鳴かぬなら、ジッとガマンの女の子 【1】
「山向うの村にも、レジェナ王女が出たんだってよ」
「へえ、またかい」
一体何なのよ、これは。
「これで何人目だ?」
「さあ、何人出てくるのか知らねえけどよ、もう、本物はサウロロフスで戴冠式を待ってんだろ?」
「ああ、だけど、これじゃあ、その王女様ってのも本物かどうか、怪しいモンだな」
ここはサウロロフスの隣国、ディプロドクス。その宿場街のカローブでは、当然隣国の王女即位の噂で持ちきりだった。それも、人々が口々に噂し合ってるのは。
「うちの宿場からも名乗り出て来ねえかな、レジェナ王女」
「そうだなあ、一人か二人居てもおかしく無えよな」
おかしいよ。私は一人しか居ないんだから。通りで噂話に耳をそばだてていたわたしは首を捻った。
「何なんだろーねー」
わたしにも訳が判らん。
「敵も中々やりますな」
マニが面白そうに呟いた。
「こうすれば、本物が名乗りを上げても何人か居るレジェナ王女の一人になってしまいますから__」
ホント、敵サンも凝った事するよ。一体、何人位こうやってエキストラ掻き集めて来たんだろ。
「最初の何人かは向うが雇ったサクラでしょう」
マニが言った。
「一旦、こう言った自称王女が出現すれば、恐らくその後から我も我もと名乗り出て来るでしょう。彼らはその何れも特に罰する事も無く、一応形だけでも調査しているそうですから」
成る程、危険が無いんだったら、一か八かで名乗って出て行くのも悪く無いよね。女の子にとって、自分は実は王女様なのよ、なんて言うのは一種のロマンだろうから。私にも一応その気持ちは理解できるよ。但し、イザ現実となったらそうも言ってられないけどさ。或いは欲の皮突っ張らかせた両親に因果を含められたか、孤児なんかだったら尚の事、勝負に出ようって名乗り出たのかもね。
まあ、いいさ。
私には関係無い事だモン。