涙の真相、ドンデン返し 【30】
「しかし、タルキア殿」
お兄ちゃんが口を挟んだ。
「やはり、その時にはレジェナが替え玉だと言う事は……」
判らないかも知れない、子供だから。
「そうですね、折角王女様がお生まれになったと思うと日ならずして怪しげな雲行きになった事は子供にも判りました。しかし、それが、王女様のご逝去だったとまでは__」
はあ。色々有ったんだねえ。
その頃は、お兄ちゃんはまだ二、三歳位だから、何にも憶えてない筈だよ。
「あの時の王女様が替え玉だったとは、つい今しがたになるまでは思いもよりませんでしたな」
はあー、そうか。
なんか、いっぺんに色々有ったんでどっと疲れたよ。
「マニ__」
わたしは、ちょっと情け無い思いで言った。
「わたし、贋者の王女様だし……」
その時、マニはニッコリ微笑んで答えた。
「申し上げた筈ですよ。わたくしは、レジェナ様の従者だと」
「__」
「それに、わたくしは御亡くなりあそばした王女様とはお会いした事は御座いません。わたくしにとって、あの時御抱き致しましたレジェナ様が紛う事無き本物のレジェナ様です」
それ、言わないでよお。
「それで」
お兄ちゃんがマニ、否、タルキアに言った。
「タルキア殿、あなた様も王家の復興に__」
またその話?
やめてよ、もう。
「そうですね」
マニが頷いた。
「出来れば俗世とは縁を切って勝手気ままな旅暮らしとしゃれ込みたい所ですが、レジェナ様お一人に重責を押し付けて、わたくし一人が気楽な風来坊を決め込む訳にも参りませぬ故」
わたしは、眉を顰めてマニを見返した。
わたしに重責なんて__
「レジェナ様」
な、なによ。
「そうそう、御結論をお急ぎあそばすな__」
「__」
「確かに王女としてマルディール王家再興に関わる事は御辛いかも知れません」
そうよ。
「しかし、兄君様の言い分もお聞きになって差し上げて下さいまし」
何よ。
「あんた、どっちの味方なのよ」
「レジェナ__」
思わず言ってしまったわたしに、お兄ちゃんが嗜めるように言った。
「わたくしは、いつでもレジェナ様の御味方に御座いますよ」
そう、心休まる笑顔で言わないでよ。
「レジェナ様のお気持ちも判ります。しかし、兄君の言われる事にも理は有ります」
「そんな……」
わたしは、すねた顔でマニを見上げた。
「今すぐに結論を出さずとも、落ち着いてからゆっくりとこれからの身の振り方を考えても遅くは無いのでは?」
なによ、そんな風に言われると、一言も言い返せないじゃない。
そうそう、理路整然と説得力のある事言わないでよね、全く。