鳴かぬなら、ジッとガマンの女の子 【3】
「その、こちらは、バージェスって言うお宿ですよね?」
「はい」
あーん、何言ってんのよ、わたしって。この子もさっきからそう言ってんじゃないのよ。
「こちらのご主人は、プレウロ・カスモさんて言われるんですよね?」
「はい、オーナーですが……」
女の子は、ちょっと何かを思ったようだった。
「もしかして、父のお知り合いの方?」
「い、いえ、そう言う訳じゃなくて__」
わたしは両掌を突き出しながら振って見せた。
「カスモさんて、元サウロロフスの家臣の……」
「あら?」
女の子が口の辺りに手をやってちょっとばかり手応えの有るリアクションを返してくれた。
「それじゃ、あなた、もしかしてサウロロフスの関係者の方?」
関係者?
ま、関係者って言えば関係者なんだし、間違っては居ないけれど……。
「ええ、まあ、あの、父が一応近衛隊長で……」
「やだあ、ゴメンなさい、そうですよね」
女の子が、思わずこっちまで釣られそうなほどの笑顔を見せた。きっと、この子の笑顔って、只の営業用じゃないよ。
「だって、お客さん、私とおんなじくらいの年頃だモン、当たり前ですよね」
何の屈託も無くクスクス笑う女の子に、わたしも釣られて笑い出した。
「それじゃ、こっちの男性もサウロロフスの?」
女の子が私の後ろに佇むマニを見上げながら言った。
「__て、感じじゃなさそうですよね……」
日焼けした顔に異国風の出で立ち、見るからにガイジンさん、て感じのマニを見ながら彼女は極自然にたった今の発言を訂正した。