涙の真相、ドンデン返し 【24】
「僕はね、レジェナ。活動家の端くれとして王家の遺臣達と交流し、彼らの情熱を目の当たりにしてきた」
何、また、わたしに関係無い熱血系の話?
「みんな、苦しい日々に耐えて、周りの目を憚ってひたすら御家再興の為に歯を食い縛ってきたんだ」
もういいよ。そんな話、聞きたくない。
「兄君様__」
顔を歪めんばかりに歯噛みするわたしとお兄ちゃんの間に、マニが口を挟んだ。
わたしは救われたような、お兄ちゃんはまたかという顔で、マニを見返した。
「あなたには関係無い話だ」
「お兄ちゃん__」
わたしは、一瞬お兄ちゃんが憎かった。
「確かに兄君様のお言葉もご尤もで御座います。しかし、今はレジェナ様のお気持ちを察して頂きとう存じますが」
「僕ら兄妹の問題に、口を出さないでくれ!」
「お兄ちゃん!」
マニは困ったような微笑を浮べてそこに立っていた。
「それに、これはサウロロフス王家の問題でも有るんだ。部外者は引っ込んでてくれ!」
「お兄ちゃん__」
「レジェナは黙ってろ」
なに、それ?
黙ってろ?
これってわたしの問題でしょうに。
もう我慢できない。
完全に頭に来て何かを叫び出そうとしたその時だった。
「確かに、兄妹の問題に口を挟む筋合ではありませんが__」
マニの口元に浮かんだ微笑は、いつもの穏やかなものとは違う、何かを含んだような笑いだった。否、穏やかだが、普段のそれはもっと透徹した、俗世とは関りを断ち切ったような笑顔だった筈だ。それが、今マニの顔に浮かぶ微笑は、明らかにどこかが違う、そう、言ってみれば妙に悪戯っぽい、ある意味で言えば意地の悪いほどの余裕がうかがえる、この男らしからぬ笑顔だった。
その、迫力という訳ではないが、持って回った様に妙なゆとりにわたしばかりかお兄ちゃんまでが一歩引いたように口を閉ざしたのだった。
「事がサウロロフス王朝にまつわる話であれば、わたくしにも一枚噛む資格は__」
と言いつつ、マニは懐から豪勢な拵えの短剣を取り出した。わたしも何度か目にした事のある、異文化風ではなく、わたしたちの文化圏のデザインの物であった。わたしが、何であんたがそんな物持ってンの、と聞いた時には何気に、
「頂き物です」
何て答えた奴じゃん。
それがどうしたってのよ。
だが、その短剣を目にしたお兄ちゃんの顔色が俄かに変ったのだ。
「こ、これは__?」
何、一体どうしたのよ。