旅は道連れ、世は情け無エ…… 【7】
そんな事を意識し始めた時、わたしはいい子になろうと思った。同じ事をやっても私は怒られないのに、お兄ちゃんだけが厳しく叱られてしまう。そう思うと、子供心にも凄く切なくて居た堪れなかった。もしかしたら、その頃からだろうか、自分がお兄ちゃんとは違う子供なのだと意識し始めたのは。
そしていつしか、私とお兄ちゃんが本当の兄妹ではないのではとの結論に辿り着いた。その想いが、男女の感情に変化するのに然して時間は掛からなかった……
やっぱり、お兄ちゃんが出て行った理由って、私のせいなのかな?
私が、彼の事をそんな風に想い始めたから……?
そんなわたしからお兄ちゃんを遠ざける為にお父さんが、そして、お兄ちゃん自身もそれを判って?
分からない。
多分、事情が複雑に絡み合って、それら全てに決着を付けるのに一番手っ取り早い形で答えを出したのが、お兄ちゃんの旅立ちだったのだろう。本当の理由なんて、誰にも分からないのかもしれない。
しかし、分かっているのは、それがわたしにとって滅茶苦茶悲しい、辛い出来事だったって事。
それ以来、私はいい子を辞めた。
長年掛けて作り上げてきた自分を急激に変える事は出来ないけれど、あの日以来、私は少しづつ自分の殻を破ろうと日々努力してきたのだった。それまではお手習い位の気持ちだった剣術も、本気で練習に打ち込んだ。そして、日常の生活においても少しづつだけど自分を前に出すように努力し始めたんだ。
そして、苦労の甲斐有って、今の私が、天真爛漫を絵に描いたようなお茶目で快活な完全無欠の美少女ヒロインが誕生した訳である。
いいか、私が素晴らしいのは日々の努力の賜物なのだぞ!
何にもしないで、楽してヒロインになれた訳ではないのだから、良く心得ておくように。いやさ、苦労するからヒロインなのだ。男女を問わす、何にも苦労しないような主人公なんかは面白くも何とも無い。そう言うのはギャグ物か、寧ろ引き立て役の意地悪で嫌味なライバルの方である。
人間、努力すれば出来ない事など無いのだよ、諸君。まあ、この類稀なる美しさだけは生まれつき、幾ら努力した所で手に入る訳でもないけれど。
あらら、折角シリアスモードに入ってた所なのに、わたくしとした事が、おほほほほ。