鳴かぬなら、ジッとガマンの女の子 【14】
「元々、趣味で料理などを嗜んでおりましたが、まさかこのような渡世を営む事となるなどとは、思ってもみませんでしたな」
人生色々、一寸先は誰にも判らないモンだよねえ。
「しかし、こうしてレジェナ王女様がお見えになられるとは思っても見ませんでした。大したお持て成しも出来ませぬが、コックとしてカスモ殿の下で磨いた腕前を存分に振るいますゆえ、どうぞご期待下さい」
やったー、何せマニと二人で放浪してた時にはロクなモン食ってなかったから涙が出るくらい嬉しいですよ。いやいや、そんなに気を使わなくても結構なんですけど、やっぱり折角のご好意をソデにするのは却って失礼に当たると存じますので、このレジェナ、謹んでお持て成しに預からせて頂きますわ、おほほほほほ。
と言ったような成り行きで、この宿場街カローブに落ち着いてお兄ちゃんの情報を待つ事になったのだが、その間が何とも言えず大変だった。何せ宿のお客の大半は元サウロロフスの家臣だモンで、王女様に一目お目通りとばかりに私の前にひれ伏すのだから何とも居心地が悪かった。しかし、彼らはお兄ちゃんの消息を掴む為の大事な手掛かりだし、無下にする訳にも行かず適当に話を合わせてやり過ごした。何か、宿屋が客引きの為に開催してるアトラクションに参加してるような気分だよ。まあ、これがわたしのお仕事だと思えば仕方が無いか。三食付きで商売道具である筈の大事な客室の一つを占領している厄介者だから、この位のお返しは当然と言えば当然、三杯目にはそっと出さねばならない居候のせめてもの御勤めで御座います。