旅は道連れ、世は情け無エ…… 【21】
マニが突っかけた。
相手の手元を狙って錫杖を突き込んだのだ。敵は剣で簡単に払いのけたがマニは深追いせず、素早く後退して続く反撃を未然に防いだ。再び素早く踏み込むと、続いて間を与えずに二撃目を、出来るだけ遠くから錫杖を片手で突いて攻撃し、かわされるや回り込むように移動して息も付かせず連続攻撃。
その攻撃は踏み込みが浅く、尽く防がれてはいたが、マニは飽くまでそう言った、一見無駄とも思える攻撃を続けていた。マニの意図は私にも判る。相手は一目で判るように日頃の不摂生で体調が悪く、持久力は無い筈だった。行者として荒行に身を削り、有り余る体力を誇るマニとしては勝負を焦って一気に無理押しをするより、出来るだけ粘って相手の消耗を待つ作戦なのだろう。無論、危険な手ではある。向うは、これまでの僅かな攻防から見ても相当な使い手である事が判るし、あまり調子に乗って攻め続けると、体力に自信が有っても集中力が途切れて隙が生じ、反撃を許す恐れも有る。相手もそれを狙って、マニに隙が出来る瞬間を窺っている。一瞬でも気が緩んだら命取りだ。それを承知でマニは強引なヒット・アンド・アウェイを繰り返しているのだ。それをギリギリの瀬戸際できわどく支えているのは、修行者として、元々武芸と言うよりも精神修養の為に鍛え上げたマニの強健な精神力である。
おっと?!
わたしの目と鼻の先を、荒っぽい風圧を巻いて蛮刀が疾り抜けた。