鳴かぬなら、ジッとガマンの女の子 【16】
「如何に上辺だけ国民選出の建前を繕った所で所詮は欺瞞に過ぎませぬ。第一、王家による統治下により、サウロロフスの民は充分に満ち足りた暮らしを営んでおりました。いえ、何一つ不満もない訳では有りますまいが、そのような理想郷など現実には無理で御座います。少なくとも今のサウロロフスが王制であった頃に比べて豊かであるかと言われればさに在らず、決してそのような事は有りませぬ。却って上層部の権力争いが繰り返され、民はその都度犠牲を強いられて居るので御座います」
一気にまくし立てるカスモさんの熱弁に、わたしは只々たじろぐばかりだった。
「お父上に在らせられたケラト・ディアトリマ・バリオニクス二世陛下は民の事を愛する慈悲深き国王に御座いました。決して膏血を貪る暴君などではありませぬ」
いや、そこまで言ってないけど。
まあ確かに、今時、朕ハ鱈腹食ウテイル汝臣民飢エテ死ネ、なんて馬鹿な事言ってる王様なんか居たら一遍に吊し上げ、それこそ広場の真中で逆さ吊りにでもなっちゃうよ。
「あ奴等めが、贋王女を立ててレジェナ様の御首を狙ってきた事でも、今の政権が国民から忌み嫌われている事が判ります。レジェナ様はご心配なされず、どうか我等家臣一同の忠義だけを信じ、泰然と為されませ」
だけどヤッパリ、それはそれ、フツーの、まあ、かなりの美少女ではあるけれど、とどのつまりはオンナのコとすればデスネ、ちょっとアレだな、て気はするのよね。
『朕ハ鱈腹食ウテイル__云々』
__というフレーズは、当然天皇陛下御自身の御言葉にあらず、デモ隊が陛下を侮辱する為に勝手に創作した言葉である事は既に周知の事実ですが、誤解を招いては困るので一応付け加えておきます。