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旅は道連れ、世は情け無エ…… 【20】

一人片付けて余裕が出来た私は、愛する主をほったらかしにしてノンビリ一人だけを相手取っているマニの方を窺った。マニは未だに先刻の相手と気合いをぶつけて睨みあっていた。何、あんた、まだ片付けてなかったの?



しかし、少し気を付けて見てみれば、それが彼に気の毒な酷評だと言う事がすぐに判った。


只今マニが相手にしている男、身長だけならばマニと変らない位の、全身から凍りつくような剣気を発散する不健康に痩せこけた顔色の悪い男は一目で判る程に凄腕の剣客だった。父の道場でも、門弟の中では多分これだけの使い手はいなかったのではないかと思えるくらいの風格を漂わせている。恐らく、奴が連中の頭目だろう。頬骨の張った長い顔からはみ出すほどに幅の有る、唇の薄い大口は乾ききってピクリとも動かず、かつては逞しい筋肉が覆っていたのであろう首筋はごつい骨の上に直接カサカサの皮膚を貼り付けたように枯れていた。ロクに食う物も食わず、日がな一日酒びたりと言った日常が想像出来るような見てくれであった。グロテスクなほどに筋の浮き立った大きな手は如何にも重そうに剣を握って、否、重いのは痩せこけた自分の体で、恰も剣にぶら下って体重を支えるような手つきで柄を握っているが、その底抜けに陰気な双眸から放たれた冷たい眼光からは、狙った獲物は逃さない病的なまでの精気が感じられる。身を持ち崩したとは言え、恐らくかつてはさぞや名の有る剣士だったのだろう。わたしも剣術修行者として、幾分胸が痛い思いだった。


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