旅は道連れ、世は情け無エ…… 【24】
チャンスだ、マニ!
マニの錫杖が狙い違わず相手の腹を突き抜かんばかりの勢いで捉えると、男の上体が前に傾いて、蒼白い顔がどす黒く変色し、剣を取り落として細い目を飛び出させんばかりに剥き出して痙攣していた。
「あ、あああ__」
男は腹を抱えながら顔から地面に突っ伏すと、細長い体を尺取虫のように折り曲げて、倒れこんだ。全身が無残に痙攣している。
「う、ああ、おお__」
またまた、乙女には喜ばしくない残酷なシーンだが、格闘で気が昂ぶっているせいか、それ程抵抗感はない。決して私が残忍だとか、無神経だと言う訳ではない。ホントだぞ。普段なら、心優しいこのレジェナ王女様はこのように刺激の強い場面を余り好まれず、憐れな衆生に心からの慈悲を傾けられるであろう。
しかし、それはそれ、安心したわたしは歓喜の声を上げた。
「やったあ!」
それは危機を脱した安堵感からであって、一暴れぶっこいて気分爽快になったのではないぞ。いや、全くそれが無かったとは言わないけど。
「何とか片付きましたね」
流石にふー、と大きく息を付いたマニが、いつもと変らぬ、事も無げな口調でのたまった。
「申し訳御座いません、わたくしどもの未熟の為にレジェナ様のお手を煩わせる事と成りました」
「良いって良いって、結果オーライ!」
わたしは親指を突き出すと、明るくマニを労ってやった。マニはいつも通りの微笑を湛えながら小さく叩頭した。