旅は道連れ、世は情け無エ…… 【25】
わたしは怒っていた。
「レジェナ様」
声をかけて来たマニに、厳しい目を向けたが、それは別に彼に何か過失が有った訳ではない。マニの方もそれが判っているから苦笑いで私の怒りを事も無げにやり過ごしていた。
何故、私がこんなに頭に来ているのかと言うと__
「さて、お聞かせ願いましょうか」
気絶しているならず者の一人から特に一名、何とか尋問に耐えられそうなのを選んで活を入れると、マニが男の額に手をやった。
「何故、あなたたちがレジェナ様を狙ってきたのか、その理由を」
「わっかりやした__」
マニの言うがままに答えた男の目はうつろで、半分まどろみの中に浸っているように澱んでいた。どうやら相手の頭になにやら術を掛け、催眠状態に誘導しているようであった。
便利な男だねえ、ホント。他の連中も、途中で息を吹き返しては面倒だからってんで、何やらマルマとかいう神経のツボを突いて暫くは目を覚まさないように処置したのもマニである。まあったく、用意周到、痒い所に手が届くと言うか、何やらせても卒がないねえ。あたしゃ、つくづく感心するよ。多芸小食、その上男前、あんたは召使の鑑だわ、全く。
アッパレ、誉めてつかわすぞ。
「あなたたちは、レジェナ様の事をご存知の上で狙いを付けて来ました。あなた方自身が、何かの御思案に基いて襲ってきたのですか?」
「いいえ__」
男が、マニの質問に半分閉じかけたような目で答えた。