涙の真相、ドンデン返し 【32】
「そ、それで__」
ここは話を逸らさねばならない。
わたしは急いで別の話題を振った。
「お兄ちゃん、活動家って、どんな事してたの?」
「そうだなあ__」
わたしの考えてる事はみんなお見通しって感じの、優しい笑顔でお兄ちゃんは答えた。
「正直言って、あんまりカッコ良く無いよ」
お兄ちゃんはやや淋しげな顔を見せた。
「王家再興活動って言っても、実際はみんなその日の暮らしで精一杯なんだ。中にはそんな雲を掴むようなお伽話なんてさっさと諦めた方が良いとか、ひどいのになると生活の為に適当に調子を合わせているだけのも居る」
ヒッドイわねえ。わたしもアンマリ人の事言えないけどね。
「だけど、そんな人達を責める気にはなれないんだ。確かに王家を再び盛り立てるなんて全く見通しも立たないしね。現実に、家族を養わなくちゃならないし、元サウロロフス家臣て言う人脈で商売が成り立っている事も多いし」
カスモさんもその一人だよね。
「でも、やっぱり違うんだ。同じ毎日を送るにしても、目的が有るかどうかで日々の充実感が全然違ってくる。これって女の人には判らないかも知れないけど」
男の浪漫、て奴ですか。
「だから、レジェナ__」
お兄ちゃんが申し訳無さそうな顔でわたしを見た。
「もう暫く、王女様で居てくれないかな?」
そうだねえ。
そんなお話聞いちゃったら、強引に王女を辞める気にはなれなくなっちゃうし。
それに、わたしがこの御宿で賓客待遇でタダ飯に与かってるのも、王女様って肩書きの御威光の賜物だもんね。
もう少しタダ飯……いやいや、王女様を続けてみましょうか。
お兄ちゃんに、わたし達が実の兄妹だって聞かされた時には気が動転して、何も耳に入らなかったけど、よくよく考えてみればそんなに急いで結論出さなくても構わないんだよね。マニもそう言ってたし。
「判ったよ、お兄ちゃん」
わたしの返事に、お兄ちゃんは優しく頷いた。
「それでこそ、レジェナだ」
お兄ちゃんが、わたしの頭に掌を乗せて、そっと撫でてくれた。
昔みたいに。