鳴かぬなら、ジッとガマンの女の子 【8】
「いやはや、どこにあ奴等の目が光って居るか判らぬと言うに、迂闊に王女様などと、誠に軽率の至りで__」
やっぱり、思った通りだ。
「それでは、何とお呼びすれば__」
「あ、レジェナで結構です」
「それは__」
カスモさんが怪訝そうな顔を見せた。
「どうで御座いましょう。危険を避ける為とあらば、別のお名前でお呼びした方が……」
そう言う意味じゃあ無いんだけどな。
「良いじゃない、お父さん」
悪戦苦闘するわたしに救いの手を差し延べるようにミアキスがカスモさんに声をかけた。
「王女様ご自身がそう仰ってるんだし、私たちも普通にレジェナ様ってお呼びした方がよろしいんじゃなくて?」
ミアキスがわたしに、任せて、と言うような頼りになるウィンクを見せた。どうやら彼女には私の気持ちが理解できる様である。ああ、有り難や有り難や。
「お願いします」
「王女様……いやいや、レジェナ様」
私が、わざとおどけながら手を合わせてお願いのジェスチャーを見せると、カスモさんは恐縮しながら頭を下げた。多分、どう言うリアクション見せたら良いのか判らずに、思わず出た仕草だろう。
「わたくし如きにそのような__」
王女様のヒクツな仕草にうろたえているのかどうか、ひどく当惑している様子だった。
ああ、もう。これじゃ話が進みませんよ。
「そこで、中将殿__」
手をこまねいて話題を切り出しかねていた私に代わって、マニがやんわりと口を挟んできた。