旅は道連れ、世は情け無エ…… 【23】
高が盗賊相手に、ちょっと大袈裟だったかな?
しかし、宝剣の霊験はあらたかで、鬱陶しい二人は一発で気絶してしまった。やったぜ、これもあたしの実力、それにご先祖様の御加護の賜物である。ありがたや、ありがたや。
そうだ、マニは?
あ奴はたった一人を相手にまだ手間取っていた。このわたし、か弱い乙女のレジェナ様が最初から数えて合計三人片付けたってのに、あんたはまだ一人しか仕留めてないの?
とは言え、もし、受け持ちを代われと言われればわたしは躊躇う事無く辞退するよ。それほど、マニが相手をしている男は凄腕だった。手伝いたいけど、下手に私が手を出すと余計にマニの足を引っ張りそうである。
マニの顔にはうっすらと汗が光っているが相手の男はかいていない。しかし、逆に息が上がっているのは蒼白い顔をした男の方だった。対するマニの方は元気一杯体力強壮、健康に汗をかいて動き回っている。息づかいは激しいが、疲れた様子は更々ない。
マニの錫杖が男の足元を払った。男は辛くもかわしたが、随分とバランスを崩したようである。剣術使いにとって足元は泣き所だ。これが杖や長柄ならば持つ部分が長いので急角度に突き出せるが、剣は柄が短い分、大きく扱い辛いので防ぎ難い。加えて梃子の原理が働くから、刃の根元は兎も角、先端の部分は力が入り辛い。足元を狙われたら下手に得物で防ごうとするよりもさっさと避けた方が賢明なのだ。しかし、自らの長い足を持て余したように、男が大きくよろけて体勢を崩した。