旅は道連れ、世は情け無エ…… 【19】
マニ、マニは?何やってんのよ、マニは!
連中から目を離す訳にも行かない私の視界の端に入ってきたマニは、ノンビリ一人と相対している。コラ、お前何やってんだ!
わたしの心の隙を衝いて来たように一人が襲い掛かってきた。元々腕の方も大した事も無いようだし、それに加えて衆を頼んで油断が有ったのだろう、隙だらけであった。がら空きの胴に、申し合わせたようなタイミングで横一文字の一太刀が決まり、男がもんどりうって前のめりに転がった。
血は出ていない。ハッキリ言ってこの伝家の宝剣、真剣ではない。刃引きがされてあるのだ。要するに儀式用の剣なのだが、この剣、只の剣ではなくこれ自体が魔力を持った、俗に言う魔法剣という代物なのだ。然るべき術者が持てば魔力を発揮するし、使い手の心気が込められれば斬る事も出来る。わたしがその気になれば切断力を発動する事も出来るが、何てったって女の子、殺伐とした流血沙汰は避けられる物なら避けて通りたい。
残る二人のならず者、意に反して仲間がアッサリやられたもので、目を白黒させながらわたしを見返していた。自業自得だ、ザマア見ろ。
「ちっ__」
「気を付けろ、手強いぞ」
当ったり前じゃん、わたしが、このわたし、愛と勇気の美少女ヒロイン、清く正しく美しい、このレジェナ様が雑魚キャラ如きの手に掛かるほど落ちぶれちゃあいないわよ。
「こいつア、ちょっと厄介だなあ」
「ああ、殺っちまう前に楽しんでからと思ったが、そうはいかねえようだぜ」
何い、何だと?
手前えら、今なんてった?
その下卑たやり取りが私の怒りに火を付けた。怒髪天を衝く怒りで思わず叫び声を上げたわたしだった。
「許せねえ、手前エら、覚悟しやがれ!」
あらら、わたしとした事が、如何に相手に非が有るとは言え、仮にも一国の王女ともあろう者がはしたないですわ、オホホホホホ。