに戻っていいと言われたので、僕はゆの姉のいたブラジャー売り場に帰ってきた。


 「ゆの姉ー。帰ってきたよー」

 「あ、おかえり葵ちゃん。なんて言われた?」

 「えっと、バストはCの65…だって」


ゆの姉は近くのブラジャーを何個か手に取った。…そういえば、Cの65って多分、Cカップって意味だよね?大きいのか小さいのか、微妙な気がするような…。


 「じゃあ、あそこに試着室あるから、これ付けてみて」


そう言って、ゆの姉は手持っていたブラジャーを僕に手渡した。

ゆの姉が言っていた試着室は…ここかな。僕は試着室の中に入る。そして、カーテンを閉めて鍵をかける。試着室の中には、僕が頭から足まで全部写る大きな鏡があった。


ブラジャーを付けるために、とりあえずカーディガンのボタンを外して脱いだ。そして、白い服も脱ぐ。で、このブラジャー…どうやって付けるの?


 「ゆの姉〜。助けてー」


僕はゆの姉に助けを求めた。数分考えて見たけど、全く付け方が分からない。恥ずかしいから、あんまりこの手は使いたく無かったけど。


 「さては、ブラの付け方が分からないのね? 教えてあげるから、試着室の鍵開けてくれない?」


 「あ、うん。分かったよー」


ゆの姉には僕の姿が見えていないはず。それなのに、どうして僕の考えていることが分かったのだろうか。…それはどうでもいいけど。僕はゆの姉を入れる為にカーテンの鍵を開けた。


僕はゆの姉がカーテンを開けるのを見ていると、僕は恥ずかしくなったので胸元を少し隠した。にしても、試着室の中に2人もいると流石に狭いね。


 「じゃあ、まずはこの紐を肩にかける。そして、胸をカップの中に収まるように入れるの。それが出来たら、後ろのホックをかける。」


ゆの姉はそう言い、僕の体を少し前に倒した。次に、僕の肩に紐をかけて、ブラジャーの膨らんだ部分に僕の胸を入れた。そして、後ろにあるホックをかけた。


最後に、僕の胸の辺りを触って、ブラジャーがしっかり合うように調整をした。胸を触られてちょっと恥ずかしかったけど、何とかブラジャーを付ける事が出来た。


 「…なんというか、変な感覚。」

 「まぁ最初は慣れないかも知れないけど、時期に慣れてくるわよ」


僕はブラジャーの取り方も教わり、実際にブラジャーを取る。そして、服を着て、試着室から出た。


 「あ、そうだ。」


ゆの姉が何かを思い出したように歩き出した。僕はゆの姉についていく。ゆの姉が歩いて行った先は、ショーツ売り場だった。


 「じゃあ葵ちゃん、どれがいい?」ゆの姉がさっきと同じように聞いてきた。


 「えっと…これとか?」


僕は少し考えた後に、近くにあった小さなリボンの付いた白色のショーツを選んだ。ちなみに選んだ理由は…特になし。


 「なるほどねぇ。これなら、夏でも透けにくいと思うしいいんじゃない?」


ゆの姉からのOKも貰ったし、次の下着を選ぶ。こんな感じに、僕は合計4つの下着を選んだ。


 「じゃあ、お会計しとくから、先に洋服店さんに行っててもいいわよ」


 「え、ほんと?ありがと!」


…ようやく、下着選びも終わった。地味に恥ずかしかったなぁ。でも、ようやく柚希ちゃんと再会出来ると思うと嬉しくなる。



――この柚希ちゃんとの再会が、地味に苦しく、辛い時間になるとは思ってもいなかった…。

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