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涙の真相、ドンデン返し 【20】

「左様で御座いましたか__」


わたしの隣で地べたに腰を降ろしたマニが言った。

傷心のわたしは、事の一切をマニに打ち明けた。



「マニ……」

わたしの声は、自分でわかるほど情け無い、意気消沈した響きだった。


「これからどうすればいいんだろ、わたし……」

「それは、これからゆっくりとお考えになればよろしいでしょう」


振り向くと、マニは包容力のある笑顔でわたしを見ていた。もしかしたら、否、恐らくいつものあの余裕綽々の微笑なんだろうが、時が時だけに、そのニヤケ面は、わたしの心に染み渡って行くように感じられた。なんて大らかな自然体なんだろう。


わたしは、何となく気恥ずかしくなって俯いてしまった。



さっき、マニに抱かれた時__


妙に懐かしかった。


多分、わたしの錯覚なんだろうけれど、まるで小さな、赤ん坊の頃から彼の腕の中で安らいでいたような、そんな感じだった。わたしの精神状態がそう思わせたんだろうし、マニ自身がそういう呼吸を身に就けているからでも有るし。それは判って居る筈だのに、なぜかわたしは、もう一度、マニに抱かれたいと思ったが、流石にそんな事言えるはず無いよ。


「レジェナ様__」

「__え?」

あら、何?


「失礼致します」

あら、あらあら、いやだ。


マニったら、わたしの考えている事が判るのかしら。彼はわたしの傍らによってきて、その大きな掌をわたしの肩に回してきた。

嬉しいよ、マニ。


「レジェナ様?」

わたしは、彼の胸に寄りかかって目蓋を閉じた。大きな温もりの中で、心を締め付けていた苦しみが全て消えてゆくように想えた。


「マニ……」

わたしはそのまま、深い闇の中__厭な闇ではない、それは恰も人に安らぎを齎す夜の静けさのように、何もかもを受け容れてくれる闇だった。

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