涙の真相、ドンデン返し 【33】
「左様で御座いましたか__」
翌日、マニの正体(?)を聞かされたカスモさんは、目を白黒させながら何度も頷いた。
「マニ殿が、あのアーケオプテリクス大公の__いやいや、知らぬ事とは言え、御無礼をば」
まあ、確かに、マニに対するカスモさん達の態度には、些か礼を失した部分も有りますよ。でも、仕方無いっしょ。元はと言えば身元を隠してノウノウと涼しい顔してたコイツが悪い。
「しかし、頼もしいですな」
カスモさんはいつもの、人の良さそうな愛想笑いでマニを見上げた。
「レジェナ王女様に加え、アーケオプテリクス大公のご子息までが__これで同志の士気も揚がり、御家再興にも益々励みが出ましょうぞ」
また、その話。
ま、いいや。
そのお陰でマニは歓迎される訳だし、わたしも食うには事欠かない。はっきり言って、食うや食わずの無銭旅行に音を上げてた所だし。こいつは何でも食えるし、断食も慣れてるからどっちでも良いんだろうけど。
「それじゃ__」
そして、お兄ちゃんは宿を後にする事にした。
「ホントに良いんですか?」
なに、ミアキス?
「折角、お兄様と再会を果たしたと言うのに__」
ああ、その話。
「あれね__」
事の顛末を話す訳にもいかず、決まりが悪くなったわたしは曖昧なゴマカシ笑いではぐらかした。
「いいんですか、ホントに?」
「いいの、いいの」
ミアキスは、不満そうだった。
「あんなに再会を楽しみにしてらしたお兄様と、もうお別れするのは__」
「いいの、再会は果たしたんだし」
もう、その話はいいよ。
「なんで?」
しつこいわね、アンタも。
「好きだったんでしょう、お兄様の事__」
「いや、それは」
だから、カンベンしてよ、もう。
「まあ、やっぱり、お兄ちゃんはお兄ちゃんだったって事かな__」
他に言いようも無いし。
「暫く会ってなかったから無性に会いたくなってただけで、顔見たら、もう、スッキリしちゃった」
「そうですか__」
何故か、はあー、と溜息をつくミアキス。
「やっぱり、そういう事なんですね」
なに?そう言う事って何よ?
「やっぱり、女は遠く離れている昔の男性よりも、今傍に居る男性の方が……」
何よ、ミアキス。
今、傍に……って、まさか?!
「仕方無いですよね、マニさんは素晴らしい男性ですもの」
ヤッパリ、そう来たか、オヌシ。
「ち、ち、ち、違うわよ、そう言う事じゃなくて__」
じゃ、どういうことなんですか、と言わんばかりの厳しい視線でわたしを捕らえるミアキスは何も言わずに、恋敵を見る顔をこれ見よがしに突き付けていた。