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誰も殺さない奇襲


 日が沈んだあと、アルザスの全軍を率いてキバはラセックス方面へと進んだ。夜の行軍は難しいが、慣れ親しんだ道であれば話は別だ。最短のルートで森を抜け平原にでる。


「見えたな」


 星空の中、上がる煙。ほのかな焚き火の光。森から1キロほどのところに野営しているラセックス軍を見つけた。

 おそらく夜の森に入るのは危険と判断して、その手前で休むことにしたのだろう。


 キバは後続の軍に森の中にとどまるように指示して様子を伺う。

 望遠鏡で覗き込むと、情報通り1000人の鉄鬼軍。それから後方に補給部隊にいる。


「軍師様、どうしますか」


 アルバートが小声で聞いてくる。


「ここから森に沿って回り込んで、森の側面に扇状に兵士を展開。合図で側面の補給部隊めがけて一斉に突撃、射程に入ったら魔法を打ち込んでください。兵士や城攻めの兵器はどうでもいいのでなるべく兵糧を狙ってください」


「承知しました」


「もちろん、鉄鬼軍が体制を整えて反撃が強まったら、ただちに引いてください」


 アルバートがその命令を全軍に伝える。

 敵の野営地を取り囲むようにした全軍の展開が完了する。


 そして、


「――突撃!」


 アルバートの声が轟き、アルザスの兵士たちが一斉にラセックスの野営地に飛びかかった。


 暗闇に、魔法の炎弾が次々に打ち上がる。

 爆発音ののち、悲鳴が上がる。


「敵襲だ!!」


 ラセックスの兵士の声が轟く。だが、その間もアルザスの魔法攻撃はやまない。兵糧に火がつき、大きな煙が上がる。


 だが、敵もさすがは精鋭部隊。数分ほどで隊列を組んで、キバたちを迎撃せんと構えた。


「退却だ!」

 

 それを見たキバは全軍に向かって叫ぶ。

 アルザスの兵たちは一斉に砲撃をやめて、森へと逃げ帰ってきた。

 敵は夜襲を受けて混乱している上、こちらはもともと逃げる算段だった。しかも地理に明るい。それゆえ、追っ手を躱すのは容易だった。


「……本当に、これで意味あるのか?」

「……敵はほとんど無傷だがなぁ」


 と、兵士の間からそんな声が聞こえてくる。

 確かに、主力のとは一切交戦していないので、兵力は全く削げていない。

 しかも、兵糧を焼いたとはいえ、その範囲はおそらく半分にも満たない。行軍を続けられなくなるほどのダメージは与えていないだろう。


 だが、これでいい。奇襲の目的は、敵の兵力を削ぐことではないのだから。


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